マサイのサンダル

ケニヤのサファリツアーに参加した。
なにしろアフリカは遠い。千歳→羽田→成田→上海→モスクワ→カイロ
と移動し、やっと着くのだ。俺は飛行機が嫌いで、オソロシサにフルエながら
なんとかたどり着いた。
飛行機を降りたとたんに元気になる俺。なんせこれからアフリカの動物保護区
をまわり、野生の動物達をみるのだ。胸が躍るではないか。
しかも大名旅行。一泊200ドルもするロッジに泊まり(これはネパールのお湯の
出る中級宿に一ヶ月半も泊まれる)、食事はすべてコース料理だ。疲れる心配もない。
ナイロビの街に出る。さっそくアヤしげなアクセサリーを売りつけに、人々が群がってくる。
いくらだ、と買う気のないそぶりで聞くと、高いことを言う。値段は交渉制だから、紙に
希望価格を書こうとすると、彼らは便利なのねー。肌が黒いので、つめで引っかくと白い
跡が残り、紙がいらないのだ。価格を下げさせ、さらに3つ買うからもっとマケロ、といって
アクセサリーを買った。たぶんそれでもボられてるとは思うが。

待望のサファリへ出る。車に乗り、サバンナを走り回るが、いるわいるわ、キリン、ゾウ、サイ、シマウマ
ライオン、ハイエナ、シカの類などがいて、飽きることなど全くない。

と、ドライバーが突然何もないところに向かって車を向け、走り出した。なんだなんだといってるうちに
着いたところでは、チーターがダチョウを食っていた。マチャイアというそのドライバーは、地平線に
見えるアカシアの木にハゲワシがとまっているのをみつけ、そこでなにかいるとふんで連れてきてくれ
たのだ。彼らの視力は物凄く、遥か彼方の木を指差し、あそこにゾウが11頭いる、という。
しかし、いくら目を凝らしても我々は、ゾウ自体も認識できなく、双眼鏡で確認すると本当に11頭いた。
ウサギも跳ねてるといったが、これは双眼鏡でも見えなかった。

マサイ、という種族の名前は誰でも知っていると思う。勇猛果敢な人達だが、今では「観光マサイ」
というのも存在し、観光によって収入を得ている人達もいる。なーんだ、がっかり、なんていってはいけない。
彼らだって大変なのだ。その村へ行くことにした。
村が次第に大きくなってくる。牛糞で作った家、イバラでかこまれた牛達のための場所、地面にささった
槍。耳に大きなピアスをつけ(穴がデカくてむこうが見えるぞ)、いろとりどりのアクセサリーをつけた
女達がならび、歓迎の歌を歌ってくれる。俺はそのフレーズを覚えて、ためしに歌ってみたところかなり
ウケ、拍手までしてくれたのですっかり気を良くしてウンコ製のうちに入る。
こんなのがたちならぶ。 家の中はまっくら。 女たちが歌う

臭いは全くなく、照りつける日差しにもかかわらず中は涼しく、そして電気がないので真っ暗だった。
なかなか快適なこの住まいの主は村長さんで、長身の身体にウエストバッグをつけ、野球帽を
被っていた。家を出るとさっきのおばさん達が我勝ちにアクセサリーを売りつけに走ってきたが、
さっき歌ったのがよかったのか俺のところには一人もこなかったので、助かった。いろいろやってみる
ものだ。
あらためてマサイの男を見ると、カッコイイのだ、これが。殆どの人がスリムで背が高い。
車の中で何回か見かけたが、彼らは身体に赤い布を一枚ひっかけ、槍と棍棒をもって猛獣の
いるサバンナをたった一人で歩いて行くのだ。感動的な光景として、俺の目に焼きついた。

ところかわって、ある村のお土産やに行った。

さすがに観光価格で、とんでもない値段だ。木彫りとか帽子とかがおいてある。
「サンダルはないのか?」
男はちょっと考え、ちょっとここで待ってろ、と言った。どこに行ったんだ、あいつは。
しかし5分ほどしてヤツは戻ってきた。手に見たこともないサンダルをもっている。
古タイヤで作ったマサイのサンダルだ。しかも、いままではいていたらしく、体温が残り、
足の跡までついている。
さっそく値段交渉に入ったが、なかなか折り合いがつかない。まぁ、もとの持ち主も新しいのを
買わなければならないし、この男の取り分も上乗せされているに違いない。
かなりボられたが、それでも「マサイのサンダル」というのが嬉しく、得意になって履いていると
その辺のケニヤ野郎が指差して笑うのだ。一体何が可笑しいのだ。
「お前、今時マサイでもそんなサンダルはかねぇぞ」
うるせい!トホホ…それがこれである。

これがソレ!