店を持つ。

というワケで、無事、自分の店が開店した。いやいや、めでたい。
まさか、自分がホントに独立開業するなどとは思っていなかったが、俺の人生は何故かなりゆきでこうなってしまうのである。
今日は店が休みなので、朝はのんびりと寝、備品、作業着を買って仕込みをし、先ほど美園にある「ティパサ」で
ピザを食ってきたところだ。この店はウマく、しかも雰囲気がいい上に一人でもくつろげるので好きなのである。

ちょうどいい物件が見つかったのが10月。そして工事に入ったのが1月の6日だ。
なぜ、これだけ時間が空いたのかというと、東京在住のmomoちゃんの手が空くのを待っていたからだ。
彼は大工さんではなく彫刻アートの人で、東京でも何件か店作りをしている。モスバーガーのポスターのバックで
うつっているテーブルなども彼の作品だ。
いろいろな彼の作品を見て、その抜群なデザインの才能に驚嘆した俺は、ぜひ君に作ってほしい、安く、とお願いし、
空家賃を払いながら彼を待っていたのである。

1月5日に彼は来札し、さっそく6日から材木や道具類を買出しに行く。
いままで大工仕事に興味がなかった俺は、ビスだけでも様様な用途や種類があり、塗料のハケひとつとっても、非常に
考えられて作られているのに感銘を受けた。
しかし受けたからといってその道具を使いこなすことができるというのはまた別の話で、俺が色を塗るのと彼が色を塗るのでは
出来上がりに雲泥の差が出るのだ。
8ヶ月ぶりの仕事らしい仕事で、しかも肉体労働なのでナマりにナマっていた俺の体は見る間にへたれていくのであるが、
わざわざ遠くからきてもらっているのだ。そして何人かの友人たちも無償で手伝ってくれている。疲れた、などとはさすがに
口に出せない。
しかし、大工仕事が終わった後家に帰り、メニューの煮詰めとか印刷物の検討、備品の手配チェック等、俺にはやることが
まだまだあり、極度の睡眠不足の結果が、俺をどんどんアホ化していった。
まず、計算ができなくなった。足し算や引き算、2で割るといくつ、などという簡単な計算がわからない。この時は自分で疲れている
自覚はなかったのだが、それがさらに進行するとローマ字が理解できなくなった。「渡辺ね。W・A・T・A・N・A・B・E」と言おうとしているのに
ローマ字が出てこないのだ。工事が進行し、23日に友人たちを呼んで仮オープンしたのだが、さらにこの頃になると、スタッフのRyuちゃんが
「これはここの前において、そしてこれは後ろに…」などと言っているのも理解できなくなってしまった。
「…ええと、前とは…、後ろって後ろ側のことだよな…」などと考えているうちに何を聞かれているのか忘れてしまうのである。
これはヤバいな、と思っているうちに、とうとう大変なミスをやらかしてしまった。
金物屋さんに寸胴を取りに行こうと銀行で金をおろしたのはいいが、金をCDから取ってくるのを忘れたのである。
「あ、すんません、俺、金おろして持ってくるの忘れたわ。ははは」
などとまったく感受性を失ってしまった俺は危機感も感じず、自分が正しい言葉を話しているかどうかにだけ、かろうじて神経を集中して
いる状態だったが、逆に金物屋さんの方が青くなり、金なんていつでもいいから早く銀行に戻れ!ということで、のこのこと舞い戻り、
さすがに金は残っていなかったので、CDの横の呼び出し電話でワケを話すと、たまたま俺の後にきた人が銀行の人で、預かっている、
とのことだった。ツイているどころの話ではない。

そうこうして、手作りの店は出来上がった。素晴らしい仕上がりだ。
自分の好きなカレーを朝から晩まで作って売り、努力すればするだけ味は良くなり、それを喜んで食うお客ちゃんの顔をみながら
好きな音楽を朝から晩まで聴くことができる、ちなみに、客席よりも厨房の方がいいスピーカーがついている、というのはヒミツだ。
スパイスのにおいがつきにくいところにクロークを作り、手荷物置きも用意し、自分の理想の味を追求するためにカレーも米も
凝りにこっている。
上々のすべりだしだ。これで、きてくれる人の流れが安定すれば、さらにブレの少ない味にできるのだが、
早くそうなるように毎日頑張っているところだ。

この場を借りてお世話になった人たちにお礼を言いたい。
前からの常連さん、業者の方々、一度しか会った事がないにもかかわらずいろいろと宣伝してくれた方々、Rub*Lick Grooveのメンバー、
開店を知らせなかったのにわざわざ後で花を持ってきてくれて俺をびっくりさせた人、書ききれない人たちが俺を支えてくれて、それが
勇気とやる気を与えてくれるのです。
西28丁目の地下鉄駅そばの
SHANTIさんなんかは(原宿に支店がある)くいに来てくれた時にチラシをあげたら、同業者にもかかわらず
店にチラシを置いてくれている。

これもそれもウチの一番大切なスパイスのひとつ。みんなの幸せを祈る。