Papa told me

 

引越しの際、思うのはいつも、本をどうしよう、ということだ。
俺は本を売るのも捨てるのも嫌いだ。しかし、だからといって多すぎる。
なかには同じ本が2冊もあったりするものもある。
で、泣く泣く売りにいった。
しかし、フジ子の本もかなり大量にある。のべ30メーター以上もある。計ってみたのだ。
しかたがないので本棚を買うことになった。痛い出費だ。小遣いもないというのに。
だが、本棚に知らない本がある、というのはなかなか気分のいいもので、ある日、なんか
面白いのはないのか、と聞くと、ほれ、と言って1冊のマンガを出してきた。
棒野なな恵さん作「Papa told me」という本だ。

俺は時々、思うのだ。自分の人生の「うれしい度」はどのくらいなのだろう。
街を歩いていると、いろいろな人のうれしそうな表情をみかけることができる。
ケーキ屋さんでキレイな女の子が、うれしそうにケーキを選んでいる。
子供が買ってもらったおもちゃをにこにこしながら、大切そうに抱いている。
なにも話してないのに、うれしそうにベンチに座っている、彼と彼女。

同じようなとき、俺はあそこまで嬉しそうな表情をしているだろうか。
心からうれしいと思えるのだろうか?
こんなことを比べること自体がヘンな話なのだが、普段はなかなか見えない「うれしさ」を
たくさんみつけることができれば、もっと楽しく過ごすことができるような気がするのだ。

この本を読み始めたとき、なんて絵が上手な人なんだろう、と思った。
自分のスタイルを持つ、というのがどんなに大変なことかは音楽をやってきた俺にも
十分わかることだが、この絵がインクとペンで描く「線」からできている、というのは
絵心が全く無い俺には魔法のようなのだ。
着ている服の生地の手触りや、柔らかそうなベッド、お日様の光。みんな絵から想像できる。
主人公は、小さな女の子と作家の父親。描いてあるのは、その日常。
さくらのはなびらを見て、なかなかいいデザインだね、と思う。
アンティークマーケットで、小物を売ってる人たちが言う。
「こんな、取るに足りないもの、の力をあなどってはいけないってこと。何しろ
人をささやかに幸せにするためだけに存在してるものなんだから」
どうしたらこんなふうに物事を捉える事ができるのだろう。
きっと、まだまだ俺の知らない、「うれしいこと」が身の回りに、たくさん、たくさんあるんだろう。
最近、この本は、俺のマンガwhoopsとなって、いつも枕もとにあるのだ。