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私たち夫婦は3年前、5大陸=32カ国を巡る世界一周旅行をし、本誌に印象深かった話を記しています。今回はそのパート4。常夏の国々での体験を中心に、各国の〃暑い夏の過ごし方"をご紹介します。
世界一周といっても、そう簡単に全世界を回れるわけでなく、出発前にロケーションの選別を行った。私たちの場合、暖かい(というより暑い)土地が多かったように思う。常夏の国へのあこがれが大きかったというのが、一番の理由だが、上着がいらないので荷物が少なくて済むということも、長期旅行での大きなメリットだった。
旅行中、ホームページ( http://member.nifty.ne.jp/washyworld2)に日記形式で体験したことをレポートしていたが、現地の気侯を文章で伝えるのは難しいので、温度計を持参し、その日の最高気温を記録した。旅行中の最高気温は、西オーストラリアのハーメルンプール海岸での44℃。海岸とはいえ、砂漢のど真ん中、まるで「熱風」の吹き出す焼却炉の前に立っているようだった。ただ空気が乾燥していたので、気温の割には堪えられた。むしろ目や口に次々と飛び込んで来るハエの方が厄介で、タオルで顔を隠して逃げ回った。
暑さが最もこたえた所は、40℃を記録したラパス一メキシコ)やチェンナイ一インド)である。湿気が高く、日本の夏に近い。道路の照り返しで歩かげろう道には陽炎が立ち、歩いているだけでも体中から汗が吹き出した。
暑い国で一番気をつけなければならないのは、脱水症状。ラパスでは、特に発汗による水分不足がひどく、食事以外にも毎日1ガロン=4リットルの水タンクをガボガボと飲んでいた。
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| 旅の最高気温44℃を記録した 西オーストラリアハーメリンプール |
バカカリフォルニアの砂漠も 暑かった。巨大なサボテン林にて |
連日40℃のインドは楽しかった 市内を練り歩く2頭のゾウ |
夏と言えばビール。私一太郎一は大のビール党。旅先では二国一銘柄のビールを飲むLのを最低限のノルマとし、各地で新種のビールを味わったが、夏=ビールという図式のあてはまらない国もあり、最初はつらい思いをしたものだ。
たとえばインド。意外にもインドでは一般にアルコールは“好ましくないもの”とされ、飲める店が滅多になかった。聞けば、そういう店は一つの町に一、二軒ある程度。やっと見つけたバーにはカーテンがかかっていて、店内は見えない。しかし暗い所でコソコソ飲んでいる人を見た時はびっくりした。更に驚いたのは"禁酒の日〃が月二回あること。その日は飲み屋さんも営業停止という、徹底ぶり。それを知らぬ私は、その日「開いている酒屋」をあちこち探し回ってしまった。
マレーシアも結構つらかった。イスラム圏は原則としてアルコールが許されない。外国人向けの高いレストランを除けば、ほとんどの店がビールを置いていない。仕方なく食後に雑貨屋で仕入れたビールをホテルに持ち帰って飲んだ。
では、彼らは何を飲んでいるのか?「その土地の気侯に合う食文化があるはずだ」と思い、彼らの飲み物を観察した。インドでは、やはり紅茶。英語のTeaよりチャーイ(
Chai )という方が私たちの耳には心地よく響く。飲み方は、ミルクティーが基本。布のフィルターに粉茶を入れて、熱く煮立ったミルクを注いで濾す。味の濃いティーオレで、砂糖は多めでとても甘い。ところによっては、"マサラ〃"カルダモン〃といったスパイスをひとつまみ入れる。爽やかな香りだ。30℃を越す猛暑の中でも、ホットで飲む。フーフー言いながら、アツアツのお茶を飲むと、汗が吹き出し、飲んだ後はすっきり。
一方、マレーシアでは"コピアイス( Kopi-Ais )、つまりアイスコーヒーが一番だ。コンデンスミルクを一cmほど溜めたビアジョッキに、布で濾した濃いめのコーヒーを注ぐ。そこに氷を詰め込み一気に冷やす。コンデンスミルクの甘〜い味付けとコーヒーの濃さのバランスが肝心。バテ気味の体も、これ一杯でシャッキリするのは不思議。
最後に、ちょっと変わったビールの飲み方を。ベトナム・ラオス・カンボジア・タイなどには、未だに冷蔵庫のない所がある。だからビールはあっても、冷えてないのだ。現地の人には、そのまま常温で飲む人もいるが、店員に頼めば、氷を入れて〃ロック"にしてくれる。日本人なら、「え-つ? ビールに氷!?」って思うところだが、これが、現地では結構いけたりするから面白い。
ちなみに、ベトナムでは一番ポピュラーなブランドを「333」といい、氷は「ダー」という。レストランで「バーバーバーにダー」(333をアイスでの意と、赤ちゃん言葉みたいな注文をしても、ちゃんと出てくるのが面白かった。
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| マレーシアではコピアイス、 ベトナムではカフェ・ダー と呼び名が変わる |
ビールをロックで飲むのは 東南アジアの常識! (ベトナムのサイゴンビール) |
夏といえば「辛い」料理。我が家は「辛党」だ。俗にいう「激辛」ものは、カレー、ラーメン、スナックとなんでも飛びつくし、真夏はホツト&スパイシーな味付けがベストだと思っている。辛いものは、食欲増進効果があり、暑さで参っている体も刺激でシャキッとする。うだるような暑さの中、「ひ〜辛い、辛い!」と激辛料理を平らげるのは、快感ですらある。
熱帯の暑-い国々を旅すれば、"辛-い〃エスニック料理が中心になると想像するかもしれない。ところが、さにあらず。本当に辛い味付けというのは意外となかったのだ。ここでは〃辛い"イメージの強い料理について記してみよう。
まずは、辛いイメージの代表、カレー。インドカレ=激辛、と思いこんでいたが、意外にもそれが辛くない味が多い。何百種類もの味があるインドのカレーだが、素材に応じて使用するスパイスも、辛さ加減も絶妙に調節されている。チキンカレーは辛く、野菜カレーはあっさり、魚カレーはお好みに応じてといった具合だ。南部地方では割と辛め、山の方ではあっさりという傾向があるようだ。首都デリーには、インド全土のカレーを楽しめる大きな店が多く、生意気にも「特別に辛〜いカレーをお願い」なんてリクエストしてしまった。
マレーシアのカレーは、ココナツツミルクをふんだんに使い、むしろ〃甘い"味付けが中心だった。ただ、シーフードカレーだけは辛めで、クアラルンプールで食べたカニカレーなど、それこそ火が出るほど辛かった。
次はメキシコのタコスだ。何でも唐辛子ソースで味付けして、真かっか〜のイメージを持っていたが、とんでもない。辛みは、それぞれのお好みでつけるものだった。テーブルに最低三色(赤、緑、白)のソースが用意され、食べる人が自分の好みで味付けするようになっている。確かに唐辛子ソース一赤一は、日本の感覚からいうと辛いかもしれないが、好きな人はたっぶりかけるし、そうでもない人は緑色のアボガドソース(甘い)や、白色のサワーソース(酸っぱい)をかけている。でも、うだるような暑さの時は、やっぱり辛いソースを多めにしているようだ。
最後にタイの食事はどうだろう。タイ料理は辛いというイメージがあるが、実際はナンプラー(魚醤)をうまく生かした和え物や、やさしい甘さのココナツミルク煮など、日本食なみのバラエティーがあって、色々な味を楽しむことができた。
ただし、タイ料理を代表するトムヤンクン(エビのスープ)は全く辛かった。対岸(メコン川)にラオスを臨む川魚レストランで食べたトムヤンクンの鍋は、火にかけた状態でテーブルに運ばれてきた。ぐつぐつ状態で食べたので、その熱々&辛さにはヒ〜ヒ〜言った。でも、レモングラスなど酸味のあるスパイスが上手に使われ、辛い&酸っぱいのハーモニーが絶妙、後味もスッキリだった。
どうやら熱帯地方は、辛い料理で汗をいっぱいかいて暑さをしのぐ、とは限らないようだ。ただ、気がついたことがある。テーブルの上に置かれた調味料で各人が調節するということ。中南米諸国のカラフルなチリソース類と、東南アジア諸国の(テーブルに必ず置かれた)唐辛子、魚醤、醸造酢をブレンドした"辛酸っぱいソース〃との共通点は、白分の好みで量を調節できるということだ。暑さでバテて、塩分が不足している時は自ずと味付けが濃くなり、唐辛子の摂取量も多くする。摂取する量を各白調節して体調を維持するのが、昔からの知恵であるようだ。
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| 東南アジアの食卓に並ぶ、 典型的なソース類 |
マレーシアのカレー屋さん 中身の具によって辛さが違う |
これは “激辛” トム・ヤン・クン |
夏といえばエアコン。常夏の国々の冷房の利かせ方は、すごい。外が暑ければ暑いほど、ガンガン冷房を効かす。日本では健康に気、づかい、「弱冷房車」が増えたけど、東南アジア・南米諸国ではほとんどが"最強冷房車〃だ。温度調節のできるエアコンが少ないのだろうか。
特に長距離電車・バスの〃エアコン車"は、車内体感温度が約10℃、寒いぐらいだ。外は半袖シャツ一枚でも汗だく、なのに乗車と同時に汗はスーっと引き、フリースを着ていても、数時間後にはブルブル震えてくるので、とても眠ってはいられない。マレーシアのバスは念が入っていて、運転中車内でホラー映画を上映し、心身とも冷える〃工夫"までしているのだ。
エアコンの効く駅、バスセンター、ショッピングセンターの休憩ベンチは一日中人がいっぱい。荷物も持たずたむろしているのは、避暑のためか。もっとも暑い国々では、人が多く集まる公共の場所が沢山あった。甫米では、町の中心に緑がいつぱいの広場(プラザ)が必ずあり、その木陰で人々は涼んでいた。ラオスやカンボジアでも、川の土手に多くの人々が集まり、涼んでいた。
こういった“避暑地”にいは、必ずそれ向けの商売人が寄ってくるものだ。私達も現地人に負けず、〃冷やし系"屋台料理を楽しんだ。
代表選手はヤシの実ジュース。ハンドボール大の大きな緑色の実に、包丁で穴を開けてストローをさすのはマレーシア風。てっぺんをフタのようにカットするのはラオス風。外皮を削っておしゃれな角切りカットにきめるのはベトナム風。コーラなどの炭酸系飲み物に飽きた時は、ほのかな甘みの、ココナツが最高。1リットルは飲めるし、飲むほどに汗が引いていく。
サトウキビ屋台も多い。カンボジアでは、皮をむいた七-八村ンのサトウキビをぶつ切りカットで売っていた。口に入れて、奥歯でジュッーと噛む。さわやかな甘さ。タイやベトナムでは、金属製ドラムでギューツと搾った(手動または電動)ジュースを、氷のかち割りでゴクゴク。日中の強烈な日差しで、頭はガンガン。乾いたスポンジと化した頭に、水がジュワーと染みて、元の柔らかなスポンジに戻っていくような感覚。これで何度生き返ったことか!
今はやりのアジアンデザートも屋台でよく食べた。5-6列並べられた金属製バットに、黄・緑・白…とカラフルなデザートが流し込まれている。端から卵プリン、カボチャカスタード、ココナツ…。一番人気は卵プリン、続いてカボチャカスタード。中身をくりぬいたカボチヤにカスタードクリームを詰めてあるから見た目にもきれい。甘く煮てある白いココナツや、栗のババロアもあった。
カンボジアの屋台のものが、印象的だった。お気に入りのデザートを選ぶと、大きなスプーンでカップに入れ、上からかき氷をたっぷりのせた上に練乳をかけてくれる。「プリンに氷!?」と最初は抵抗があったけど、冷蔵庫のないところでは、冷たい氷のツブツブがありがたく、ことさら美味しく感じられた。
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| サトウキビジュースの屋台の 手動ドラム型絞り機 (ベトナム) |
インドのチャーイ屋さん みんな、カメラ目線(笑) |
食の専門誌、月刊 「味の味」 2001年 8月号掲載