小児がんの患児さん![]()
| 皆さんは、小児がんを知っていますか?私は自分が病気になるまで、ほとんど知りませんでした。以前、渡哲也さん(彼自身ががんの生還者ですね)属する石原プロが、小児がんの子供たちのためにチャリティーコンサートをやっていたのをテレビでみて、「へえ〜、子供でもがんになるのか」ぐらいにしか思いませんでした。あとは、館ひろしさんが「泣かないで〜♪」と熱唱しているのをみて「小児がんの子供たちを救う前に自分が泣かしてきた女性たちを救ってあげろよ」と思ったくらいでしょうか。いずれにせよ、それ以上小児がんについて知ろうとはしませんでした。 しかし、自分がこの病気になったとき、血液疾患(白血病や悪性リンパ腫)は年齢を選ばないのだ、ということを初めて知りました。小児がんとは、15歳以下の患者(患児)さんに発症する悪性腫瘍の総称です。神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、肝芽腫、ウイルムス腫瘍(腎芽腫)、脳腫瘍などの他に、血液疾患(白血病や悪性リンパ腫)があります。大人がかかる胃がんや大腸がんは小児がんでは稀です。小児がんの中で最も割合が多いのが血液疾患で、治療は大人と同様に、化学療法、放射線療法、造血幹細胞移植などが行われます。 私は、化学療法をしているときは内科病棟だったので、小児科の患児さんたちと会うことはありませんでした。ただ、ある看護婦さんが「小児科の患児さんたちはすごいしっかりしていて大人びているの」と言っていて、そりゃそうだ、まだ遊びたい盛りに大人でも嫌がる治療を受けるんだから精神的に大きく成長するだろう、と思っていました。そして、移植を受けるときに、初めて小児がんと思われる患児さん(坊や)と会いました。おもちゃの刀を振りまわしていて、同種骨髄移植を受けたお兄さんがよく廊下で切られていました。 坊や「このカタナをもって、おにいちゃん!」 頼む時とコトが終了してからの二人称の使い分けが見事です。お母さんや看護婦さんに切りかかることはなく、お兄さんや小児科の先生に切りかかっていたのも(先生も切られると「や、ら、れ、た〜」といって倒れていました)、自分に優しい人(お母さん、看護婦さん)と、自分にとってコワイ人(痛い施術をする先生、化学療法でツルッパゲになっていたお兄さん←見た目がコワイ)を幼いながらに理解していたのかもしれません。また、ヒーローとして悪人に切りかかるという行為は、病気いう悪魔と闘う自分の姿を投影していたのかもしれません。 坊やは私と会った頃はある程度治療を経験していたようで、点滴をぶらさげた点滴棒も苦には見えず、ころころと上手に転がしながら刀をふりまわしていました。大人の患者だと「ああ、健康だったあの頃に戻りたい」とごろごろと点滴棒を転がしながらため息をつき、治療中にふとメランカリーに浸ることもありますが、坊やはそんなそぶりもみせず、元気一杯でした。坊やの年齢からして「健康だったあの頃」があまりないでしょうから、治療を受けているという状態が坊やにとって普通の状態になっていて、それほど坊やにとって苦痛ではなかったのかもしれません。「足らざるを足りると思わば不足なし」(by徳川家康)、いずれにせよ強い坊やだったと思います。 また、坊やのお母さまが常につきっきりで看病していたのも大きかったと思います。移植や前処置のときの服薬には、お母さまの助力が欠かせません。ちょうどその頃、虐待で幼い命を散らしていく児童のニュースが連続して報じられていて、「あの坊やもこんな親のもとに生まれていたらどうなっていたか。病気は大変だけど、あの子には母親の愛情はたくさんあるねえ」などと女性の患者さんたちは話し合っていました。女性の患者さんたちは、坊やが前処置と移植を受けるためにベッドで運ばれていくとき、その様子をみて皆泣いていました。化学療法中で体調の悪い女性患者さんもいましたが、やはり涙を流していました。自分のおかれた状況にもかかわらず、幼い命を思いやる女性の心というものが、こんなにも深く、献身的であるものなのか、と私は感銘を受けずにはいられませんでした。 その後、私は退院してしまったので、坊やがどうなったのかは知りません。看護婦さんに聞いても「退院しましたよ」というのみで、それが「どちらの退院」なのかはわかりません(医療関係者には患者のプライバシー守秘義務があります)。でも、私は坊やは良くなって退院したと信じています。移植治療に関する一般的なデータをみても、成人と小児を比較すると小児のほうがずっと治癒率が上です。坊やのお母さまの献身的な看病、入院患者さんたちの願いは、必ずや無駄にはなってないと思います。同じ地球上に生を受け、一方は健康に恵まれて育つ子供たちがいて、かたや病気を乗り越えていかなければならない子供たちがいることに、私はある種「神様の不条理」を感じずにはいられません。病気を乗り越えたあの坊やが、幼い日々の体験を糧として、実りある人生を過ごしていけることを願ってやみません。
■参考 小児がんに関するサイトへのリンク
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