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執筆 : 永井 宏和先生(国立名古屋病院血液内科)
■目次(各項目をクリックするとその項目へ移動します)
- infusion related
toxicity(インフュージョン・リレイテッド・トキシシティ)=リツキサン注入に関連する毒性
- 腫瘍崩壊症候群
- 血液毒性
- 免疫系に対する影響
- 以上に分類できない重篤な事象
【1】リツキサン注入関連毒性
リツキサン投与後、短時間で起こる有害事象で、初回投与後の30分から2時間位の間に起こることが殆どです。特に1時間目及び2時間目に点滴速度を上昇した際に多く発症します。2回目投与時からは、著明にその頻度は減少するといわれています。
症状は発熱、悪寒、悪心、虚脱感、皮疹、掻痒感、頭痛、浮腫、気管支痙攣、血圧の上昇、血圧の低下などの1つまたはいくつかを認めることが多いです。
国内臨床第U相試験は、375mg/m2を1回量として、1週間間隔で4回の点滴静注を行い、WF分類(悪性リンパ腫の病理分類)のA―E型全90例に対して行われました。治療前処置として、イブプロフェンとクロルフェニラミンを投与していましたが、登録90症例中88例に何らかのリツキサン注入関連毒性と考えられる症状が出現しています。
その発症機序としては次のように推測されています。リツキサンはB細胞上のCD20抗原に結合しADCC(抗体依存性細胞障害反応)を誘導します。ADCCに関する単球、好中球、ナチュラルキラー(NK)細胞、キラーT細胞といったエフェクター細胞上のFcレセプターにリツキサンが結合することにより細胞が活性化され、貧食作用、サイトカインなどの放出、フリーラジカルの産生などが引き起こされ、B細胞が傷害されます。この過程で産生・放出されたサイトカインなどが炎症、アレルギー反応を惹起することが、リツキサン注入関連毒性の原因になっていると考えられます。リツキサンがすぐ作用できる末梢血にあるB細胞(正常または腫瘍どちらでも)がこの反応の主な原因になっていると推測されます。
1回目のリツキサンの投与により、速やかに末梢血中からB細胞は消失することが多いため、2回目以降の投与では注入関連毒性の発症が少なくなると考えられています。つまり末梢血中にB細胞が多いとこの反応が出やすい訳で、多くの腫瘍細胞が末梢血にあるような方は要注意です。

【2】腫瘍崩壊症候群
リツキサン投与後12〜24時間程度で発症することが多い事象です。この反応も急性期のものですが、リツキサン注入関連毒性と区別されるのは、免疫学的作用ではなく物理的に腫瘍が崩壊して起こるものであるためで、一般の化学療法でも経験されることです。やはり腫瘍量の多い人、特に末梢血中に腫瘍が多い人に見られます。一旦発症すると、大変重篤になる可能性が高いとされています。

【3】血液毒性
本邦での臨床第U相試験では、約半数に好中球の減少を認め、JCOG(厚生労働省がん研究助成金指定研究班を主体とする共同研究グループ)の副作用判断基準で、グレード3(500−990/ml)は、14.4%、グレード4(500/m未満)は5.6%でした。血小板減少の頻度は少なく、25.000/ml以下に減少したのは1例のみで3.3%でした。
CD20抗原を細胞表面に持たない好中球や血小板がリツキサン投与にて低下する理由は明らかではありません。しかし予想されているメカニズムとして以下のことが考えられています。リツキサンはB細胞上のCD20抗原に結合し、リツキサンの持つFc部分がエフェクター細胞の持つFcレセプターと結合しADCC活性を惹起しますが、好中球や血小板もFcレセプターを持つ為、これら一連の免疫反応に巻き込まれ、一時的に好中球や血小板の減少が起きます。これをinnocent
bystander
effect(イノセント・バイスタンダー・エフェクト=無関係な血球に対する効果)といい、血球減少に機序の1つであると考えられています。
基本的にこのような血球減少は一時的であると考えられています。ただ末梢血中に腫瘍細胞(B細胞)が多く、ADCCなどの免疫反応が強く起こると考えられる症例は、血球減少も高度になる可能性があります。

【4】免疫系に対する影響
末梢血中のB細胞はリツキサン投与後速やかに消失し、回復までに約6〜12ヶ月を要しますが、血清中の免疫グロブリン(lgG、lgA、lgM)の濃度は殆どの症例で正常範囲を保ち続けます。このため、免疫抑制状態が増強したり、それに伴って日和見感染が増加したりすることは少ないです。

【5】以上に分類できない重篤な症状
脾腫のある方の脾破裂や急性の呼吸不全、重篤な不整脈などの報告もありますが、頻度は相当低いと考えられています。
以上、リツキサンの投与によって起こり得る副作用について書きましたが、基本的には強い副作用の出現は少ない良い薬剤です。
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