羊の世界

The Mutton World



羊の世界。というか羊肉の世界。中国で食べられる料理の中で、実は確固たるポジションを占めるジャンルである。
羊肉の料理は北京料理に組み入れられることが多い。[シ刷]羊肉シュワンヤンロウ=羊肉のしゃぶしゃぶというのが有名な羊料理だが、これは北京に店が多く、北京の名物とさえされている。日本で使われている中国語の教科書にも、よくそういう記述が出てくる。
それ自体事実だし、ひとつも間違っていない。だがここでは、敢えてその分け方はしないことにする。
なぜか?羊肉料理は北京の料理というより回族やウイグル族の人たちの料理、地域の食文化というより民族・宗教を根拠とする食文化だとも言えるから。そして、回族の人たちは、実は中国のあちこちに住んでいるからである。新彊ウイグル自治区にはもちろん、それ以外のたくさんの省・自治区に彼らはいて、ムスリムとして生き、羊を食べる日々を送っている。北京でも上海でも広州でもその他さまざまな町でも、羊肉の食べられる店は回族の人だけでなくみんなに門戸を開いている。
回族のほかに、モンゴル族も羊が大好きである。この人たちが羊を食べる理由はまた少し違う。また、モンゴル族の遊牧民の場合、羊「肉」の「料理」を食べるというよりは、羊「全体」を「活用」し尽くすのが彼らの真骨頂。料理の仕方がいろいろあるというよりは、肉も食べる、血もソーセージにして食べる、乳もありとあらゆるタイプに加工する、というところが大きな特徴で、その点でも随分様子は違う。また遊牧民でないモンゴル族なら、羊の食べ方もまた相当違うだろう。というように、一口に羊といっても、まあいろいろあるわけです。
というわけで、いざ羊の世界!






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上海にはウイグルの人が集住しているエリアがあり、羊料理を出す店が並んでいます。そことは違う場所にありますが、羊ならここ!まずとにかくここ!と地元の人も観光客も全員口を揃えるのが、こちら、「洪長興」です。足を踏み入れるや、どうです、この雰囲気。広いフロアにずらーっとテーブルが並び、そのほぼすべてが、[シ刷]羊肉シュワンヤンロウ=羊肉の鍋を食らっている!テーブルというテーブルから煙と湯気が上がり、どよめきと化した談笑がフロア全体を覆う壮観さが、写真ではすでに半減してしまってます。 中央に煙突が立ち、下で炭を燃やす、文字通りの「火鍋」。水を張ったほうろうの受け皿に乗せて、軽々と運ばれてきます。でもって、メニューにずらりと並んだ具材をあれこれと頼んでいく。おまかせ鍋セット、なんてあったかなあ?好きなように注文する方が百万倍楽しいので、気づきませんでした。右手に見える「凍り豆腐」など、元は寒冷地の食べ物だったのだなあと思わせるに十分。材料をどんどん放りこみ、煮えたら小さな茶碗のたれ(これが複雑で独特でうまい!)で食べる。





ふつうの「羊肉ヤンロウ」が手前、霜降り状態の高級品「肥羊肉フェイヤンロウ」が奥のピンクの肉。いずれも半解凍状態で薄く薄く切ってあり、日本のしゃぶしゃぶと同じように食べる。 餃子の形をしたこの具は、中身は羊ミンチのようだが、なんと皮が卵焼きなのである。他では見たこともない珍しさだが、ふわふわでとろとろで、鍋から引き上げたあっつあつはたまりません。





かなり量を頼んだはずの鍋をものも言わずに一気に平らげ、なおも羊肉串ヤンロウチョワンを食べようということになった。何の気なしにひとり3本と言ってみたところ何と!大きい…。どのくらい大きいかというと! ほらー、こんなんですよー。焼き鳥とか串焼きとか日本サイズを思ってたら倒れそう。スパイスがまたよーく効いてる。こってりしっかりした肉で、腹持ちもいいこと。
ちなみに顔出しOKの勇敢なこの女性は、当地の某△△館にお勤めです(「秘宝」館ではない。国益のため秘密)。





老舗「洪長興」は、今はデパートの一フロアに入っています。が、昔は別な場所に自身の店を構えていたそう。上海市の高架道路建設事業のため移転したのですが、その以前の店がこれ!なんとイスラム風情あふれる建物か。取り壊しを惜しむ声が高かったのももっともだとうなずけます。
これは巨大な写真パネル。エレベーターが店に着き、ドアが開いた途端、真正面で視界全部を占領します。








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