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あちこちのキンギョや熱帯魚関係のサイトを覗いて歩くとよく出てくるのが「ブラインシュリンプ」と言うキーワードである。ブラインシュリンプとは商品名「シーモンキー」と呼ばれ、ある一定の世代には有名だ。少年誌の広告にシーモンキーを飼ってみませんかという通販がよく載っていたからである。それはある意味甘酸っぱい記憶となって我々の世代の心の奥の柔襞をまさぐるのだ。実際当時購入したものも少なくなく、さらにかの有名な学研の科学と学習の付録としても登場しているし、現在においてもシーモンキーを扱ったサイトが散見される。
前置きはともかくとして、キンギョ飼育家(そんな呼び名あったのか?)の間では、ブラインシュリンプは小型のエビの幼生で、稚魚用の高タンパク高カロリー高ミネラルの天然飼料として、つとに有名である。ただ、人工飼料のように容器から出してすぐ投入は出来ず、一晩塩水に漬けエアレーションをかけて孵化させ、その孵化したてを稚魚に与えなければならない面倒さがあるし、生き餌としては短命なので水を汚しやすい欠点もある。そのため初心者には敷居の高いエサなのだ。しかし、そんな手間暇をかけても与える人が後を絶たないのも前述のように大変優れたエサだからだ。
そんなわけで前々から興味があったのでサイトを見て火が点き、まるで瞬間湯沸かし器のように血が上り、次々とブラインシュリンプの孵化方法のページを読みあさった。そのまま会社の帰りにはブラインシュリンプの卵を一箱と孵化に必要な機器を購入して帰った。
その夜は説明書を読んで寝るだけにしようと思っていたが、ついつい稚魚水槽の置いてある流しに立ちセットし始めてしまった。容器は500mlのペットボトル、それに一杯の水道水を入れ説明書の通り約10グラムの食塩を混ぜエアレーションのプラストーンを差し込み、ボトルをお湯を張ったバケツに入れ、ブラインシュリンプの卵を約0.4グラム投入しエアレーションをかけた。お湯の温度は28度ぐらいが適当とサイトにあったので指先温度計で「こんなもんだろ」と結構アバウトな設定で孵化作業はスタートした。最初ブラインシュリンプの卵は、エアレーションで水面より上まで巻き上げられペットボトルの壁に張り付いてしまうものと、ボトルの底に溜まってしまうものが大量にあった。ボトルを振って混ぜるがいくらやってもまたすぐ元に戻ってしまうため、エアレーションを強めにかけて卵を全て巻き上げ且つ、ボトルの壁に卵が張り付くのを少なくした。

孵化作業中の流し

エアレーション中のペットボトル
下の黒っぽいのが卵の溜まったもの
水面にも溜まっている
スタートしたのが午後9時頃だったが、午前2時過ぎに見てみるとボトルを入れたお湯は冷たい水になっていた。冬だから当たり前だが、これではいかんと物ぐさモードを改め予備のヒーターを引っ張り出し設置した。最初からこうしていればいいんだが、やはり面倒なのである。その後、朝いつものように稚魚にテトラベビーを与え出勤した。
夕方帰宅してブラインシュリンプのボトルをすぐ見に行ってみると、ボトルが何となくオレンジ色になっていた。よく見ると無数のブラインシュリンプが孵化してうごめいていた。それはテトラベビーの粒子より一回り大きいくらいのもので、ひとつひとつがうにょうにょとボトルの中をゆっくり泳いでいる。肉眼では光の点にしか見えないが、なんとなく鳥のように両手を羽ばたいているようにも見える。ほぼカタログ通り9割近く孵化したようである。初めてで(さらにアバウトな設定だったが)これだけ孵化すれば大成功だ。時間的には21時間ほどで孵化したことになる。

オレンジ色のが全部、孵化したブラインシュリンプ
とりあえず夕食を食べてから、ブラインシュリンプのボトルのエアレーションを止め、ブラインシュリンプが沈殿するのを10分ほど待つ。だいたい澱切ったところでスポイトをボトルに突っ込んで底に集まったブラインシュリンプを吸い出そうとしたが、スポイトが底まで届かない(バカだ、こいつ)。一瞬顔面に縦線が何本か入ったが、予備の新しいスポイトを今日買ってきたことを思い出し、それを突っ込んでみるとなんとか底まで届いた。吸い出したブラインシュリンプは塩分を落とすためフィルターの上で真水で洗うのが本来だが、物ぐさ飼い主は小さな古いミルクパンにブラインシュリンプを集めると沈殿してから上澄みを捨て、水道水を足して塩分を希釈しただけで済ませた。それをさらに沈殿させたところでスポイトで吸い上げ、いよいよ稚魚水槽に投入してみた。
ブラインシュリンプは煙のようにポッとスポイトの先から押し出されやがて水中に拡散していく。・・・・稚魚の様子を観察していると、気が付いてすぐ食べるやつもいるが、無視したり口に入れても吐きだしてしまうやつもいる。今までテトラベビーしか食ったことがないから仕方ない。でもこんなに手間暇とお金をかけて用意したんだから食えよっ。

ブラインシュリンプを捕食中の稚魚
白い小さな点がブラインシュリンプ
稚魚水槽にブラインシュリンプを投入してもまだ大量に余った。そこで親キンギョならあっという間に平らげてしまうだろうと親キンギョの水槽に投入してみた。しかし、すぐ拡散してしまって親キンギョはほとんど口に入らない。一応「うまそうなものが来たぞ」という認識はあるようで、ガバガバと口から水を吸うが、吸い込まれるブラインシュリンプは数匹程度である。まるで夜空の星のように水槽中にブラインシュリンプが漂っているが、親キンギョたちには小さすぎてもてあましているようであった。
後で稚魚水槽に戻ってみると、稚魚たちは割と積極的にブラインシュリンプを追っている。動くものに気を惹かれるようである。1時間後にはおなかを赤いブラインシュリンプで一杯に膨らませた稚魚がたくさんいたが、まだ食べ慣れないのであまり食べていない稚魚も少しいるようだ。

ブラインシュリンプ想像図
さて、話は戻るが、今日帰宅途中に市内の瀬戸物屋をまわりビアグラスを買ってきた。もちろんこれはブラインシュリンプの孵化用。ペットボトルでは底が広いので巻き上げきれない卵が溜まってしまうため、底が鋭角に尖っているビアーグラスに目を付けた。一個320円と高くない。試験管の導入も考えたが、ひとまず今日はこれで孵化をさせてみることにした。ペットボトルの代わりにバケツにセットしてエアレーションをかけると、底に溜まる卵は少ないようだ。後は明日のお楽しみ。
ちなみにビアグラスを購入する時に店のおばちゃんに「これで飲むとジョッキとは違ったうまさなのよ」と言われたが、「これでシーモンキー湧かすんです」とはさすがに言えなかった。
3月14日
ビアグラスでブラインシュリンプを発生させてみた。どの容器も一長一短である。
今日も夕食にはブラインシュリンプを与えたが、量が多いようである。仕舞いには満腹で見向きもしなくなったり、食べてもすぐ吐き出してしまう。明日の分はさらに量を絞らなければ。
今日親水槽で保護した第5期生の稚魚一匹を稚魚水槽に移した。まだロクに泳げないので、ブラインシュリンプにいいようにたかられている。
3月27日
最近どうもブラインシュリンプの孵化率が3割程度に思えるので、大枚はたいて最終兵器「海水比重計」を購入する。ついでに安いアナログ温度計とバケツも購入。バケツで大量に塩水を作れば塩加減もはっきりすると言うものだし、毎日ちまちまと塩水作りせずとも済み特に朝出勤前のエサ準備が楽になる。
サイトをあちこち検索してみてブラインシュリンプの孵化時の海水の比重を1.020〜1.024と定めてみた。その後、今まで通り水道水500mlと塩10gの割合を10倍してバケツに5Lの塩水を作って比重を計ってみる。1.010。「全然低いじゃないかっ」。念のため別に500mlだけ作ったものも計ってみるとやはり1.010。今まで計量スプーンで塩を量っていたが全然役に立っていない。バケツに塩を追加投入して比重を計るという作業を何度か繰り返すが、なかなか1.020に達しない。ついには、最初に投入した塩の2倍になったろうと思しき頃、ようやく比重計の針は1.020を少し越えた。この比重計と1.020という孵化時の比重を信用するならば、今までの塩濃度では全然足りなかったと言うことになる。
さらに湯煎のバケツに投入した温度計は、32度あった。ブラインシュリンプは30度を超えると孵化しなくなってしまう。道理でバケツから湯気が立っているように見え、指を突っ込むとぬるい風呂くらいに感じたわけだ。どうもヒーターの温度センサーの位置がバケツの底になっているのがまずいと気づき、水面近くまで移動する。
つまり今までは塩濃度と水温が外れていた、という仮説が成り立つ。その仮説を実証するため比重1.020の塩水と27度程度に調節して再挑戦中。結果が出るのは明日の今頃である。
3月28日
ブラインシュリンプの大漁じゃ。昨日の温度と比重調整がうまく行った。まさに科学の勝利。「データで語れ」ってんだ。(意味不明)

久々の大漁

お菓子の容器にコーヒードリッパーで塩抜き
大量に採れたので親キンギョ水槽の稚魚7期生にも配布。一番元気な稚魚は早速パクついている。
この分だと、すでに今朝仕込み済みの明朝分ブラインシュリンプも期待出来る。さらにバカよけに湯煎バケツにエアストーンを投入し、水温の均一化を図る。ポンプ数とパワーの問題でエアをこれ以上分岐するのは困難だが、稚魚飼育箱のエアレーションは夜間は止めるので、そちらとチューブを繋ぎ換えてパワーソースとする。
稚魚7期生にブラインシュリンプを投入したら、親キンギョたちがものすごい勢いで集まってきた。飼育箱のスリットからチュバチュバとブラインシュリンプを吸い出している。そのパワーたるや、スリットから1cm以内なら3回の吸い込み動作で吸い込んでしまうパワーだ。ブラインシュリンプならかまわないが、これが稚魚なら困る。稚魚があまり動かないようにエアレーションを止めて、消灯してしまう。明日にでも何か対策を講じなければなるまい。
 
稚魚のいる飼育箱のスリットからブラインシュリンプを吸い出す親キンギョたち
3月30日
ブラインシュリンプの孵化容器としてビールピルスナーを買ってきた。逆円錐形の細長いグラスである。メインで使ってきた逆さペットボトルは一番大容量であるが、飲み口の部分が落ち込んでいて、その部分に卵が溜まってしまい孵化率が落ちるし、孵化したブラインシュリンプが見えずスポイトで吸い上げにくいと言う欠点があった。その点ピルスナーは透明だし卵が停滞しにくい。さらに毎分3.5リッターの排気量を持つ我が家最大のエアポンプも投入。現在評価中につき、乞うご期待。
4月06日
各種実験の結果、ブラインシュリンプの最も効率がいい孵化容器はビールピルスナーの卵形と結論づけた。
  
左から改造ペットボトル、卵形ピルスナー、V字形ピルスナー
ペットボトルそのまんまとそれを逆さにしたもの、ピルスナーと卵形とV字形のもの4種類を使用した結果から言うと、ペットボトルそのまんまはそれほど悪くはないがやはり底に卵が澱みやすいし、口からスポイトが入らない。ペットボトルを逆さにしたものは飲み口の部分に卵が溜まりやすく、孵化したブラインシュリンプは底に溜まる習性があるがキャップのせいでその部分が見えないためスポイトで吸い上げる時にやりにくい。
 
卵形、V字形それぞれの卵の巻き上げ状況。
卵形は少ない泡で卵が一粒ずつ確認出来るくらいゆったりと動いているが、
V字形は卵がカメラに写らないくらい激しくエアで撹拌しないと停滞する卵が出る。

湯煎中はバケツにもエアレーションをかけて水温を均一にする
一方ビールピルスナーの方は全体が透明で孵化したブラインシュリンプの回収もしやすいという共通のメリットがある。ワイングラスに近い卵形の方は、底が楕円形で深さもないので水圧がかからず、水流の循環が維持しやすくエアレーションにそれほどパワーが無くても卵の停滞が起きにくいのが最大の特長。欠点としては一本脚が長くて高重心で、湯煎のバケツなど底が平らでないものに入れるとぐらぐらと倒れやすいこと。V字形の方は、低重心で倒れにくいものの深さがあるためエアレーションにパワーが必要で、さらにV字形の底は水流同士がうち消し合うようで循環しにくく卵が停滞しやすい。そのためエアレーションのパワーが必要である。
Web上の観賞魚系各サイトを覗いてみると、ブラインシュリンプの孵化の際の塩分濃度は1%〜3%までバラバラで、案外うるさくはないようだ。水温は27〜28度とサイト間のばらつきは少ない。エアレーションは「コポコポ程度」〜「強く」まで表現にも幅がある。ここで自分なりのブラインシュリンプ孵化方程式を導き出してみると以下のようになる。
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塩分濃度は
比重1.022と
する
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結構ずぼらでもいいようだが、水量と塩の重さによる%はあまり正確ではない。塩は水分の多い粗塩(荒塩)と水分の少ない精製塩があるが、粗塩だと塩の粒子間に空間が出来やすく計量スプーンで計るには向かない。粒子密度も精製塩とは違うため、計量スプーンで正確な体積を量るには精製塩とは違う乗数をかけなければならない。正確に重さを量るには電子天秤が必要だが、0.1gまで量れるものは1万円以上する。以上から考えると最もコストパフォーマンスがよく正確なのは、海水比重計の導入である。これならば塩をいちいち量ることもなく、出来上がった塩水の濃度が一発で読める。値段も1500円程度だろうか。700円くらいのボ゙ーメ計もあるが換算が必要なので、針式の比重計の方が後々面倒がない。比重で管理しておけば、あとあと塩の種類を変えても同じデータが使い回せる。
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比重計は、内部に塩水を入れて計る
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水温は
28度とする
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低温でより高い孵化率を目指す方法もあるが、サラリーマンとしては24時間かそれ以下で孵化してもらわないと困るのだ。もし孵化に25時間かかるなら毎日餌を投入する時間がその分ずつ遅れていってしまい、朝の10時や夜中の12時に孵化されてはまずい。これをフォローするにはさらに多くの孵化容器とエアポンプが必要になる。そんな手間をかけたくない。なお、夏以外はヒーターで湯煎することになるが、湯煎のバケツもエアレーションで撹拌しておかないと、いくら温度センサー付きのヒーターでも部分的に30度を超える「お湯」が出来てしまう。
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エアレーションは
強くかける
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卵が停滞してしまうと孵化率が落ちる。全ての卵が水中を浮遊していないといけない。これにはそれなりのエアポンプのパワーが必要だ。容器の形が複雑だったりするとさらにエアが必要。エアを強くすると孵化したブラインシュリンプが砕けて水質が悪化するという説もあるが、一般的な水槽用エアポンプとプラストーンの組み合わせならばそれほど気にする必要はない。エアレーションのパワーは「卵が全て巻き上げられる」ことが最低条件で、あとは水量や容器サイズなどとの兼ね合いで卵が容器から飛び出したりしない程度に抑えることが条件だ。
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以上の要件を満たせば24時間でもそれなりの孵化率が得られる。
4月11日
ブラインシュリンプをピルスナーから抽出する時にスポイトでは何回も吸い上げてフィルターに落とす動作を繰り返さなければならないため、新兵器を導入した。それは伝統的な油差しである。

これを逆さにして突っ込むと、ほぼ一度でピルスナーの全容量を吸い上げることが出来る。ただ、そのままでは口が細すぎて吸い上げに時間がかかるので、先端をカッターで切り落とし口を広げてある。あまりやりすぎると吸い上げて油差しを持ち上げた時に口からブラインシュリンプを含んだ水が失禁のようにボタボタ漏れてしまうため程々にする。
試験飼育中のブラインシュリンプが少し大きくなった。一番大きいものは3mmほど。このまま愛情を注げば美少女に育つであろうか。

ブラインシュリンプ想像図その2
4月21日
学研「5年の科学・4月号」ふろくのスクリーン式顕微鏡とデジカメで孵化直後のブラインシュリンプの撮影に成功する。

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