文書管理の考え方

 

■文書管理の重要性

 

 文書は、情報の伝達や記録のために作成されるものです。業務遂行のうえで文書の果たす役割は非常に大きなものがあります。しかし、作成された文書は、廃棄されない限りどこかで蓄積されてゆきます。もし、これを放置したままにすると、オフィスは文書で埋もれてしまうことになるでしょう。通常は軽易な文書であれば、使用後すぐに廃棄されていることと思います。

 ただ、文書は記録や証拠となるため、法律で保存することが義務づけられているものがあります。 また、そうでなくても、会社にとって重要な文書は一定期間保存しておかなければならないでしょう。その切り分けを行い、適切に管理を行うことが求められます。つまり、何らかの基準を設けて、社内外で発生する文書の交通整理を行わなければならないということです。

 

■文書保存年限決定の基準

 

 文書の保存年限を設定することは、適切な文書管理を行ううえで大事なポイントの一つでしょう。保存年限が定められていれば、これに基づいて保存、廃棄をすればいいわけですから、管理が容易になります。

 ただ、それをどのように設定するかとなると判断に迷うことになるでしょう。もちろん、法定保存年限のある文書は、これに従うしかありませんので、保存年限をうんぬんする余地はありません。

 問題になるのは、それ以外の文書の保存年限をどうするかです。これは、各社の事情によって異なってきます。ですから、一律の基準を設けることはなかなか難しいというのが実情です。そこで、ここでは保存年限を設定するにあたっての考え方を掲げておきたいと思います。

 

l        利用価値から

文書を保存するのは、後でその文書を利用することがあるからでしょう。つまり、利用価値があるから保存するんだということになります。逆にいえば、保存価値がなくなれば廃棄すればいいということです。保存年限を設定する場合、まずこの利用価値という側面から考えるべきでしょう。

 

l        過去の経験則から

これは、ある文書がどのくらい過去にさかのぼって利用されたか、という経験則から保存年限を設定しようという考え方です。その実績に基づいて保存年限を設定するということになります。

 

l        原本かコピーかの違いから

同じ文書をあちこちで保存していることもあると思います。その場合、文書の内容だけで保存年限を設定すると、原本、コピーに拘わらず同じ年限保存しなければならないことになってしまいます。これはどう考えても不合理です。原本がどこかで保存されている場合、コピーは保存しないといった取り決めにすべきでしょう。

 

 このように、保存年限を設定するにあたってはいくつかの視点がありますが、それでも判断できない場合は、なるべく短めの保存年限を暫定的に設定すべきです。そして、その保存年限に問題があれば、必要に応じて見直しをすればいいのです。リスクを考えて長めに設定すると、結局その年限が経過するまでそのまま保存されることになり、非効率ということです。

 

■効率的な文書の整理と保管・保存

 

 文書保存年限を定め、これに基づいた保管・保存を行えば一定の文書管理は可能でしょう。しかし、保存年限の設定は、文書管理の仕組みの一部にすぎません。より効率的な文書管理を行うには、文書管理全体について最適な仕組みを立案し、これを運用してゆくことが大切です。

 そこで、次に効率的な文書管理を行ううえでの留意点について説明しておきましょう。

 

l        文書管理のルール化

まず、自社における文書管理の仕組みを考える必要があります。文書をどのように分類し、どんな形で保管や保存を行うか、といったことを取り決めなければならないということです。そして、それを取り決めたら、これをルールとして明文化すべきでしょう。文書にするのは面倒なため、往々にしてルールを口頭で説明するだけで運用していることがありますが、これでは誤解を招きやすく適切な管理は行えません。やはり、文書管理規定といった形でとりまとめておくべきでしょう。

 

l        文書管理責任者の明確化

いくら文書管理のルールを定めても、それが守られなくては絵に描いた餅と同じです。単にルールを定めるだけでなく、実際にそれが運用される体制を作る必要があります。ことばはよくないかもしれませんが、ルールを監視する番人をおかなければなりません。つまり、文書管理の責任者を明確化するということです。

それでは、誰を責任者にすればいいかということになりますが、一般的には日常的に文書を取り扱うことの多い総務部門長が適任でしょう。もちろん、ほかに文書に精通した人がいるのであれば、その人を責任者としても構わないと思います。

 

l        文書の整理

整理整頓ということばがあります。整理とは、一定の基準のもとに分類し、必要なときにすぐに取り出せる状況になっていることをいいます。これに対して整頓とは、同じ形やサイズに統一されていることです。

文書管理にあたっては、いずれも大切なことですが、文書を活用するという視点から考えた場合には整理されていることの方がより重要でしょう。いかに文書をわかりやすく整理しておくか、が文書管理のポイントの一つではないかと思います。

分類方法もいろいろ考えられますが、一番多いのは書簡部門ごとに区分けする方法ではないでしょうか。その中を更に分類する必要がある場合は、通常はその内容によって契約関係文書、会議関係文書、といった区分けすることになるでしょう。また書庫等で保存する場合は、保存年限別に区分けすることもあると思います。

いずれにしても、自社において一番使いやすい形で文書整理をしておくべきでしょう。

 

l        文書の保管と保存

保管も保存も同じ意味で理解されていることが多いかもしれません。しかし、文書管理でこの用語を使うときは、それぞれ異なる定義で区分けしていることもあります。例えば、オフィス内で文書を保有することを「保管」とし、オフィス外の書庫等で保有しておくことを「保存」とするというようにです。ここでも、これにならって使い分けすることにします。

さて、オフィス内で保管する場合は、個人の机の中に保管する場合と部門内で共有するキャビネット等で保管する2つの方法があります。個人の使っている文書は机の中、共通の文書はキャビネットの中というように使い分けているのが一般的かもしれません。しかし、最近は文書の私物化を防ぐ意味から、個人の机で保管することを禁止し、すべてキャビネットで保管する方法をとるところもあります。

これはどちらも一長一短があります。すべての文書を共有キャビネットに保管していると、私物化は防げるかもしれませんが、利便性から考えると使いづらいでしょう。単純にどちらがいい悪いと考えるのではなく、保管場所の広さや社員の性格等、自社の状況を勘案したうえで、もっとも効率的な方法で保管することをを検討すべきではないかと思います。

次に保存ですが、これも自社で書庫を保有して保存する場合と書庫業者の書庫を利用する方法があります。自社所有の書庫の場合、借りている訳ではありませんから表面的なコストはかからないかもしれません。しかし、管理者がよほどしっかり管理しないと、乱雑になったり保存状況が悪くなったりといったことが起こりがちです。

それに対して、外部の書庫業者を利用すると確かにコストはかかりますが、きめ細かいサービスを受けることができますし、良好な保存状況を維持することもできます。目先のコストだけで判断するのではなく、これらのことを比較検討したうえで、保存方法を決定すべきでしょう。

 

l        保存形式

文書というと、通常は紙媒体の形式を連想することでしょう。しかし、文書の保存形式は紙媒体とは限りません。以前からマイクロフィルムの形で保存されることもありましたし、最近はCD−R/RWやMO、DVDといった電子媒体で保存することも多いのではないかと思います。

紙媒体で保存する場合に、一番困るのは場所をとるということでしょう。1枚の紙自体は薄っぺらですが、社内で使われている文書が1年間溜まるとどんな小さな会社でも相当な量になることと思います。これを保存するとなると、やはりある程度の保存場所を必要とします。それに対して電子媒体の場合には、1Mのフロッピーディスクでも文字情報だけであればA4用紙数百枚分を保存することも可能です。最近のCD−R/RWの場合は、その640倍になる訳ですから、保存場所を比較すると比べものにならないでしょう。最近は法定文書も電子媒体での保存が許される方向に向かっているようですから、可能なものは電子媒体化すべきではないでしょうか。

もっとも、電子媒体にも問題はあります。まず電子的に書き込まれているわけですから、そのままでは見ることができません。ディスプレイに表示したり、印刷しなければなりませんのでその手間がかかります。更に、保存状態が悪いと書き込まれた情報が消えてしまうこともあります。大切な情報が消えてしまっても、これを復元することはほとんど不可能です。そういうい意味では、紙媒体よりも保存状態に気をつける必要があります。

このように保存形式にもいくつかありますので、その特性をうまく活かせる形式で保存すべきでしょう。