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マーガレット・セント・クレア
マーガレット・セント・クレア Margaret Neeley St. Clair (1911〜1995)
アメリカSFを見るとき、やたら中間層の厚みがあることに気づく。ある水準以上の作品を定期的に供給できる作家が揃っていたのだ。マーガレット・セン
ト・クレアもその一人、イドリス・シーブライト Idris Seabright
名義で書いてもいて、1940年代後半から1960年あたりまでが全盛期で、従って50年代の佳作を知る通好みの作品を書いていました。
彼女の関連サイトはここ。
http://www.gwillick.com/Spacelight/st_clair.html
http://isfdb.tamu.edu/cgi-bin/ea.cgi?Margaret_St._Clair
http://www.hycyber.com/SF/stclair_margaret.html
http://www.catch22.com/~espana/SFAuthors/SFS/StClair,Margaret.php3
http://www.fantasticfiction.co.uk/authors/Margaret_St.Clair.htm
日本のセント・クレア・サイトと言えば、やはりここ、らっぱ亭さん
の「とりあえず、ラファティ」この中
『アルタイルから来たイルカ』The
Dolphins of Altair (1967) 矢野徹訳(ハヤカワ文庫SF)
遠い遠い昔、アルタイルからやってきた水陸両棲の知的生物は、やがて陸に棲むものと海に棲むものとに完全に分かれました。彼らはお互いに干渉せ
ず、互いの領域を侵犯しないという聖約を取り交わしました。陸に棲むものは人類となり、海に棲むものはイルカとなりました。その人類は聖約を忘れ去り、イ
ルカの海に害をなすようになってきました。そこで、イルカたちは、自分たちの呼びかけを受け止められる人を求めて、行動を開始した。というのが物語りの
バックボーン。
人類とイルカは哺乳類の一系統としてどこかで分岐したというのではなく、アルタイルから種族の末裔というのだが、読む限りそうとんでもなくない。要はそ
れなりの説得力があるということ。
むしろ海洋冒険SFだと思って楽しめる。ヒロイン(人間の女性)は鮫を気にしながら、大海原をイルカに乗って、人類の愚行を考える。時にはイルカたちは
海流に乗り外界へ出たり、餌である魚を追ったりする。そういうお話。だが、その一方で、かなり環境擁護派の過激な話でもある。
『どこからなりとも月にひとつの卵』Change
The Sky and Other Stories (1974) 野口幸夫訳(サンリオSF文庫)
「空を変えよ」
自分の行きたい世界を探す男、年を取り星への世界を断念せざるを得なかった男は、芸術家にその世界の創造を依頼する。
「ボーリョー」
ボーリョーは葡萄園ではない。ヴァルハラのこと。ワンアイデアストーリー
「結婚の手引」
ドルフという種族はエネルギーを引きだすことができるらしい。しかし、それが書かれているのは「結婚の手引」であった。そこで、ビルはこの「手引」を入
手しようとする。シェクリィばりな話である。
「預言者の時代」
核戦争が起こって、文明が崩壊し、透視能力・千里眼・遠聴力のあるベンジャミンは他の預言者たちの中に混じった。
「さればわれらの挨拶を避け…」
動物を互いに避けさせる信号が見つかった。その後、その反動で互いに集いせしめる効果もあることも。話は、思わぬ方向への行くのであった。
「古風な鳥のクリスマス」
牧師と魔女と烏と電力会社という、異色の組み合わせ。
「ダミー」
シリウスに向かうスターシップで、人間が人形に代わっていくほらー?
「渇いた神」
金星で原住民からある罪で追われた男は神殿に逃げ込んだが、それは新たなる苦難の始まりだった。シェクリーやテン的なお話。
「愛他主義者」
遭難したその星で、良い目を見たというので、真似をした自己中心主義男。まあ、ものごとには裏があるってことよ。
「上陸許可」
物事には尺度がありますが、あんまりかけ離れると理解できないこともあります。
「地球のワイン」
ワインを嗜むのに悪い宇宙人はいないって話。
「ある解答」
調子が悪いと思ったロボット、自ら修理に赴くが、意外な事実。最後の解決法は、確かにロボットではできない方法。
「深夜勤務」
何かにおびえる深夜勤務の男、それにしてもお客も変。
「アイアン砦」
静かな均衡がふとしたことで破れ、静かな侵略が始まる。ディック的SFホラー。
「街角の女神」
彼が街角で拾ったのは女神だった。けれど彼女の命を繋ぐものは…
「どこからなりとも月にひとつの卵」
<今月の卵>クラブ会員は、孵す卵を待っていた。そこに郵送されたのは予想外の卵だった。
「日々の死」
十年一日のごとくの戦いの中ふと気づいた真実。
「ラザロ」
人造肉醸成場にての怪奇。
収録された作品のほとんどは50年代のもので、雑誌に短編SFが載るのが発表の中心だった頃の傾向が出ている。特にギャラクシー誌の得意な社会風刺的
SF、ロバート・シェクリィやウイリアム・テンの作風や、アスタウンディング誌的な科学ぽいアイデアストーリー、そしてP・K・ディックのアイデアとホ
ラー要素或いは強迫観念のないまぜの作品と同傾向の作風がある。その一方、F&SF誌に見られる詩的な繊細さ、むしろこれこそ、(ホラー趣味を除けば)
マーガレット・セント・クレアの本領ではないかと思う。「街角の女神」「地球のワイン」やここには収録されていない「光、天より落ち…」が、何に訴えかけ
ているのかというと読者の感性である。
とにもかくにも、50年代SFというのを一人で体現している、そんな感じがするのがマーガレット・セント・クレアないしイドリス・シーブライトだと思
う。決して、大々的に傑作なんて言い方はしないが、忘れ去るには惜しい作品、そういうものを書いた女性SF作家だ。
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