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3.3 潮汐力の緩和
次に示すのが、[10]とその続編[11]で用いられた潮汐力緩和法に関する図である。

fig. 3.3 の原点に宇宙船があるとして、座標(0,0,-R-h)の中性子星からの潮汐力を防ぐために、質量mの高密度の潮汐力補償体によって、潮汐力を緩和するというアイデアである。潮汐力補償と訳されているが、潮汐力を補うと言うよりは、潮汐力を緩めると言うほうが適切だと思うので、緩和法として紹介する。fig. 3.3の原点は、中性子星を巡る軌道にあり、自由落下と同じ状態であるので重力の影響は受けない。また、潮汐力補償体の重力は、潮汐力補償体が原点に対して対称に配置されることで相殺されている。従って、残る問題は潮汐力だけである。中性子星によるフィールドの全微分行列は、(100)式にfig. 3.3の条件を導入して、次のようになる。

それに対して、潮汐力補償体のフィールドの全微分行列は、原点からの距離をr、x軸となす角をφとすれば、(101)式を流用することができるのでそれを用いる。
φ=0 or πのとき

φ=π/3 or 4π/3のとき

φ=2π/3 or 5π/3のとき

(110),(111),(112)式より、6つの潮汐力補償体のフィールド全微分行列を合成すると次のようになる。

更に、中性子星のフィールド全微分行列(109)式と潮汐力補償体のフィールド全微分行列(113)式を合成すると次のようになる。

(114)式より次の条件式を満たせば、中性子星の潮汐力が相殺できるということになる。

アイデアは面白く、物理的にも洗練された方法だと言える。
だだ、潮汐力補償体は6つであるのが気にかかる。軌道の安定性を考えるなら、正三角形が組合わさった六角形というのは理解できる。しかし、それを除けば、6つ以外の数でも問題ない筈である。そこで一般的にN個の補償体で潮汐力緩和できるかを考えてみよう。x軸に1つ乗っており、残りは同一半径上の円周に等角度で並んでいるとする。その第k番目(1 ≦ k ≦ N)の補償体がx軸となす角度をθkとすると、次の様に表せられる。

従って(101)式を流用し、k番目の潮汐力補償体のフィールド全微分行列を求めると次式となる。

次に、(117)式を用いて、中性子星のフィールド全微分行列(109)式と全ての潮汐力補償体のフィールド全微分行列式を合成すると次のようになる。

但し、Sc(N)とSs(N)は次の様に定義する。

(118)式で、z軸の潮汐力が0にならなければいけないので、(119)式、(120)式も0でなければならない。それを証明するには、sin()、cos()を含んだ級数和を求めないといけない。幸いなことにオイラーの式というのがある。

但しi=(-1)1/2である。
このオイラーの式を利用すると、(119)式、(120)式を次のようにまとめることが出来る。

つまり、sin()、cos()を含んだ級数和が、複素数の等比級数和の実部、虚部となるために、等比級数の和の公式が使えることになる。但し、等比級数の和の公式が成立するためには、その比は1であってはならない。(122)式で、比はei2(2π)/Nであるので、Nが1でも2でも、比は1となる(N=1なら、Sc(N)+iSs(N)=1、N=2なら、Sc(N)+iSs(N)=2となる)。N≧3の時は、(122)式は次のようになる。

すなわち、N≧3ならば、Sc(N)とSs(N)は共に0ということである。その結果、一般的に3個以上の補償体があれば幾つであっても潮汐力緩和ができるということが証明された。
次に球体内部での場合の潮汐力を考えてみるが、フィールドから考えていけば、球体内部でのフィールドは、球体の中心から考慮する点までの距離を半径とする、元の球体と中心を同じくする、内部球体の質量のみによると考えられるので、とりわけ考える必要はない。但し、内部が空洞の球体の内部においては、潮汐力の原因であるフィールド偏差の元であるフィールド自体が無いので、引力同様に潮汐力もない。その次には円板(円筒)の場合を考えてみよう。
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