『ABBASEEN EXPRESSで、警察官に鋭く追及されたが、世界旅行者は余裕でかわす』@パキスタン
1999年8月19日。
昨夜は、ABBASEEN EXPRESSの寝具もない一等寝台(というか座席で)で、ごろ寝をした。
一応座席は木製ではなくて、やわらかかったので、痛くはなかったけどね。
とにかく疲れていたので、ぐっすりと眠れた。
周囲が明るくなっても、特にすることもなく、クターッとベッドで寝ている。
ベッドといっても、2段ベッドの一段目で、ただの座席なんだけどね。
つまり僕は、個室の一段目のシートでごろんと寝ていたわけだ。
世の中で一番気持ちいいのは、別に起きる必要がないとわかっている状態で、ぐずぐずと寝ている状態かな。
とにかく、半分眠っている状態というのが、気持ちいいわけだね。
ところが、僕が気持ちよく寝ていると、足をつっつく人がいる。

起きあがると、見も知らないパキスタン人が僕が寝ていたベッドに座る。
ワケがわからないが、一応朝なので、僕も起き出して、座席に座っていた。

しばらくしたら、車掌がやってきて、コンパートメント全員の切符をチェックした。
その雰囲気だと、僕の横に座っているパキスタン人男性も、ちゃんとした切符を持っているようだ。

8月19日は、駅に泊まる度に乗客が入れ替わっていった。
そのたびに車掌が来て、コンパートメントの乗客の切符を確認した。

僕がわかったのは、一等寝台なのに、普通の客車として使っているのではないかということ。
一等寝台車のコンパートメントに、短距離の客が次々と入ってくる。

一等コンパートメントで、次々に客が入れ替わるなんて考えられないことだよ。
しかも、車掌はちゃんと切符を確認しているんだから。

人が多いときは、僕が寝るベッド(シート)に4人も座った。
寝台ならば、僕の下段のベッド(シート)には、上段に寝る人との2人しか座れないはず。

でも昼間は、この6人寝台のコンパートメントをどうやら、12人用として使っているらしい。
ただ中国でもインドでも、一等車に乗る人間は、いかにも金持ちだ。

服装も上等だし、社会のクラスが完全に違うとすぐにわかるもの。
ところが、パキスタンの場合は、町で普通に見るような服装の人が一等車に乗ってくるんだよ。

これを含めて、僕が、「パキスタンには社会的な規律が存在しないのではないか?」と思ったのは事実だ。

ファイサラーバード(Faisalabad)という町に、午前7時45分到着。
実は僕はこのとき、ラワルピンディ鉄道駅で買ったパキスタンの鉄道時刻表を持っていた。

時刻表で見ると、ABBASEEN EXPRESSがファイサラーバードに到着するのは、午前5時10分になっている。
2時間半ほど遅れているね。

ところで、いま調べてみたら、ファイサラーバードというのは、カラチ、ラホールに次ぐパキスタン第3の都市らしい。
でも、旅をしていたときは、そんなに大きい都市だとは思わなかった。

だから、「イヤに停車時間が長いなー」と思っただけだ。
ファイサラーバードで、一等コンパートメントに人がドドッと入ってきた。

ファイサラーバードを出て、車掌がやってくると、切符を調べてそのほとんどは出て行った。
つまり、乗り込んできた乗客は、一等の切符を持ってなかったんだろうね。

インドもいい加減といえばいい加減な国だが、鉄道のクラス分けは厳しい。
一等車に2等車の切符を持った人間がぞろぞろ入ってくることは有りえない。

この点でも、パキスタンはイギリスが作ったシステムが、イスラム的に壊れているのだろうと、再確認する。
まあ、ファイサラーバードで朝食と、チャーイ(5ルピー)を2杯飲めたのはよかったけどね。

同じコンパートメントにいたパキスタン人の医者が、僕が日本人だとわかって、話しかけてきた。
彼は、「日本に行くにはビザが必要だが保証人になってくれないか」と言う。

また、パキスタンで知り合った日本女性のガールフレンドと連絡が取れなくなった。
それで、その消息を調べるように頼まれる。

どうやら、日本女性がパキスタンを旅していて、この医者と知り合ったようだ。
愛想よく「連絡を取ってあげる」と返事をした。
するとメモ帳に、その日本女性の日本の住所を書いて、渡してくれたよ。
僕は、「きっと連絡を取ってあげますね」と言うが、もちろんそんなつもりは全くない。
午前9時に「CHITIANA」という町を通り過ぎる。
この町を過ぎた野原で、ヤギがセックスしているのが見えた。

昼前に、でっぷりふとった自称「鉄道警察官」が入ってきた。
確かに警察官なのには間違いないが、昼間から酔っ払っている。

その警察官には、ちょっと痩せた下っ端の警官がくっついていた。
そうして、暇つぶしなのか意図的なのか、僕に絡んできたよ。

パスポートをチェックして、ビザについていろいろしつこく聞いた。
確かに、アフガニスタンとの国境のペシャワールからイラン国境の町クエッタまで、2泊3日の寝台列車で旅をする日本人なんて、怪しいに決まっている。

いま思い返すと、おそらくは、そのころパキスタンの秘密情報組織(もちろんCIAとの関連もある)が、世界旅行者の行動を見張っていたのだろう。
それか、ただの酔っ払いの警察官が、たまたま僕に絡んできただけだろうけど。

1人の警官が僕に、「日本の現住所と電話番号を書け」と言った。
僕はもちろん、あらかじめ用意して、暗記していた「ウソの住所と電話番号」をすらすらっと書いた。

するとさすが警察官だよ。
もう1人の警察官も、「僕にも同じことを書いてくれ」と言った。

僕は持ちろんすらすらっと、前に書いたのと同じ、ウソの住所と電話番号を書いた。
つまり僕は、「ウソの住所と電話番号」を暗記しているんだよ(笑)。

この警察官2人は、僕の書いた住所が違っていたら、文句をつけて、僕を取調べすることだって可能だったろうね。
でも、世界旅行者さんは、ウソの住所だって、最初から暗記している。

まあここが、世界旅行者のすごいところなんだけどね。
警察官は、僕をからかって楽しんだのか、冷えたコーラをおごってくれた。

でもまあ、パキスタンの列車に乗るだけでも、いろんな人との出会いがあるね。
それが、望ましいものでなかったとしてもだよ(笑)
http://d.hatena.ne.jp/worldtraveller/20090805