らいむの事業の実際

 ここは、広報紙や雑誌等に掲載された「らいむ」の紹介記事から、
「らいむ」の事業の実際を知っていただくページです。


特集 一般就労最前線
   〜夢と希望と、支援と…制度〜  
  社会福祉法人ウィズ町田 広報紙 「With SSKWウィズ町田 5号」
 (2007年8月2日発行)より

特集 本物の就労支援とは
   本物の就労支援とは  就労と生活の一体的支援をめざして
 きょうされん機関紙 SSKS 月間きょうされん 2009年2月号(346)に掲載







特集 一般就労最前線
   〜夢と希望と、支援と…制度〜


  社会福祉法人ウィズ町田 広報紙 「With SSKWウィズ町田 5号」
 (2007年8月2日発行)より


 今年度、ウィズ町田から数名の利用者が、新しい世界へ飛び立ちました。
今号の特集では、ウィズ町田が運営する「就労・生活支援センターらいむ」の活動を通じて、
障がいのある人たちの一般就労を考えます。


「らいむ」ってなあに?

 らいむは、障がいのある人の一般就労の相談をはじめ、就職のための技術的な支援や、
企業と連携によって就労促進や定着支援の活動をしています。
 7月1日現在、らいむの登録者は314名。
障がいの種別を問わず、一般就労を希望している方を対象にしています。
 2004年9月の開設以来、(※注 正式には7月開設、9月から相談開始) 延べ92名の方が就職しました。
しかし、その道のりは決して、平坦なものではありませんでした。
残念なことに離職してしまった方もいます。
就職することより、その職場で継続して働くことの方が難しいのです。


希望を叶えるために

 就労支援でまず考えなければならなことは、ミスマッチを未然に防ぐことです。
 就職したものの、「自分のやりたい仕事ではなかった」「自分にはむいていなかった」と
ならないように、就職支援の前に本人の適性等に見合った職場を見つけることが必要です。
そして、本人の希望した職に就けるように、面談を積み重ね、
必要な技能を身につけられるようスキルアップトレーニングを繰り返しながら支援します。
 そしてなにより、本人に「働くこと」の明確な動機と、
「自分が働いているイメージ」をしっかり持ってもらうことが重要になります。
働くことによって得られる喜び、給料の使い途など、
些細なことでもイメージすることが必要なのです。


就職がゴールじゃない

 就労支援は、登録者の就職が決まればおしまい、というわけではありません。
重要な就労支援は、そこから始まるのです。
 慣れない環境の中で、一人で働くことは並大抵なことではありません。
緊張や不安、精神的ストレスは相当なはずです。
そんな不安定な状況ではいい仕事ができません。
些細なことでトラブルが生じてしまう可能性があります。
本人がつまづいてしまう前に、職場訪問や相談で、
抱えている不安や問題を解消していく必要があるのです。
 また職場での人間関係も、仕事を継続していく上で、重要な要素になります。
特定の人だけが本人を支えるのではなく、
その職場で継続して働けるように、職場全体で支援してもらえるような
「ナチュラルサポート」の環境・関係をつくっていくことが重要な支援なのです。


福祉施設から一般就労へ

 一般就労の挑戦には、想像以上の勇気が必要です。
不安もあります。
慣れ親しんだ作業所や施設を離れての挑戦ですから当然のことです。
けれども、いつでも戻れる施設があるということで、
失敗を考えずに挑戦ができるようになるのです。
 時には、家族や施設職員が一般就労の妨げになることもあります。
欠勤や離職を恐れ、無理をさせてしまい、結果的に本人を追い詰めてしまうこともあります。
また、能力の高い利用者を、施設で囲ってしまい、
就労に結びつくような支援を怠ってしまうこともあります。
 一方、施設から一般就労した方からは、
「授産施設に通っていたときより、企業の方が楽です」といった声もあります。
 このように利用者の能力を最大限に発揮できる場面に結び付けていくことが、
支援者の大事な役割なのです。


支援者としての喜び

 らいむでは、一般就労した方たちと、たまに飲み会を開きます。
みんなの顔は、就労前と違い、自信に溢れた表情をしています。
 しかし、そんな自信の裏側にも不安は隠れています。
職場は違いますが、それぞれが悩みを抱えています。
飲み会で意見を交わし、お互いに励ましあいながら、明日につなげていくのです。



特別インタビュー
働いてみてわかったこと…

◆K・Tさん
 「Cスクエアあじさい」から、平成19年7月より「ユニクロ」に勤務しています。

Q:現在の仕事の内容は?
A:開店前に店内の掃除をしています。
 掃除の後は「朝礼」があり、そこでは売り上げの報告や売り上げ目標の確認、
 「声だし(挨拶の復唱)」などをしています。
 開店後は、バックヤードで「品だし(洋服の整理や箱詰め」をやっています。


Q:働いてみてうれしかったこと・難しかったことはありますか?
A:まだ仕事を覚えている段階なので、それだけで精一杯です。
 「作業メモ」をとって、ミスの無いように心がけています。
 また、決められた仕事を時間通りにしっかりやらなくてはいけないので大変です。
 ただ、以前働いていたゴルフ場の食堂の仕事に比べれば、まだ楽ですね。


Q:今後の目標は?
A:まずは「掃除のプロ」をめざしたいです。
 掃除がちょっと苦手なので、それを克服したいですね。
 また、バックヤードの仕事も大事な仕事なので、それもしっかりやっていきたいです。


Q:最後に一言お願いします。
A:若いうちは新しい仕事もすぐに覚えられましたが、
 年齢を重ねると覚えるまでに時間がかかります。
 力がある人はぜひ若いうちに「一般就労」にチャレンジしてほしいと思います。




◆I・Hさん
 「第2あらぐさ」から「美空」を経て、高齢者施設の清掃業務に携わっています。

Q:現在の仕事の内容は?
A:利用者の方がいる居室や、各階にあるトイレ、休憩室など共有スペースの清掃、
 トイレットペーパー、ペーパーナフキンの補充と利用者の方の服を洗濯しています。


Q:実際に働いてみてどうですか?
A:初めての一般就労、初めての仕事、そして全ての人が初対面だったので、
 初出勤の日は、ガチガチになっていました。
 最初は、指導してくれる方と二人で組んで一つのやり方を教わりました。
 指示されたことをやるのが精一杯で、自分の言葉に自信が持てなく、
 分からないことがあっても質問できませんでした。
 「がんばらなければ! がんばらなければ!」と
 自分に言い聞かせながら、仕事をしていましたので、
 とても疲れてしまいました。
  しかし、周りの人が私に声をかけてくださるようになり、
 時間が経つにつれて、緊張で強ばっていた表情も和らいで、
 笑顔がでるようになりました。
  また、どうやれば仕事をスムーズにできるのかの方法を考えてくださり、
 仕事の流れを「表」にすることで、自分の中でも流れが少しずつつかめることができ、
 それによって余裕を持てるようになりました。


Q:現在やっている仕事で大変だなと思うことはありますか?
A:利用者の方の居室の清掃はとても緊張します。
 利用者の方に時々声をかけられるのですが、
 どう返事をしたらいいのか分からなくなってしまいます。
  しかし、「表」があることによって今では、
 一人で居室の清掃を回れるようになってきています。


Q:今後の目標は?
A:いつか自分一人で全ての仕事ができるようになりたいです。
 不安はたくさんありますが、時間をかけて常に前向きな気持ちを持ち続けていきたいと思います。




自立支援法における「就労支援」の問題点

 自立支援法の施行後、多くの障がいのある人とその家族が、
重く圧しかかる応益負担に苦しんでいます。
 問題はそれだけでなく、自立支援法の目玉である
「就労支援」にも大きな問題があります。
 たしかに、障がいのある人たちの社会的・経済的な自立を実現するうえで、
「就労自立」は、きわめて重要な課題です。
だからこそ、らいむの活動は、きわめて大きな意義があります。
 けれども自立支援法は、自立の概念をあまりにも「就労自立」に重きをおきすぎています。
まるで「自立=一般就労」といわんばかりです。
 また、就労支援事業の公費(報酬)水準がもう一つの問題点です。
就労支援をおこなう就労移行支援事業の公費水準に比べて、
就労継続支援事業の公費水準はきわめて低く、
東京都の小規模作業所補助水準をも下回っています。
一般就労に結びつく可能性のある人には、一定の公費水準を支給しても、
一般就労に結びつくことが困難な人には、「公費をかけたくない」ということなのでしょうか
 しかも、これらの事業と連携し、一般就労とその定着支援にとって、
欠くことのできない就労支援センター「らいむ」に対する公費水準も、きわめて低いのです。
 「就労支援」を重点施策とするならば、
厚労省は、これらの欠陥・問題点をただちに解決すべきではないでしょうか。


(ウィズ町田 広報委員 糀谷 誠晃)






特集
本物の就労支援とは


きょうされん機関紙 SSKS 月間きょうされん 2009年2月号(346)に掲載


本物の就労支援とは
就労と生活の一体的支援をめざして


 障害者自立支援法(以下、自立支援法)では、就労支援が大きな柱として掲げられました。
施行から3年がたとうとしていますが、就労支援の現場では様々な問題が出ており、
自立支援法でいわれている就労支援の中身が問われています。

 今回の特集では、この問題に焦点を当て、社会福祉法人ウィズ町田が運営する
「町田市障がい者就労・生活支援センターらいむ」の実践を通して、
本来あるべき就労支援のあり方を考えていきます。

(担当 磯部光孝  河上恵三)


 今回、取材した「町田市障がい者就労・生活支援センターらいむ」(以下、らいむ」)は、
東京都の区市町村障害者就労支援事業の要綱に基づき、
町田市が設置主体となり、社会福祉法人ウィズ町田が事業委託を受けて運営しています。
国の障害者就業・生活支援センターと性格は一緒で、より身近な地域において、
障害のある人の就職を支援するとともに、安心して長く働き続けられるよう、
就労面と生活面の支援を一体的に提供しようとするものです。
東京都独自の事業で現在、23区18市に設置されています。

 「らいむ」は2004年度から事業を実施しています。
当時から、町田市には福祉施設が比較的多くあったため、
養護学校の卒業生や精神障害のある人も通う場所には困りませんでした。
そのため一般就労への意識はあまり高くなかったのです。

 しかし、2006年に自立支援法が施行され、就労支援がその大きな柱に掲げられたことや、
応益負担制度がはじまったことで、好むと好まざるにかかわらず
障害のある人たちの意識が一般就労へ向けられたという側面があります。
そのため「らいむ」の事業へのニーズも高まっていったのです。




支援の柱としての期待は高い

 2009年1月末現在、「らいむ」の利用登録者数は486名で、
2004年の事業開始から毎年約100名ずつ増えています。
障害のある人や家族の「らいむ」への期待の大きさは数字を見ても明らかです。
障害別でみると知的障害、精神障害のある人の比率が高くなっています。
これは身体障害のある人に比べて、、就労に関してより多くの支援を必要としているからである
と考えられます。

 また、近年は手帳制度のない発達障害の人からの相談が増えてきています。
発達障害者支援法ができ、自立支援法の中でも発達障害がクローズアップされていますが、
手帳のない人をフォローアップする制度がないため、
就労に関してもさまざまな困難があります。
高次脳機能障害の人も登録者数は少ないですが、
同様に困難な状況に置かれています。




◆事例1◆
「らいむ」が大切にしていること
〜「絶対、たらい回しにしない」


 X県から町田市に来たAさんは、身体障害者手帳5級を持つ20代の男性です。
実は好きな女性を追いかけて東京に来たのですが、
わずかなお金しかなく、泊まるところも仕事もないという状況でした。
Aさんはハローワークや町田市の相談窓口にも行きましたが、
住民票がないためにどこの窓口でも対応してもらえず、
たらい回しにされました。
そんな中で「らいむ」を知り、駆け込むように相談にやってきました。

 まず、住むところを見つけなくてはいけません。
とりあえず、「「らいむ」の所長の住所を仮の住所として
住み込みの仕事を探すことになりました。
町田市内の事業所を探した結果、運良く見つけることができました。

 しかしその矢先、彼は傷害事件を起こしてしまいます。
多くの場合、ここで彼への支援は打ち切りとなり、
警察が対応することになるのですが、
「らいむ」では支援を継続しました。
警察との話し合いや職場への事情説明、
そして休職扱いの手続きなどを行いました。
警察からの身元引受けは、なんと仕事先の社長が受けてくれ、
Aさんは無事復職することができました。

 「らいむ」は「絶対、たらい回しにしない」
という一身で、支援し続けたのです。




一人ひとりのニーズに寄り添って

 就労支援事業には本来、個別支援の要素が強く求められます。
一人ひとりのニーズに対応して、支援の進め方や内容も変わります。
ですから「らいむ」は、Aさんのように、警察のお世話になることになったらそれでおしまい、
というように見放したりはしません。
本人が地域で暮らせるようになるためには、
今どんな支援が必要なのかという視点で、創造的な実践を展開しているのです。

 自立支援法では障害のある人を一般就労に送り出すことばかりが強調され、
職場に定着させるための仕組みは十分ではありません。
場合によっては、数ヶ月だけ就労して辞めてしまっても、
就職したことだけが実績として残るのです。
このような一面的な成果主義の下では、「らいむ」の実践は
非効率的ということになるかもしれません。

 しかし、本来の就労支援の目的は、何人就職させたかということだけではなく、
障害のある人が安定的に誇りをもって働き、暮らし続けるのを支えることです。
一人ひとりのニーズにとことん寄り添う「らいむ」の実践は
こうした視点で取組まれているのであり、
だからこそ障害のある人や家族から絶大な信頼を得ているのでしょう。




◆事例2◆
職場定着のためには職場と
福祉サイドの連携が欠かせない


 Bさんは40代の男性で、軽い知的障害を持っています。
職場では体力の必要なクリーニングの仕事をしています。
仕事はよくできますが、言葉によるコミュニケーションが苦手です。
自分の気持ちをうまく伝えることができなかったことが原因で、
昨年の夏に職場で、同僚に暴力をふるってしまい、
職場からの連絡を受けて「らいむ」の職員がかけつけました。
医療機関を受診したところ、
かなりストレスがたまっていると診断されたため、
2ヶ月間の休養がとれるようにと会社と交渉しました。
ただ、体重が増加傾向であるために
ずっと自宅で過ごすと健康に悪いことと、
いくらストレスがあるといっても他人に暴力をふるうのは
良くないことをわかってもらうため、
就職前に通所していた法人内の施設「美空」に
ボランティアとして行くことにしました。
交通費のみの支給で2ヶ月間ボランティアをしたことは、
彼にとってよほどこたえたようです。
仕事に行っていれば、それなりの給料が貰えますが、
ボランティアでは一円のお金にもなりません。
こうした経験を通じて、Bさんは自分を見つめ直し、
会社に復帰することになりました。

 復帰するにあたって、「らいむ」はまず主治医から
復帰可能の診断書をもらって、
精神面の落ち着きを取り戻したことを確認しました。
そして、会社の社長には、以前の人間関係を引きずらないために
部署を変えてもらうようお願いしました。

 本人は職場で心がけることをチェック表にして毎日に自分で書き、
2週間に一度の「らいむ」での定期面談の際に、持参して、
仕事の振り返りをおこなうことにしています。




職場への定着率を高めるために

 「らいむ」は、事業開始からこれまでに141名の就職を実現してきましたが、
支援の中で、特に大切にしていることは職場定着支援です。

 職場定着のために支援にはさまざまな工夫と対応があります。
就職後、問題の起こらない人のほうが少ないため、
職場を訪問したり、定期的に「らいむ」で面談を行ったりします。
また、業務のチェックシートをつくり、
職場で心がけることや守らなければばらない約束事を本人と確認します。


 障害のある人への支援だけでなく、企業側にも障害特性、
雇用上の配慮事項をレクチャーすることもあります。
こうした取組みを通じて、企業側の障害のある人への見方も変わってきます。
 しかし、「らいむ」の場合でも職場定着率は約6割で、
これまでに61名の方が何らかの理由で職場を辞めています。
障害のある人が一般就労を続けながら地域で暮らしていくには、
まだまだ課題が多いというのが実態です。




◆事例3◆
失敗を繰り返しても、やっぱり働きたい

 Cさんは20代の女性です。
軽い知的障害のある方で、グループホームで暮らしています。
彼女は以前はA社で本当によく働き、会社の評価も高く
ずっと働けるのではと期待されていました。
しかし、1年半たったところで事件が起きてしまいました。

(中略)

 現在、Cさんは職場への復帰を願って
「らいむ」での相談と職業訓練を続けています。




繰り返し挑戦できる仕組み

 社会福祉法人ウィズ町田には、
青果パッケージの作業をおこなっている「美空」(就労移行支援)と
「スワンカフェ&ベーカリー町田店」(就労継続支援A型 以下、「スワン」)が
職業訓練の場としてあり、「らいむ」の就労支援と連携しています。
それぞれの仕事の内容をみて、障害のある人に合わせた職業訓練ができるよう、
法人内の2つの事業所を始め、地域の就労系事業所と、
お互いの強みを活かした機能分化と連携を図ることをポイントにしています。

 基本的に「らいむ」が核となって訓練メニューを立てています。
障害のある人の状況を見て、「美空」「スワン」などで
必要な期間を設定して訓練を行います。
その結果、就労が可能と判断された人は、
「らいむ」で履歴書の書き方や面接の受け方、
ハローワークの利用法などを学び、具体的な就職活動に取組みます。

 このように「らいむ」は、「美空」、「スワン」など就労系事業所の
機能を活用して職業訓練を行い、企業開拓から就職支援、
そして定着支援まで一貫して行っているのです。

 また、就職後、何らかの理由で
休職または離職しなければならないこともありますが、
本人への支援は終わりではありません。
本人のニーズに対応し、復職、再就職に向けて支援を続けます。
休職、離職した理由を本人と分析し、
再度、職業訓練が必要な場合には、
BさんやCさんのように就労系事業所の機能を活用し、
再就職に向けて準備します。




◆事例4◆
家族関係にも踏み込んで


 Dさんは、他市の授産施設に通っていたのですが、
町田市に転入し、どこか日中に通える場がないかと
「らいむ」に相談にきました。
一般就労の希望もありましたが、
就労経験が不足しているので、
地域の授産施設を利用し、
就労に関する経験を重ねることにしました。
約1年間「らいむ」に定期的に来てもらい
面接の練習などを繰り返し、一般就労することができました。

 就職後も1週間に一度「らいむ」に来て、
職場での様子などを報告してもらいました。
しばらくして職員がDさんの様子がおかしいことに気づき、
職場に問い合わせましたが、
職場ではいつもと変わらず働いているということでした。

 しかし、次第にDさんの会話に
意味不明なところが多くなったので、
面談を重ねたところ、Dさんが家族との関係において、
重い問題を抱えていることが明らかになってきました。

 日がたつにつれ本人が精神的に落ち込んできたため、
病状を安定させ、家族との距離をとるため、
本人とも話し合って精神科に入院することにしました。
「らいむ」は、退院後に自宅に戻れば、
Dさんはまたストレスをためると判断し、
入院中に市のケースワーカーや保健師と連携して
Dさんが生活できるグループホームを探しました。

 今では落ち着いて仕事をしていますが、
それでも精神的な波はあります。
そういう場合には、グループホームの職員と連携をとって、
対応の仕方を考えています。
以前は8時間勤務をしていましたが、
Dさんと「らいむ」で職場にお願いして
4時間勤務から始めることができました。



生活まるごと支える

 「らいむ」では、就労支援と併せて、就労生活を支えていくための
生活支援を重視しています。

 「らいむ」に持ち込まれる問題は実にさまざまです。
たとえば、手帳や年金、生活保護、病院の同行や家族、友人関係のトラブル…。
さまざまな問題が持ち込まれ、内容は生活全般、多岐に渡っています。

 しかし、これらの課題に「らいむ」単独で対応していくことは困難です。
ハローワークや職業センター、福祉施設、医療機関、福祉事務所、
保健所、教育機関、企業、家族など地域の様々な分野と連携をとり、
地域の中で就労・生活支援のネットワークを築いていくことが大切なっています。

 Dさんのように、生活問題の原因を探るためには、
本人、家族との面談のほかにも、
以前利用していた施設を訪問して話を聞くこともあります。
原因が家族関係であれば、たとえば、世帯分離なども検討し、
グループホームへの入居を進めるなど、
本人の生活の安定のために住居についても考えます。

 精神障害のある人など病状が不安定な場合には通院同行し、
主治医に本人の状況を説明し、同時に、企業にも状況を説明します。
入院中には、本人、主治医から状況を確認し、
退院後の復職、生活の準備について企業や行政など関係する機関と調整します。

 このように、生活をしっかり支える体制を整えなければ、
就労をつづけることはできませんし、
また、生活もどんどん不安定になってしまうのです。




いまこそ雇用と福祉施策の連携の強化を
〜きょうされんが考える就労・日中活動の体系〜

 今回は4つの事例を通じて、障害のある人が一般就労しながら
地域で暮らすという生の姿をお伝えしてきました。
そして「らいむ」の実践から、働くことへの支援はもちろん、
暮らしを支えることがいかに大切か、
お分かりいただけたのではないでしょうか。

 ILO(国際労働機関)は最重要目標として、
「働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)を提唱しています。
障害のある人も含めて「働く」ことは、
生活することであり、自分らしさを表現することです。
だから、生活上の課題や困難をともに解決していく
生活支援こそが重要であり、そのための条件が整ってこそ
働きつづけることができるのです。

 しかし、今の日本の障害者施策においては、
働くことへの支援(今日行政)と生活への支援(福祉行政)との
連携が全くできていません。
すなわち、一般就労している場合には必要な生活支援が届きにくいし、
逆に施設などで働いている場合には
福祉行政の対象であって雇用行政からは排除されてしまうのです。

 自立支援法では就労移行支援事業が創設されましたが、
障害のある人の実態とは無関係に訓練期間を
一律に2年としているため、
一旦は就職しても短期間で施設に戻ってくる、
所謂、名ばかりの就労という事例も見られます。

 そこで、きょうされんは
障害のある人が働き続けることを可能にするための制度を構築するために、
雇用と福祉の本格的な連携の下で働くことと暮らしの
双方を支える施策のイメージ図を示しました。

 現在は、雇用施策か福祉施策かという二分的な施設体系になっているため、
必要な施策が十分には保障されていません。
きょうされんはこれを「二分法モデル」と呼ぶことにしました。

 しかし、障害が軽くて一般企業で働いている場合でも、
生活上の困難を抱えていれば、ヘルパー利用や相談支援など、
適切な支援を受けることができるようにしなければなりません。
逆に、障害が重く濃密な生活支援が必要な場合でも、
本人が希望すれば働くことを保障するべきでしょう。
今回はこれを図のように「対角線モデル」として整理を試みました。

 また、現行の二分法モデルにおける障害の軽重は、
手帳制度に見られるように医療モデルに基づいているため、
就労や生活をする上での困難さと一致しません。
また、例えば働く能力は高いが生活上は非常に困難を抱えているというように、
働く上での障害と生活する上での障害も必ずしも一致しません。
こうした実態を踏まえ、対角線モデルにおいては、
単なる障害ではなく「労働障害」の軽重
(本人の障害程度の軽重ではなく、就労生活を送る上で、
障害となる環境的な因子も含めたトータルな障害の軽重)
に着目をしています。

 つまり、能力に応じた労働を保障した上で、
生活上の困難にふさわしい福祉支援も同時に提供するということです。

 事業体系のあり方を考える際には、
報酬単価などの目先の損得に目を奪われるのでなく、
本来の支援のあり方に基づいて目指すべき施策のイメージを描くことが重要です。
その点で、きょうされんが示した対角線モデルは大いに示唆に富んでいるのではないでしょうか。




◆取材を終えて

 「らいむ」センター長の天野さんは、
「らいむ」の職員は営業マンと同じだと言います。
企業側に斡旋する人材に自信を持てなければ売り込めません。
紹介する障害のある人たち一人ひとりに愛着があり、
胸を張って売り込める人材として育て企業に紹介していると話してくれました。
そして、「これができないとだめ」とか「これをしてはいけない」などと、
障害のある人を否定的にみるのではなく、
企業側がどのような人材を求めているのかを
より具体的に聞いていけば、
働ける場所は必ず見つかるものだと話してくれました。

 今回、「らいむ」の取材を通して感じたことは、
就労の取組みは一般社会とダイレクトにつながるということです。
障害のある人が働いているということは、
生活をしているということだから、
支援を区切るのではなく丸ごと支えていくために
さまざまな連携を作っていく必要性を実感しました。
そして、支援する職員も成長しつづけていかなければならないことも学びました。

(担当編集委員 河上恵三)