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八雲立つ出雲路紀行 1

 

 

いつの頃からか、こころに雲の切れ端が住んでいた。

 その雲のふるさと、海の向こうに大陸のあるその土地を訪ねてみたかった。

 今もまだ、あの神々の土地の魔法に囚われているようで、思い返すたび、少し、胸が痛む。

 

嫁が島と群れ飛ぶ雲

 いつかあの土地を訪れるのだとかたく信じてはいたのだが、実現しないまま年を重ねた。

 ただの夢だった計画が現実味を帯びたのは、「古代史紀行」(宮脇俊三 講談社)を読んだころだった。

 時刻表の旅で有名な著者は、寝台特急「出雲1号」から出雲の神々について語り始める。

……出雲へ行く列車には、もう一つ別の魅力があるように思われる。
 それは東京や大阪から遠く離れるにつれて鄙び、田舎らしくなるという一般的な型とは逆の雰囲気が車窓に漂ってくることである。山陰地方らしい陰影の中に、一種の高雅さとも言うべきものが出雲にはあるのだ。

 どこが境かわからないが、西出雲に入ると、宍道湖が平野に変わる。昔は海だった地である。斐伊川の土砂がつくった、いわば自然の干拓地なのだが、この平野の醸し出す高雅な雰囲気は比類がない。家々は集落を造らず、転々と散在し、それぞれが北側に築地松を巡らして気位高い。もとより現代日本であるからドライブインやモーテルなどの目障りな建物はあるけれど、それに目をつぶれば、ただならぬ地域であると知る。           「古代史紀行」(宮脇俊三 講談社)


 ガイドブックには縛られない自由な旅行は不可能ではない。歴史の知識が十分でなくても歴史探訪はできる。自分が価値があると信じるものを見て、自分でそれを評価すればいいのだ。
 地理教育の徹底した学校に通っていたころ覚えた地形図折りの技術を眠らせておくのは惜しいことに気づいた。
 自分の足で歩けばいいのだ。

 去年の夏、仕事をやめた。やめよう、そうこころに決めたころには、わたしはすでに抜け殻のようになっていて、5年勤続の余禄と名付けた念願のイギリス旅行の間も、スコットランドの孤島でのぜいたくな傷心の時間さえも、かえって何か足りないものを自分自身に突き付けるようなものとなった。

 そして貯金も仕事もなくなって身軽になったわたしは、かねてから訪ねたかった出雲へ旅立った。わたしを縛るものはただ、連休明けからの仕事の契約だけ。

 その前日までに家に帰ればいい。
 何か素敵なものに出会えれば、それまでの生活など投げ出して、しがらみなど捨て去ってしまえばいい、そう思ったのだ。


 なぜか見送りまでしてもらって、ざあざあ降りの渋谷駅前でバスに乗り込んだ。預けた荷物の中に薬を入れたままで、無理を言って途中の休憩で荷物を出してもらう。バスは最後に乗るようにしているのがこういうところで役に立つ……(笑)

 おかげでよく眠れた。最後に目覚めると米子道のサービスエリアで、もう一度目覚めると矢田の渡しの前だった。

 もちろんそれはあとで地図を見てそうとわかったんだけど。朝酌の渡し。由緒ある古くからの場所だ。島根半島との交通の要所と言っていいだろう。今も渡し舟が機能しているという。

 川と迫る山のコントラストが美しくて。ああ、ここにはもう一度来なくては、と思った。

 

 松江駅の前の島根日産の看板にはでっかくわが愛車ラシーン君が映っていた。

 行く先がないのに早朝の駅に下ろされるといつも困ってしまう。

 とりあえず朝飯にカニ弁当(毛利と尼子の宣伝がついてる)、お茶とレイクラインの一日券を買い、人の目気にしないモードに入ってぱくぱく食べた。ええ、結構おいしかったですとも。来る人の半数以上は観光客だったので、あんまり気にしなかった。

 

 始発のレイクラインもその次も、運転手は女性だった。

 とりあえず市内を半周して松江温泉駅前のバスターミナルのコインロッカーに荷物を預け、もう一度レイクラインに乗って残り半周と少しをして(宍道湖のだだっ広さにうなったり、くにびき大橋から見える中洲の畑が妙に気に入ったり;;)、お城の前で降りた。

 千鳥城。なかなか美しい。

 保育園の子供たちが大きなカートに乗せられてきていた。

 天守閣に上る前にも、かなりじっくりお城の回りを見て回る。

 六階分狭い階段をのぼる間も、ともかく何でも見る。

 お城はとっても好きなのだ。

 日本の各地のお城の写真があるのも嬉しいので全部見る。

 こんなに鉄筋コンクリート建て再建のお城が多いとは知らなかった。大阪城と岡山城ぐらいしか知らなかったのだ。

 生まれは会津若松だというのに。鶴ケ城が泣くよ。

 ええと、展示品もお城としては結構充実していてよかった。

 大山が見えるくらいには眺めも良かったし、できたばかりという銀行の妙なビルも見えるし、時代をうつした松江市内の模型も楽しかった。

 だんだん空に雲が多くなっているのがわかり、だんだん不安になるけど、仕方ない。

 ともかく町を取り囲む山が美しくて。これが八重垣八雲の世界なのかと実感。きれいには撮れないだろうなあと思いながら写真を撮り。

竹林

松江城の堀端の竹林 一番気に入った散歩道

その名も鎮守の森散策路

 

 城を出てから北側の堀沿いの散歩道を歩いた。竹林の中がさわやかで気持ち良かった。

 木々の間から堀が見える。

 

 

八雲の庭

 

 まず小泉八雲記念館へ。続いて小泉八雲旧居へ。

 畳の上に座り込んで庭を眺める。確かに美しい。

こころを奪われる緑

 三方が庭。反対側には池もある。

 田辺美術館を飛ばして武家屋敷へ。
 箱膳があるって書いてあるけど、祝い膳しか表示がない。昔から日本文化ゼミで箱膳のことが気になってたのでどうしても実物が見てみたくて台所をうろうろするけど結局わからない。
 ちょっと粗末な祝い膳がそうかなあ……

 道をちょっと戻って並びの八雲庵で三色割子そば。ふう。

 稲荷神社 八雲の愛したきつねもいる

 

 小泉八雲記念館に行ってから急に見たくなった稲荷神社に行くために、もう一度お城に戻り、すっかり気に入った散歩道をもう一度歩いて、お稲荷さんへ。

 

 夜中に松江市内を暴れ回ったという伝説もある亀 月照寺

 

 もう一度レイクラインに乗り、今度は月照寺へ。東照宮をちょっと思い出した。

 ともかくしっとりしていて、人がいなくて、楽しかった。お城は見えるわ、大亀はいるわ(笑)

 うっかり苔の上を歩いてしまった。

 そろそろ日が傾いてきたのでてくてく歩いて松江温泉へ。さっきのレイクラインで外湯の場所を聞いておいたので社会保険センターの展望風呂に入る。本当に展望風呂。窓の下には宍道湖沿いの道路。待っていれば夕焼けが見えたかも知れないけど、初めて行く駅から遠いユースに日が暮れてから行くのがいやなので、さっさと駅に戻り、初めての一畑電鉄に乗る。

 噂には聞いていたが、これほど味のある電車だとは思わなかった。
 宍道湖北岸を西へ向かって突き進む。

 ユースは駅からは遠かった(笑)

 ううう、道は間違いようがなかったけれど、荷物が多すぎて(^^;;

(以下次号!)

 

 宍道湖の光

 中央にウィンドサーフィンが見えるだろうか。

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