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アーシュラ・K・ル=グィン Ursula.K.Le Guin

 

 この人について語りだしたら、物語を書く必要がなくなってしまう。

 それほどまでにこの人はわたしにとって重要だ。

 高校生の時、わたしは「Comperative Political System」という授業をとっていた。ベルリンの壁が崩れる少し前、冷戦時代の最後の時期だから、ようは資本主義社会と社会主義社会について比較しようというちょっと政治がかった授業だ。

 先生は比較的公正な良識あるアメリカ人だったけど、実際に講義されたり討論されたりする内容を通して生徒の半数をしめるアメリカ人の言動をみていると、これが洗脳でなくて何なのだろうと思うくらい価値観が固定している。それだけアメリカが代表する資本主義世界に自信があるというか、他の世界を知らないというか。

 生徒の中で最も左だったのは、スウェーデン人とわたし(日本人)とフランス人だった。北欧的福祉志向社会主義と全体主義的会社社会主義と組合的元祖リベラル共産主義というわけ。

 授業の中で「所有せざる人々」についての言及があった。すべてのものを共有するという世界についての物語だから。

 確か邦訳が出た年で、友人に勧められて読んだばかりだったので驚いた。

 生徒で読んだことがあると手を上げたのは、その後ハーバードへ進学したスウェーデン人とわたしだけだった。SFと言うのはアメリカでも大して市民権がないようだ。うーん、そんなもんか。

 わたしは政治体制とかユートピア論というよりは、社会的実験の物語だと思って読んだ。

 本当に共有する社会がありえるなら、生まれたときからその中で育って教育を受けなければならないともとれるような世界を読んで、やはり共産主義世界はこの世の中では簡単には成り立たないだろうと、思ったのを覚えている。

 逆に言えば、人は環境によって大きく変えられるということかも知れない。

 

 ル=グィンの父親はクローバーという有名な文化人類学者だ。

 わたしは文化人類学を専攻した手前、少しは詳しくないといけないような気もするが、あくまでするだけ。

 ただ、ル=グィンの異文化を見る目がアメリカ人離れしているのは、アメリカ先住民の研究で知られる父親と、それを描いた作家である母親、フランス人の夫という環境によって培われたものであるのだろう。あるいはそれこそを逆に培ったのかも知れない。

 「ゲド戦記」を絵空事として作られたファンタジーの枠組みと苦闘している作品ととる人がいるのは承知しているが、「こわれた腕環」のような、世界そのものの格闘を描いたファンタジーが他にあるなら教えて欲しい。

 わたしは「影との戦い」を親しくなった人にプレゼントすることにしている。

 贈られたことのある人は自信を持っていただいて結構だ。


 ゲド戦記 岩波書店

 「闇との戦い」 A Wizard of Earthsea

 主人公は成長するものだとは知っている。しかし、これを読み終わるとき、誰もが自分もまた同じであることを知るのだ。

 「こわれた腕環」 The Tombs of Atuan

 世界が閉ざされていると感じるなら、それはあなたが閉ざしているのだ。もし外の世界から手を差し伸べる人があれば、迷わずその手をとりなさい。

 「さいはての島で」 The Farthest Sea

 死も老いも別世界の話などでは決してない。ただ、死に対する恐怖から自由にならねばならない。

 「帰還」 Tehanu

 世界にはやはり愛が足りないのか。愛と虐待、英雄と普通の人について描かれた物語を愛してやまない。

「オルシニア物語」早川書房 Orsinian Tales

 東ヨーロッパの架空の国を舞台に描く時空を超えた年代記。

「マラフレナ」サンリオ Malafrena

 すでにサンリオ文庫は入手できず、ペーパーブックを苦労して何年もかけて読んだ(より正確に言えば途中まで読んだ(^^;;)。美しい物語だ。残念ながら今のところ図書館のみ。

「始まりの場所」早川書房 The Beginning Place

 単なるファンタジーでもジュブナイルでもない。自分で自分の心と戦う話かもしれない。

「ふたり物語」集英社 Very Far from Anywhere Else

 読んだことがあるはずなのだが、覚えがない。

「闇の左手」早川書房 The Left Hand of Darkness

 「冬」の厳しさが身にしみる。星の海を渡ってきた使者の見た世界の美しさ。「ケメル」という言葉の不思議な響き。

「所有せざる人々」早川書房 The Dispossessed, An Ambiguous Utopia

 何とも野心的で静かな物語だ。職人的とでも言うこの人物造形は見事。

 持てるものが豊かだと誰が決めたのだろう。

「天のろくろ」サンリオ The Lathe of Heaven

 世界はゆがみ、暴走を始めた。

「辺境の惑星」早川書房 Planet of Exile

 五千日も続く冬の到来、世界を揺るがす戦いの前の恋。

「幻影の都市」早川書房 City of Illusion

 旅をしよう。人生という名の旅を。

「風の十二方位」早川書房 The Wind's Twelve Quarters

 「解放の呪文」「名前の掟」を知らずしてファンタジーを描くことはできないし、多くの長編と同じ世界を舞台にした作品を見逃すこともできない。

「ロカノンの世界」早川書房 Rocannon's World

 風虎に乗り、空を翔けろ。

「世界の合言葉は森」早川書房 The Word for World is Forest

 強大な資本が豊かな森を保つ国々を襲って木を切り出しているように、搾取されて破壊される森の惑星ニュー・タヒチ。

「コンパス・ローズ」サンリオ The Compass Rose

「内海の漁師」早川書房 A Fisherman of the Inland Sea

 こんなところで浦島太郎に会えるとはね。四人でする結婚と言うのもまた、ル=グィンらしい。

「オールウェイズ・カミング・ホーム」 集英社 Always Coming Home

 ああ、こうしてこの人の物語の世界は紡ぎだされていたのか。

 こうまでしないとあれほど完成度の高い秩序を形作ることはできないのか。

 いくつもの詩や物語や詩が、静かで美しい世界を作ってゆく。

評論

「世界の果てでダンス」白水社 Dancing at the Edge of the World

「夜の言葉」岩波書店 The Language of the Night

 わたしの座右の書。


以下未読

Four Ways of Forgivenss

 今、必死に読んでいるが、全然わからん。翻訳しているつもりだが、うまくいきませんねえ。

Threshold

Buffalo Gals

Searoad


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