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Signaling from Mars

 見える見える。あの応答の光が、ずっと下の谷間に見える。消えた。また見えた。一回、二回、三回ひかって、真暗になった。
「通信できた! 通信できた!」
「懐中電灯はどこにある? べつの信号を送ってみようよ。懐中電灯をつけて、車輪のように、大きくぐるぐるまわしてみてくれないか。」
 ドロシアは窓のふちから、五、六歩さがったところに立つと、懐中電灯をつけて、ぐるぐるまわしてみた。
「うまい。」
「もう、やめましょうか?」
「うん。」ディックは、一階のあかりをたよりに、見る場所を定めて、すでに望遠鏡をのぞいていた。「もちろん、意味はわからないかもしれないけど……」
「でも、とにかく、ほら、こたえたわ。」と、ドロシアが声をあげた。
 ずっとむこうで、まちがいなく、小さなかすかな光が、くるくると円をえがいている。
「電池が切れかけてるよ、あれ。」と、ディックがいった。「新しいのを買ったほうがいいな。」
 たぶん、火星人たちも電池があてにならないと思ったのだろう。すぐに光は円をえがくのをやめてしまい、そのかわり、短くてめまぐるしい点滅信号がつづいたかと思うと、やがて、間をおいて、長く短く点滅が始まった。
「なにかつたえようとしてるんだわ。」と、ドロシアがいった。
「モールス信号を使ってるんだ。しかしぼくらは知らないからなあ。」ディックはひどくがっかりしたようにいったが、また元気をとりもどした。「もちろん、これでいいんだ。火星人の言葉がわからないのはあたりまえじゃないか。」

『長い冬休み』 アーサー・ランサム作 神宮輝夫訳 岩波書店


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