ライオン


『三浦半島の特産野菜の一つである三浦ダイコン(三浦大根)に寄生加害するキタネグサレセンチュウを防除する目的で、マリーゴールドの効果と利用法を検討した。
マリーゴールド(対抗植物)によるネグサレセンチュウ防除効果を検討した。アフリカンマリーゴールド(キューピットを除く品種)およびフレンチマリーゴールドをポットで栽植すると、は種後2カ月で土壌中のネグサレセンチュウ密度は、著しく低くなり有効である。ネグサレセンチュウ多発ほ場ではこれを25〜30cm間隔で全面に導入することにより、ネグサレセンチュウ(キタネグサレセンチュウなど)の防除が可能である。
 マリーゴールド栽培後のキタネグサレセンチュウ復活抑制効果を検討するため、2作目ダイコン、3作目トマト、4作目インゲン、5作目ダイコンを栽培し、収穫末期のセンチュウ密度を調査したところ、センチュウ密度は上昇せず、長期間センチュウの復活を抑制できた。マリーゴールド栽培後のほ場ではセンチュウの復活が遅く、持続効果は大きい。
 マリーゴールド処理区では単独、樹皮堆肥併用とも処理後700日経過しても殆ど増加せず、その持続効果は長く実用性が高い。
神奈川県園芸試験場研究報告 第21号 91-102
(神奈川県園芸試験場 昭和48年10月)等』
「ようやく見つけましたよ!」大福餅の様な顔をほころばせながら、社長中澤茂は私に報告した。「1週間探しました。」
 
 城ヶ島大橋を渡り三浦市立病院前を通過する。横須賀三崎線(県道26号)との交差点“城ヶ島入り口”の一つ手前の信号を右折する裏道がある。500mも行くと農道になり、火葬場さえ位置する寂しい山道だ。鬱そうとしたやぶを抜け小高い丘の頂上辺りの道端では時にはスイカを売る軽トラックがいたりする。その農道の左手(北)側は傾斜の緩い斜面が上に向かって続き、右手(南)側は急勾配の斜面が谷底に続く、何れも広大な大根(今の時期はスイカ)畑だ。太平洋と畑の境界線には穏やかな海風を受け、6枚の巨大なプロペラが揺るやなに回転している。
 そして、谷底の一角が一面ゴールドに輝いていた。
 
2005/11/08 升
 
旭山
旭山
社長中澤茂の逡巡(第六話)
 
 平塚工場から継続して新しい工場も、場内の害生物駆除の為、同じ駆除専門業者と契約した。彼らは食品加工場で生活してはいけない、ゴキブリやネズミさらにハエ等飛翔昆虫の駆除を専門にしている。彼らは先ず、ゴキブリホイホイやネズミホイホイをアッチコッチに仕掛け、誘虫灯には時系列で捕獲数が分かるロール式の銀バエホイホイをセットする。数日後、それらの調査結果に基づき対象生物の駆除対策を講じ、見積もりと共に契約先に提案する。契約先の合意が得られれば彼らとエゲツナイ生き物たちとの戦いが始まるのだ。
 中澤茂があらたに任された賃貸工場は、前オーナーによる遊興費過度の為倒産し、1年ほど放置されていた建物だ。内外装の改装に金をかけたが、ゴキブリが跡を絶たない。度々のバルサン攻撃にもその都度累々たる死骸が工場内に散見された。どうやら下水管を伝わって外部から浸入してくるらしい。工場外部にある浄化槽の上に放置されたボロボロのベニヤ板をはぐったゴキブリバスターの2人組みが悲鳴を上げた。巣があったらしい。
 
 ゴキブリバスター屋はその業種に似合わず、毎年、年始の挨拶に鉢植の桜の小鉢を持ってくる。まだ硬いつぼみがたくさん付いた「旭山」と言う品種の桜は剪定にも強く、盆栽向きらしい。事務所の片隅に置き、たまに水をやる。つぼみが少し大きくなったなと眺め始めた2月の初旬、つぼみの先端がパクッと割れ、内側から薄緑色の鞘状のものが現れた。暖房の効いた部屋で開花までに必要な積算温度が種の規定値に達したのだろう、時期早々にも2月10日、「旭山」は一つのつぼみから五つもの可憐なピンクの花を咲かせた。
 
「今年も早々と咲きましたねー、飯田さんや遠藤さんにも見せてあげたいですねー。」
 風邪をこじらせている中澤茂が咳き込みながらポツリと言った。
2006/02/16 升
 
スウォーム
スウォーム
社長中澤茂の逡巡 第7話(最終回)  
前置き
シロアリは繁殖期に羽アリとなって巣から飛び立ちます。これはスウォーム(群飛)と呼ばれる行動で、4月〜7月にかけて見られます。次世代の女王・王である羽アリは着地すると羽を落とし、湿った柱や切り株、腐朽した木などに小さな孔を掘り新しい巣を作り始めます。巣ができたばかりの時は巣自体が未成熟のため、群飛をするだけの数に至っていません。群飛をする成熟した巣になるまでは4〜5年かかります。「シロアリの群飛を見た」ということは、近くにある程度成熟した巣が存在するサインなのです。
引用:http://www.asante.co.jp/ohanashi/shiroari/index.html
 
事例T 神奈川県横浜市の現場
 東海道線平塚駅北口の階段下を右にまがり、ラスカを越え更に線路沿いを歩く。最初に出会う踏み切りの手前に材木屋がある。その材木屋の片隅で理想に近い丸太を発見し購入した。直径30センチ長さ3メートルの丸太2本は、レンタ2トン車で運ばれ、我が家の門柱になった。ところが、その半年後、家の建て替えの為に門全体が取り壊され、その丸太は日も当たらない庭の片隅に放置されてしまった。
 新居に移って最初のゴールデン・ウイークの4日目は残念な事に雨だったが、その翌日は昨日の雨が嘘のように朝から晴れ上がり、午前中から異様に蒸し暑い。連休中に仕上げる計画で私は居間の庭側に、昔で言う「ぬれ縁」造りに朝から没頭していた。材料はあの丸太と一緒に運んできた断面が半月方の丸太の端材。不揃いな材料でログハウス風なウッドデッキを作るのに四苦八苦しながら、今年初めての冷麦の昼食を家人に注文した矢先、目の前に何やら綿帽子の様な物体が浮き上がってきた。よく見るとそれはまさしく羽蟻である。どうやら一定方向から飛翔しており、その起点を辿るとあの丸太に違いなかった。恐る恐る近づくと、木肌の亀裂部分の周辺が黒い物で覆われ、しかも蠢いている。そして、頂上部分からはテコドンにも似た嫌らしい飛翔物体が下から追い立てられるように次々に羽ばたいてゆく。おぞましい事に、空に発つ倍の固体が、後を絶たず亀裂からゾロゾロと、音も・恐れも・狼狽も・気品も無く這い出してくる。
 昨年の夏からしまい込んでいた殺虫スプレーを持ち出し、亀裂をピンポイントで攻撃すると数分間のバトルで戦いは終了した。
 
学名Reticulitermes speratus分類等翅目 ミゾガシラシロアリ科和名ヤマトシロアリ英名Japanese subterranean termite
分 布北海道名寄市を北限として、日本全土に分布している大害虫です。 生 態乾燥に弱く、排出物や土砂、食害片等で蟻道をつくり移動します。水を運ぶ能力がないので湿った木材中や土中に棲息し、加工した固定巣を作らずに被害場所が巣をかねています。一般に6?前後で活動をし、12〜30?が活動好適温度ですが、33?以上になると土の中や心材部といった涼しい場所へ移動します。これは共生原虫が死んでしまうからです。 被害部は土台、柱、大引き、床束、根太、柱、筋かい、床板、畳、敷居等の建築下部材になり、特に風呂場、洗面所、台所、便所、玄関等の水を使う場所が被害にあいやすいです。雨漏れ、給排水等の水漏れや結露があると軸組みから小屋組みまで加害されることがあります。被害部は腐朽を伴うことが多く、喰跡は汚いです。 一コロニー(巣)の個体数は約1〜2万匹で、3万匹を越すことは少ないです。そしてコロニーが隔離された場合、25匹程の職蟻から副生殖虫へ分化し新しいコロニーが再生されます。 職 蟻体長約3.5〜5mmで、体色は乳白色です。左大顎の第一縁歯と第二縁歯は同形であり、二本とも内方向に突き出ています。 兵 蟻体長約3.5〜6mmで、体色は乳白色です。頭部の形態は左右両縁平行な円筒形で、体長の1/2の長さがあり、淡褐色で前方がやや濃い色になっています。前頭部正中線上には点状の額腺開口部がありますが、退化していて防御物質は出せません。 有 翅 虫体長約4.5〜7.5mm、体色は黒褐色で前胸背板は黄色です。翅長約7.0〜7.4mm、翅色は淡黒褐色半透明で、翅前部に2本の濃い翅脈があります。 群飛は通常4〜5月(沖縄県で2月、東北地方から北海道では6月)にかけて、雨上がりの温暖な日の午前10時〜14時頃に行われます。電灯に集まる走行性はありません。この群飛により雄と雌が交尾室を作り、交尾を行い5〜20日後に最初の産卵を行い、数個〜十数個産みます。
引用:<http://www.cic-shiroari.co.jp/>
 
事例U 神奈川県三浦市の現場
 昨年に続いて社長中澤茂はこの時期敏捷な活躍を強いられる。昨年来、根本的な処置を何も施していないのだから当然の結果である。この事務所の床下いや恐らく二階建ての建物全体がシロアリに侵されているのだ。
 昨年のゴールデン・ウイーク明けのある日、雨が降った。その翌日は良く晴れ上がり、昨日の雨が嘘のようで、朝から異様に蒸し暑い。正午前、古いアパートの一部屋を内装だけそれなりに改造した事務所の中に綿帽子が舞い始めた。起点を追う為、事務所内の壁側に配置してある机・ロッカー・事務機器を洗いざらい移動すると、それはコピー機の裏側の床材と縦壁の継ぎ目の一角だった。丁度、羽蟻の体幅程の隙間から間を置かず一頭ずつだが先を争いながら湧き出してくる。機転を働かせてその泉に掃除機の吸入口を押し当てる。この処置が効して30分ほどで騒ぎは収まった。
「また出てくるのかネェー?」中澤の問いに、
「いや、私の経験では羽蟻は年一回、昼前に花火の様にパーッと出てお仕舞いです。ご安心下さい。」
 私の言葉通りその日の午後は何事も無く経過した。やれやれと、胸をなでおろし泥棒が入った後の様な状態のままスタンバイしていた事務機材を元の配置に戻し、デスクワークが多少残っていた私を残して、皆帰宅した。
 ノートPCをカバンに収めた頃には辺りは既に夕闇が迫っていた。さあ帰るべと立ち上がったその時、狭い事務所は羽蟻の乱舞に満たされた。再び、事務機材を移動すると床下からやはり噴火が始まっている。しかも火口は2箇所ある。掃除機で一つを吸いながらもう一つの出口を梱包用ビニールテープで塞ぎ急場を凌いだ。だが、一服する暇のないまま、次から次に新たなる噴火口から黒い噴煙が立ち上がる。1台の掃除機で到底立ち向かえる数ではない。孤軍の私は掃除機を放り投げ、ありとあらゆる隙間にテープを貼り付け、奮闘した。
 翌日もその翌日もそして半月の間、何処から顔を出してくるのか午後から夕刻にかけてそいつは出現した。その度に中澤は掃除機を片手に飛び回る。いつの間にか飛翔中のものを吸い込む技を取得していて、これはお見事と言うしかない。
 
学名 Coptotermes formosanus 分類 等翅目 ミゾガシラシロアリ科 和名 イエシロアリ 英名 Formosan subterranean termite 分 布 関東南部の西南日本に分布。現在、千葉県、茨城県、神奈川県 生 態 本種は寒さに弱く、一月の平均気温が4?で最低平均気温が0?線に一致します。しかし気温の低くならない暖房等が効いた建物では、北にでも定着しています。活動好適温度は30〜35?とヤマトシロアリよりも高いです。 世界中で最も加害の激しい種類で、立ち木や鉄骨・鉄筋コンクリート造にも被害を与えています。特別に加工した塊状の大きな巣を作り、本巣と加害場所との間に分巣を作ることがあり、巣から蟻道を100mも延ばしたという記録もあります。巣の形は球状が多く直径が1mになり、壁の隙間の場合は薄く広がり 4m2に及ぶことがあります。職蟻は水を運ぶ能力があり、水取り蟻道を通して湿らせながら建物全体に加害していきますので、加害速度は速く広範囲に及びます。 女王が成長すると卵巣が発達し体長40mm、腹部幅10mmになります。一コロニーの個体数は最高100万匹に達することがあります。 職 蟻 体長約4〜6mmで、体色は乳白色です。ヤマトシロアリよりも少し大きめである。左大顎の第一縁歯は端歯より小さくて、斜め前方向に突び出ています。 兵 蟻 体長約3.8〜6.5mmで、体色は乳白色です。頭部の形態は卵形で体長の1/3の長さがあり、淡褐色で前方が少し濃い色になっています。前頭部中央に額腺があり、白い粘液(防御物質)をだします。 有 翅 虫 体長約7.4〜9.4mm、体色は黄褐色で頭部は暗褐色です。 翅長は約9.2〜12.8mmで翅色は淡黄色半透明で翅前部に2本の濃い翅脈があり、細毛で覆われています。 群飛は6〜7月の温暖多湿な夕方に数回行われ、分巣からも飛び出します。本巣と分巣との群飛時期は同じとは限りません。有翅虫は走行性があり、藍色の光(波長400〜420nm)に反応し集まります。 イエシロアリの最初の産卵数は通常20〜30個になります。  
引用:<http://www.cic-shiroari.co.jp/>
 
考察
本州に生息するシロアリは大別するとヤマトシロアリとイエシロアリの2種。文献から考察すると、生態的特長で異なる点は、その群飛の時間帯である。すなわち、磯子の我が家に現れたのと、三崎町で最初に出現したものは、ヤマトシロアリであり、その後のものはイエシロアリと考えられる。
恐ろしい事は、三咲町の床下にはヤマトとイエの両種が混棲し、四六時中、木柱を貪り喰っている現実である。「木材なんでも小事典」(木質科学研究所 木悠会編/講談社発行)によると、
 体重約3.5mgのイエシロアリが、1日に体重の50分の1程度の木材を食べることが、実験の結果、わかっているらしい。100万頭からなる集団であれば、3.550ラ100万=7万mg、つまり70gの木材を一日に消費している計算になります。70gラ365日=2万5550g=25.55kg これ即ち、1年間に、住宅に用いられる、10cm断面で、長さ3mのスギの柱の3本弱に相当する事らしい。
 
 これらの科学的実態を知ってか知らぬか、社長中澤茂は今年の群飛をその華麗なる掃除機捌きで戦いぬき、ご栄転の運びと相成った。
 着地した羽蟻は自ら羽を切り落とすと言う。そして、雄雌が1対となり新たなる“巣”を造り、女王蟻・王蟻として卵を産み続ける。早朝の事務所の床に散乱する落とされた羽根の痕跡を見るたび、社長中澤茂の消えたこの建物があと何年持つのだろうと、足の下で今も家を食み続ける数百万の虫達に、私は一人問いかけている。
2006/07/24 升 
 
*日本地図の太いラインはイエシロアリの生息北限を記しています。まさに、三浦半島を横断するこのラインが極悪イエシロアリの生息北限らしいです。
 

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