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無伴奏混声合唱組曲「夏目漱石人間模様」 文 夏目漱石(原文のまま) 「草枕T」 智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。 人の世をつくったものは、神でもなければ鬼でもない。やはり向こう三軒両隣にちらちらするただの人である。ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。 我輩は猫である。名前はまだ無い。 どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャーないていた事だけは記憶している。 「草枕U」 春は眠くなる。猫は鼠を捕る事を忘れ、人間は借金のある事を忘れる。時には自分の魂の居所さえ忘れて正体なくなる。ただ菜の花を遠く望んだ時に眼が醒める。雲雀の声を聞いたときに魂のありかが判然する。雲雀の鳴くのは口で鳴くのではない。魂全体が鳴くのだ。 「坊ちゃん」 考えてみると世間の大部分の人はわるくなることを奨励しているように思う。わるくならなければ社会に成功はしないものと信じているらしい。たまに正直な純粋な人を見ると坊っちゃんだの小僧だのと難癖をつけて軽蔑する。それじゃ小学校や中学校で嘘をつくな、正直にしろと、倫理の先生が教えないほうがいい。いっそ思い切って学校で嘘をつく法とか、人を信じない術とか人を乗せる策を教授する方が、世のためにも当人のためにもなるだろう。 演奏:長岡混声合唱団コールポップス
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