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故・安藤三男氏といえば、ボスおよび幹部級の特撮キャラをいくつも演じており
それぞれ強烈な印象を残している。
ここでは個人的に思い入れが深く、かつ興味深い好対照を成している二人、すなわち、
「人造人間キカイダー」のプロフェッサー・ギルと
「イナズマンF」のガイゼル総統について少し書いてみようと思う。

まずはギル教授だが、いま作品を見直してみると
とにかくテンションの高さが目につく。たとえばこんな具合だ。
ハカイダーの誕生シーンである。

「人造人間キカイダー」第37話
「ジローの弟 強敵ハカイダー!」
 
ダークの科学者 「プロフェッサー・ギル!
 悪魔回路サイボーグの手術、すべて完了いたしました」
プロフェッサー・ギル 「(つぶやくように)…よくやった…
 では、その成果を見せてもらおうか…
 出ろ……
 (突如激昂して)出て来いハカイダ───ッ!!

棺桶の中からハカイダー登場!

プロフェッサー・ギル 「悪の戦士! ダークの誇る改造人間・ハカイダー!
 おまえの敵はこの世の中にたったひとり、
 キカイダーあるのみだ!
 ゆけ…ゆけ、ハカイダー!
 その体内に組み込まれた、悪魔回路を存分に使え!
 どこまでもキカイダーを追い詰めろ…
 そして…そして…そして殺せェ───ッ!!

ハカイダーショットの早撃ちが、次々とアンドロイドマンを破壊していく!

プロフェッサー・ギル 「ははははは…それでいいのだ!
 それでいいのだ、ハカイダー!!」

毒々しい色の照明に照らされ、落ち窪んだ目をかっと見開き、髪振り乱したどアップで
搾り出すようにこんなセリフを叫ばれると、もはや誰も口を挟めない*1
人間の幹部がそばにいたら、さぞ働きにくかったろう…と思わせるほどの情緒不安定ぶりだが、
そういう存在が組織内にいないのが、逆に恐ろしいところなのだ。
ギルの周囲で働いている、司令室詰めのアンドロイドマンたちが、
「どうかお気を静めてください」とか、「うわーっギル様がお怒りだーっ!(笑)」とか
なんでもいいから反応してくれれば、場の雰囲気もそれなりに着地点を見出せるのだが、
主人がいかにエキサイトしても、彼らは(おそらくはその性能の低さから)まったくの無反応である。
その中でわめき散らすギルの姿は、狂気で視聴者を圧倒しながらも
どこか滑稽で寒々しい。あたかも、人望のない暴君のようである。

それに反してガイゼル総統は、テンションの低さと口数の少なさが
特徴であり魅力にもなっている。

「イナズマンF」第26話*2
「恐怖のガイゼル総統と謎のデスパー軍団!」
 
司令室でチェス盤に向っているガイゼル総統と、
その脇に控えるウデスパー。
そこに、ハンマーデスパーが連行されてくる。

ウデスパー 「ハンマーデスパー! 貴様は功を焦るあまり
 このウデスパーを闇討ちにしたな!」
ハンマーデスパー 「はっ…あのことに関しては深く反省しております」

ハンマーデスパーを責めるウデスパーだが、
ガイゼルは気にもせず駒を動かしている。

ウデスパー 「おまえのために、傷を負った渡五郎を
 みすみす逃がす結果になったのだぞ!」
ハンマーデスパー 「申し訳ありません、ガイゼル総統!」

ようやく口を開くガイゼル。
だが、視線は盤に注がれたままで、
許しを乞うハンマーデスパーを見ようともしない。

ガイゼル総統 「…おまえの役割は何か…」
ハンマーデスパー 「は?」
ガイゼル総統 「ハンマーデスパー…おまえの使命は…」

ガイゼルがTVモニターのスイッチを入れると、
襲撃される日本各地の映像が映し出される。

ハンマーデスパー 「日本無差別破壊作戦…
 しかし、渡五郎が、イナズマンめが…ぐわっ!」

杖を手にしたガイゼルは
無言でハンマーデスパーの首を切り落とした!

ハンマーデスパー 「お許しください、ガイゼル総統閣下!
 お許しください!」

首なしのハンマーデスパーを尻目に、ガイゼルは
静かにチェス盤に向き直る。

ハンマーデスパー 「ガイゼル総統! どうかお許しを!」

命乞いが聞こえないかのように、駒を進めるガイゼル。
それを見てうなずいたウデスパーは、さらに片腕を切断!
 無残に崩れ落ちるハンマーデスパー!

ハンマーデスパー 「死ぬのはいやです!
 お助けください、ガイゼル総統!」
ウデスパー 「生き延びる道がひとつあるぞ、ハンマーデスパー…」
ハンマーデスパー 「な、なんでもする! なんでもする、ウデスパー!」
ウデスパー 「ようし…渡五郎を殺し、使命を果たせ!
 それも、今日中にだ!」
ハンマーデスパー 「な…!? 今日中に…!」
ウデスパー 「総統閣下…
 ハンマーデスパーに自信がなさそうです

無言でうなずくガイゼル。
ハンマーデスパーはあわてて、

ハンマーデスパー 「や、やる! やります!
 必ず今日中にやります!」

その言葉を聞いたガイゼルは、
かすかに笑って駒のひとつを握る。
それを合図として、戦闘員たちに命令を下すウデスパー。

ウデスパー 「ハンマーデスパーを、修理部隊へ回せ!」

この間本人のセリフはふた言のみ。さらに表情の変化も微妙で、
うっかり見逃してしまいかねない。
だが、わずかな仕草で部下を自在に動かし、
なおかつ周囲が一挙一動に敏感に反応していることで、
腫れ物に触るような緊張感が場に満ちている。
どこかけだるげな本人の態度も、手にした権力の絶対性を感じさせ、
いたずらに威張り散らすよりもよっぽど恐ろしい。

かように両極端な2キャラだが、その根底には
「独裁者の孤独」という共通点があるように思う。
「絶対服従」というのは、ある意味コミュニケーションの断絶と同じことなのだ。
それが、一方では狂乱の叫びとなって噴出し、
もう一方では物憂い沈黙に沈んでいったのではあるまいか。

そして、その両極端が、同じ人間によってみごとに演じ分けられていたことに
俺としてはとりあえず感嘆するしかないのである。



【*1】
余談だが、やたらと「殺せ」を連発するのもこのヒトの特徴である。
「殺せ…殺せ殺せ殺せェ───ッ!!」てな具合に、自分で自分の言葉に逆上することが多く、
やっぱりうかつに言い返せなくなってしまうのだ(まあ誰も言い返しやしないのだが)。

【*2】
新シリーズ「イナズマンF」は、事実上この話が第1話だが、
「イナズマン」から通しで話数をカウントするのが通例になっている。


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