稲荷勧請

 伏見稲荷大社の祭神は、宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)、佐田彦大神(さたひこのおおかみ)、大宮能売大神(おおみやのめのおおかみ)、田中大神(たなかのおおかみ)、四之大神(しのおおかみ)の五柱の神であり、これらの神々を総称して稲荷大神(いなりのおおかみ)、またの名を正一位五社稲荷大明神と呼ぶ。そして、この稲荷大神の御分霊<わけみたま>=神璽<おみたま>を授かり、守護神として祀ることを稲荷勧請という。

 神璽は神札(おふだ)とは違う。これは伏見稲荷の神々のいわばクローンであり、ご神体そのものである。ゆえに、家や屋敷の中に神社を建てるのと同じであり、もっとも丁重に祭祀をしなければならない。

 以下に稲荷祭祀に関する留意点をあげるので、参考にしていただければと思う。いろいろ細かなルールがあるが、それを無視して自己流の祭祀法にならないように気をつけていただきたい。

率直にいえば、神前で素朴に、素直に、誠実に自分自身を開放して、畏きものに接することができるなら、ただの形式にとらわれる必要はないと思う。しかし、だからといって、形式を全く無視してしまっていいかというと、それは間違いである。神社にお参りするために行って、拝殿で頭も下げず、拍手する代わりにいきなり合掌したりする人がいる。あるいは境内でつばを吐いたり、ゴミを散らかしたり、大声を出したりして、しっかり頼み事だけはして帰り、御利益だけを要求する人もいる。こういうのは、参拝とはいわないのである。神社に参って拝むには、それなりの礼儀・作法というものがある。

形式や作法をまずしっかりとマスターした上で、自分のオリジナリティを追求するならともかく、何もわかっていない状態で闇雲に拝んだり、神頼みをしても意味はない。一つ一つの型や作法の中に、神々と接するときの構えはプログラムされているためである。さらにいえば、作法に沿った行いを通じて、自然と神々に対する態度、信念が強化されていくこともまた真実である。

社の形態 原則として、一社用を用いる。三社用の社を使用するときは、中央;神璽、右;伊勢神宮のお札(神宮大麻)、左;氏神神社のお札を入れて祀る。
既にお稲荷様のお札があるとき 神璽と同じ社に入れないこと。別の社にお祀りするか、神璽の納めてある社の扉、または横に立てて置く。
調度品 社の前に神鏡榊立て一対眷属像(狐の置物)一対ローソク立て一対。以上は必須。他に、提灯、朱の鳥居、灯籠、のぼり等を適宜飾ってもよい。
写真はプロ仕様であるが、稲荷祭祀の基本を押さえた祀り方をしている。中央が神璽の入っているお社。
一般的な神棚の祀り方はこちらを参照。
祭の心得 神棚、祠の清掃は毎日実施する。神前に臨むときは、手を洗い、口をすすいで。その上で、お供えを用意し、祝詞を奏上する。
供え物 基本三品(必須)生米、塩、水。それぞれ決まった容器がある。毎日、人間が朝食を取る前に換える。
月並祭のとき:酒、餅、海魚、海菜(昆布やワカメなど)、野菜、果物、お菓子。
フルバージョンの供え物とその配置は以下の通りである。
祭の日 毎月一日・十五日・初午の日。少なくともこのうち一回は月並祭を行う。毎年は神璽拝戴記念日。
拝礼の仕方 一揖(いちゆう):軽く頭を下げる。
二拝:深く(九十度に)二回頭を下げる。
二拍手:手を二度打つ。そのとき、右手を少し手前に引きパンパンと打つ。打ち終えたら右手を戻し、両手をそろえる。
一拝:再び九十度に頭を下げる。
一揖:軽く頭を下げる。

ちなみに、邪馬台国の時代の人々は相手に敬意を表するときの挨拶として、パンパンと二拍手をしてひれ伏したという記述が魏志倭人伝に残っている。二拍手(出雲地方では四拍手が正統)は2000年の歴史を持った儀礼的身体言語(ボディ・ランゲージ)である。
祝詞を上げて拝礼するとき 一揖
二拝
二拍手
祝詞奏上
二拍手
二拝
一揖
あげる祝詞の種類 一.祓詞(はらえのことば)。あるいは大祓詞でも可。
二.稲荷祝詞
それに加えて、稲荷心経、稲荷秘文を唱えるもよし。
御神名 伏見稲荷大社で拝戴した神璽に、自分で御神名を考えて命名してもよい。
たとえば、伏見稲荷山の下社は白菊大神、中社は青木大神、上社には末広大神という御神名がついている。ただし、オリジナルの御神名をつけるときは、○○稲荷大神(○○いなりのおおかみ)というスタイルにすること。


私は稲荷信仰を一生貫徹する意志を持っている。これは最初は、個人的な動機から始めたものであるが、今では精神的な支柱として確固たる信念をもっているし、霊的な仕事の世界に参入するにあたって、稲荷大神の御神徳、御神威を目の当たりにするような体験(奇跡)を何度もしてきた。霊的世界にいる者として、稲荷系の霊力はなくてはならないものだと思う。私の霊的バックボーンは、稲荷信仰に、海神(龍神)の力を合わせたものであり、稲荷を霊的な母神、海神を霊的な父神として、魂のレベルで一体化させようと努力している。

みなさんの中にも、稲荷信仰を持っていたり、稲荷大神に関心を持っていらっしゃる方がおられると思う。日本の神社の中の半数近く(約四万社)が稲荷神社だし、稲荷祠になると数十万社に及ぶ。これほどまでに、われわれにとって身近でなじみ深い稲荷について、もっと関心をもっていただきたいと思うし、できることなら稲荷大神を自宅にお祀りしていただきたいと、率直に思う次第である。