稲荷一流大事
この祭文は伏見稲荷大社本願所愛染寺の初代住職天阿上人の自筆本に基づくものである。その源泉は室町時代(1408)にまで遡ることができる。愛染寺は神仏習合時代に伏見稲荷大社にあった真言宗のお寺で、両部神道に基づく祭事を行っていた。以下に示すのは、いわゆる荼吉尼天法に関係する経文、祭文、真言の抜粋である。
もともと門外不出とされていたものであるが、伏見稲荷大社(編)1957『稲荷大社由緒記集成−信仰著作篇』(伏見稲荷大社社務所)に収録され、公刊された。一応、公開されてはいるが、その取り扱いには注意を要する。ただの文字の配列、歴史的な文献であると思えば支障はないと思うが、霊的な目的でこれを読んだり、唱えたりするときには、何が起こってもおかしくはない。その結果に対する責任は自分にあることを自覚していただきたい。
<荼吉尼天真言>
オン、バサラ、ダドバン 七難即滅
オン、アビラ、ウンケン 七福即生
(合掌する)
オン、キリク、ギヤクウン、ソワカ
オン、ダキニ、キヤチ、キヤカ、ネイエイ、ソワカ
上の真言を、十万回、千回、百回、あるいは百三十五回となえる。
<三種神歌>
ちはやぶる、稲荷の宮の、しるしには
我思うことを、みつのやしろに
ちはやぶる、とよのみまえに、とのいして
我思うこと、神も答えよ
遠けれど、召せばぞ参る、召したまえ
富草も食べ、いえつとにせん
我胸を開きて、三返召し入るなり
<稲荷和讃>
(供物をととのえる)
赤飯、餅、酒、菓子、油物
<十七日間の願掛けの時は、午の日、午の時に開始し、子の日、子の時に結願する。>
<三日間の願掛けの時は、酉の日、酉の時に開始し、亥の日、亥の時に結願する。>
帰命頂礼、観世音
垂迹、稲荷大明神
千手千眼、如意輪よ
大慈大悲、十一面
和光利物之化現は
三所権現、新也
四之大神、多聞天
田中之明神、不動尊
妙音化現、弁財天
地蔵応用、十禅師
命婦者、文殊垂迹
小薄普賢、等流なり
法性之都、おたちいで
同居の堺に、あとをたれ
衆生に、福徳得させつ
二世の願を、満て給え
我等が宿縁、深くして
信心誠に、あさからず
明神利生之本懐は
今更円満したまえり
我願既に、満ちぬれば
諸数の望みを、また足んぬ
除災與楽の、衆生者
皆人同じく、蒙りぬ
百年栄花、事ありて
後生善所の 刻には
本願まさに、顕れて
来迎しょうを 疑わず
此土の結縁、始めにて
彼の土の利物の、終わりなり
現世後生の、得益は
明神利生の、故そかし
極楽浄土に、生まれては
六神通を、具足して
娑婆に帰り、来たりては
一切衆生を、引導せん
一切如来、大慈悲
皆集一体、観世音
八寒、八熱、奈落かは
大悲一人代受苦
願以此功徳、普及於一切、我等与衆生、皆共生仏道
<稲荷心経>
本体眞如住空理
寂静安楽無為者
鏡智慈悲利生故
運動去来名荒神
今此三界皆是我
有其中衆生悉是
吾子是法住法位
世間相常住貪瞋癡之
三毒煩悩皆得解脱
即得解脱
掲諦掲諦
波羅掲諦
波羅僧掲帝
菩提薩婆訶
多呪即説呪曰
<秦乙足神供祭文>
謹請辰狐神王
謹請天帝尺使者
謹請天女子使者
謹請赤女子使者
謹請黒女子使者
謹請八大童子式神使者
謹請頓遊行式神使者
謹請須臾馳走式神使者
謹請十二神式神使者
謹請二十八宿式神使者
謹請三十六禽使者
謹請堅牢地神使者
謹請東方青帝地狐木神御子
謹請南方赤帝地狐火神御子
謹請西方白帝地狐金神御子
謹請北方黒帝地狐水神御子
謹請中央黄帝地狐土神御子
謹請野干博士野干御子
謹請長髪美麗豊福御子
謹請如意自在豊富御子
謹請天地両番所生
一万三千七百五十八人式神使者
みな来たりて座につき、献するところ尚饗、再拝再拝。
真言等任意に唱える。