02秋、京都


日時 平成14年11月21日 (木)曇り



「どうして貴方は京都に行くの、 京都の町はそんなに良いの。」

こんな歌詞の歌があったような気がしますが、、お江戸日本橋から旧東海道を女房と二人で京都を目指し、先月23日に 京都三条大橋の袂に夕方着いて、そのまま京都の町も見ずに、帰京してしまった。
わずかに月心寺と南禅寺周辺を散策しただけだが、それでも千二百年の歴史を持つ 京都の大きさと雅さに、心を奪われた。
今月に入って、マスコミの色々な報道で、京都の紅葉が喧伝され、 今が見頃とのこと、得意の日帰りで再び京都の土を踏むことにした。

東京駅6時13分ひかり乗車、京都着は8時54分だった。
構内でパンフレットを探したが見あたらず、手持ちの地図を頼りに歩き出す。
駅を出て右折、帰京の時のバス道を逆行して、洛東方面に向かう。


行く手に赤レンガの国立京都博物館が見え、右に三十三間堂があった。
何十年か前に来た事があるような気もするが、記憶は薄い。
喜多さんも来た事はあるが、中は見ていないとの事、早速拝観する。

圧倒された。 建物を含めて、全て国宝、千一体の千手観音が整然と居並び、その前に観音を守護する、風神、雷神を始めとする諸仏、一つとして心を打たぬ仏はいない。
なかでも中央に座す、千手観音の大きさと威厳には、自然と頭が下がる。
写真は、堂内撮影禁止の為、パンフレットから転載しました。

 

表に出て、通し矢で有名なお堂の外観を見て、後にする。
正面に地積院があった。真言宗智山派総本山である。成田山や川崎大師、高尾山始め、多数の寺院を擁している。
ただこの寺は幾多の火災にあい、明治15年には本堂を焼失、昭和50年にやっと再建されている。


境内は広いが、堂塔伽藍はほとんどが新しい。当時からの障壁画(長谷川等伯一派の作品)は国宝に指定され、寺宝館に展示されていた。

お庭も拝観させて貰ったが、利休好みの庭と言われているだけあって、見事な庭だった。境内の紅葉も、庭の紅葉も鮮やかに色付いていて、これから先が楽しみになった。


妙法院の門前を通り、大谷本廟(親鸞上人墓所)に出た。
紅葉が美しく誘われるように中に入って参拝する。
この脇の道が、清水寺に続く五条坂と思い上っていく。後で分ったが五条坂はもう一本先の道だった。

この道も清水寺に繋がる道だが、右手は全部お墓で、左側はお寺や、墓参りの人の為のお花やお線香を売るお店だった。
道はどんどん急になり、右手の墓は谷深く何処までも続いている。
日も射してきて暑くなり、ジャンバーを脱いで腰に巻く。

清水寺にほどなく着く頃から森が深まり、木々の緑に紅葉の赤が映える。
清水寺は、言葉通り全山燃えるような紅葉だった。

 

相変わらず物凄い人出だ。
左手にある成就院にに入り、お庭を拝観する。この庭は「相阿彌」作、「小堀遠州」補作といわれる国指定の名勝で、高台山を借景とした、模範的な借景式庭園だ。
喜多さんは前に来た時に、ここは見ているそうだが、昔のままだと言っていた。
右手小高いところに阿弥陀堂があり、その前景として丸く、四角く、大小さまざまに、刈り込まれた木々が、池の岸まで、斜面一面に広がっている。
正面には見事な五葉の松、左手には椿(わびすけ)があった。
成就院は堂内も庭園も撮影禁止の張り紙が至る所に張ってあった、が 一枚だけ隠れて写してきた。緑と紅葉が見事なバランスで、隠れてでも写したくなります。ごめんなさい。



成就院の外も、見事な紅葉だった。小道かと思ったら、それが池で、水面(みなも)に小さな「もみじ」の葉がいっぱい散っていて奇麗だった。(左)

清水の舞台は相変わらず物凄い人出で、お上りさんの弥次喜多は、お互いに写真を写しっこです。有名な滝は行列ができていて、ここはパス。

お参りもすんで、清水坂のお土産屋さんを素見(ひやかし)ながら、お昼所を探し、まずは「みたらし団子」で一服です。
お抹茶を戴き、一休みして、前の店で喜多さんは可愛い大福を買って、坂を下りながら食事処を探します。
沢山お店はあるのですが、ああでもない、こうでもないと、言っている内に、大通りまで出てきしまった。

ここで右折、しばらくすると、右手の路地奥に、八坂の五重の塔が見えた。

 

両側に奇麗なお店も並んでいる。さっそく路地に入り、八坂の塔の角の洒落た店に入ったら一杯で、「御予約の方だけなのですよ」と体よく断られる。
五重塔の写真を二三枚写して、京都らしい、落ち着いた小道を行くと、五人ほど中年の女性が店から出てきた。「美味しかったわ」などと話している。

あ ここなら今入れるかなと、さっそく戸を開け、「食事出来ますか」なにしろお腹が空いている。「どうぞ」の声に一安心。
京風の洒落た店内には三組のお客さん。カウンターに座り、メニューはと思ったら、「二千五百円と三千五百円のコースがあります」とのこと、「昼食だから二千五百円のでお願いします」と弥次さん、
チラッとお隣さんを見ると湯豆腐やら刺し身やら色々並んでいる。
あれは三千五百円のコースかな?。 ところが出てくる料理は八寸を始め、さしみ(まぐろと鯛、小さな造りだが本物だ)酢の物、生鮭の照焼き、土瓶蒸し、それに京都らしい、ざる豆腐に湯豆腐、最後にフルーツも付いて、お隣さんと同じだ。
味も器も素晴らしく、水口の魚兵楼さんを思い出した。
しかし、お勘定をして出て行くほかのお客さんは、皆さん三千五百円のコースのようだ。
食事が済んで表に出てから、「美味しかったね、あれで充分だよね、でも千円の差はなんなんだろう、」「料理の数は同じみたいだったわね。」「違いは中身だな、おそらく土瓶蒸しの中身は松茸だな、弥次喜多のは舞茸だったけど」やっぱり千円けちるんじゃなかったな。

折角京都に来たんだから、京都は観光都市なんだから。
お店の名前は「阿わた」さんでした。

この道は石塀小路だと思っていたら、下河原通りということだ。
そのまま八坂神社の境内に入る。祇園の鎮守で祇園祭りで有名な神社だ。
朱塗りの社殿に沢山の提灯が下がり、人出も多く賑やかだ。
正面の大鳥井から、せっかくだからと祇園の町に向かい、花見小路を少し歩いて、三条を目指して逆行すると、祇園新橋に出た。

すでに二、三台のハイヤーの姿を見掛けたが、もう少し時間がたてば、「はんなり」とした京都祇園の光景が見られたのではないかな。
箱形のおかもちをもって、板さんが足早に通り過ぎていった。

河原通りに出て、三条からバスで銀閣寺に向かう。銀閣寺道で下車、交差点を渡って銀閣寺へ。




まず拝観料の切符が御札の形式にびっくり、参道の両側の背の高い、良く手入れされた生け垣(銀閣寺道)にびっくり、富士山型にこんもり盛り上げた向月台、白砂で縞模様を描いた銀紗灘にもびっくり、もちろん、しぶい銀閣にも、わびの観音堂にも、さびの東求堂にも、紅葉に彩られた広い回遊式庭園にも、もっとびっくり。

 

さすが世界遺産に指定された日本の宝だ。

門前から左折して哲学の道に入る。京大の先生方が思索にふけりながら歩いたという道で、疎水に沿った約二キロに及ぶ、日本の道百選に選ばれた散歩道だ。


今は紅葉が美しいが、春も桜の名所であり、桜の古木が連なっていた。
疎水には清水(しみず)がさらさらと流れ、幾つかの橋が架かり、疎水の向こう側には重厚なお屋敷、お料理やさん、道沿いには新しく開かれた洒落た喫茶店や小物を商うお店など、人通りも切れ目がない。
山茶花(さざんか)の真っ白い花が紅葉に映えて美しく咲いていた。


散歩道の終わりの地点に若王子神社(若王子とは天照大神のことだそうです)があり参拝する。
夕刻から永観堂や高台寺でライトアップがあり、昼間とは一味違った景色が見られるという話しを聞き、永観堂にむかう。
4時半頃、永観堂の大きな門前に着いたが、5時で一旦お客さんに出てもらい5時半から別料金での入場とのこと、時間が半端だし先の事を考えて、少しでも京都駅に近い高台寺に行くことにした。

バス停にでたが長蛇の列、交通整理をしていた人に聞いたら、渋滞でバスを待つより蹴上(けあげ)まで歩いて地下鉄で行った方が早いと教えられ蹴上駅に向かう。
蹴上の大きな交差点に出て、かって五十三次の時歩いた道を蹴上駅に向かって上って行く。
地下鉄で一区間の切符を買い、四条烏丸駅で乗り換える為下車したが、さて土地勘の無い京都、高台寺に行くのに何処の駅で降りたら近いのか、さっぱり勘が働かない、 不安のあまり、乗り換えをあきらめ、何はともあれ一旦地上に出ることにした。
出てはみたものの、既に日は暮れていて真っ暗、ここが何処か、私が誰か、さっぱり分らない。緊急手段、歩き旅に反するがタクシーを拾い高台寺に向かう。

高台寺では既に夜の部が始まっていた。切符を買うにも長蛇の列、暗闇の中を足元の灯かりを頼りにぞろぞろと歩く。

ライトアップされた高台寺庭園について、東京新聞の11月20日夕刊の「日本再発見」から抜粋すれば、「昼間の紅葉は鮮やかさで目を奪うが、妖しいまでの美しさは夜にこそある。七百本の「もみじ」が暗闇に浮びあがる。庭の中心、臥龍池は、朱、黄、黄緑など色とりどりのモミジが周りを囲む。西側に廻って息を飲んだ。鏡のような水面に「もみじ」が映り込んで、異界を思わせる美しさだ。見とれていると木の霊に誘われて、吸い込まれるような幻想に襲われる。美しすぎるものは凄みさえ伴う。」さすが文筆をもって業としているだけはあって、良く情景を表しています。

まったくその通りでした。暗闇の中、何枚も写真を写してしまったが、あの情景を写し込むのは無理だろう。夜と朝の違いはあるが、弥次さんは上高地の明神池の情景を思い浮かべた。喜多さんも納得していた。

本当に良いものを見せてもらった。


高台寺を後にして、タクシーに乗り京都駅に向かい、7時21分ひかり乗車、9時56分東京駅着、車中持ち込んだ駅弁で夜食とした。
喜多さんはヘルシーだとか言って、京漬のお寿司が入った弁当だ。
さすがに、これには参っていた。
ネタが全部「なす」や「たくあん」などの漬物ばかりで、見栄えは大変に良いのだが。
それからもう一つ、永観堂から高台寺に行くには、蹴上の交差点を横切って、丸山公園の中を突っ切って行けば、歩いても近かったようだ。後の祭りだが。
道を聞いた時に駅を聞いたのが間違いの元だった。
タクシーの運転手さんの話しでは、今日は天気も良く、紅葉も盛りなのに、人出が少ないと言っていた。
「でもウイークデイなのに、物凄い人でしたよ」という弥次さんの言葉に「いやいや、こんなもんじゃないですよ」と運転手さん。またまた京都の凄さを感じました。

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