SUIBI-TAN


GREEN MIST STORY


浅沼「そこは霧に包まれた楽園だった」

浅沼の語りで幕が開く。小高い山の中腹部に立てられた建物は周りの木々に隠され、そこへ至るまでに道しるべもなく、道らしい道もない。山全体は霧に包まれていて、あるということを知らなければたどり着く事は出来ない。そこがMUF・・・選ばれた数少ない天才達の為の研究所。
セキュリティシステムにより、内部からも正式な手続きを踏まなければ出る事は出来ず、脱走を計れば最悪、研究所内に点在しているレーザーにより命を落とす事になる。
MUF閉鎖までの間に脱走を計った者はただ一人。その日も、霧が立ち込めていた・・・。

浅沼

深水

深水(左)、浅沼(右)
浅沼「ねえ、ここの霧綺麗だと思わない?」

脱走を計ったのは『深水』。そこで、緑の霧を見つめる『浅沼』と遭遇する。無表情で機械のような喋り方をする彼女は何故か、追っ手から深水をかばう。そのお礼にとオカリナとチップを渡す深水。チップには彼女の研究「クローン人間」に関するデータが全て入っていた。深水のオカリナの音に僅かな反応を見せる浅沼。

浅沼 「綺麗な音」
深水 「そのチップに私の研究成果が全て入ってる」

立ち去ろうとする深水に浅沼が声をかける

浅沼 「ねえ、ここの霧綺麗だと思わない?」
深水 「そうかぁ?」
浅沼「まだ、間に合う」

研究所スタッフの『川瀬』と深水が遭遇する。川瀬の制止を振り切り、深水は逃げる。オカリナを手に追って来た浅沼に気付き、振り返る深水。浅沼の目の前で深水はレーザーに貫かれ、倒れる。
深水から受け取ったチップの中身を読む浅沼。

浅沼 「・・・髪の毛一本から、採取したその時そのままのクローンを作る事が出来る」

浅沼(左)、深水(シルエット)

杉浦(左)、所長(右)
杉浦「自分の行き先は自分で決めろ」

研究所閉鎖の知らせが本社より『所長』と『杉浦』の元へ届く。慌しく本社への撤退準備を始める研究所内。残留希望を出し、閉鎖後もMUFへ残る事になったのは浅沼ただ一人だった。

川瀬「なににも興味を持たない人ですから、ここ以外に行くところなんてないのかも知れませんよ」
深水「あんた、変わってるね」

深水のクローンが目覚める。浅沼は面白いものを見せてあげると試作として作った川瀬のクローンを見せる。研究所が閉鎖になった事に驚く深水。

深水「あんた、なんで残ってんの?」
浅沼「なんとなく」
深水「何で私を作ったの?」
浅沼「・・・これを、吹いてもらおうと思って」

写真上左より:川瀬クローン、深水、浅沼

写真下:深水(左)、浅沼(右)

左より:川瀬クローン、深水、浅沼


深水(左)、浅沼(右)


川瀬(左)、杉浦(右)
杉浦「もうイヤ!!」

その頃、本社では杉浦がキレていた。
杉浦「ざるみたいな頭の持ち主と仕事をするのはもうイヤ!」
しかし、所長から研究所の異変を告げられる。
 
所長「二日に一度、メールにて連絡を入れるはずの浅沼から全く連絡がない」
杉浦「研究所へ、行くんですね?行くわよ、川瀬!!」
川瀬「杉浦さん、休暇を取ってこないと!」

杉浦、川瀬、所長の三人はMUFへと向かう。
深水「肝心なことを聞くといつも『別に』とか『何も』とかばっかり」

相変わらず深水の音に拘る浅沼に、深水が言う。

深水「音は声だって聞いたことがある。人形みたいなあんたに人間の音なんて出せないじゃない。意味わかる?」
浅沼「分からない」
深水「どうしてそんなに音に拘る?」
浅沼「それは綺麗だったから」
深水「綺麗な音で何が出来る?人形に、何が出来る?」

初めて動揺を見せた浅沼は、深水の前から逃げる。
浅沼「貴女に価値なんてないのわかってる?」

浅沼の前に川瀬のクローンが現れる。その手にもっている紙の束を見て、浅沼は感情を露わにする。

浅沼「いちいち思い出させないで。終わりにさせないで。・・・不完全な試作品の癖に!」

手にもっていたナイフで川瀬に何度も切りつける浅沼。やがて辺りに散らばった紙のうち一枚を手に取る。それはあのチップの中身をプリントアウトしたもの。『クローンの寿命はオリジナルと全く同じである。死体からのクローン再生は可能であるが、その寿命は極めて短い括』。深水のクローンは、死体からの再生。

浅沼「深水、貴女はいつまでいられるの・・・?」

浅沼(左)、川瀬クローン(右)

浅沼
浅沼「音は、声?・・・その人の、声」

深水が浅沼を探してやって来る。「何が欲しいんだろう。私、何をすればいいんだろう・・・」

深水「風も冷たくなってきた。おなかもすいた。もどろ。」

浅沼がふと、深水に言われた意味に気がつく。浅沼は深水を追って、走り出す。

左より:川瀬、杉浦、所長
杉浦「とりあえず、別れて建物の中を探しましょう」

所長、杉浦、川瀬の三人がMUFに戻ってくる。
杉浦「それ、深水のクローンでしょ」

杉浦と深水がばったりと顔をあわせる。追いついてきた浅沼に杉浦が問う。

杉浦「貴女、深水からチップを受け取ってたのね?」

睨みつける浅沼に杉浦はMUFでの契約を持ち出す。

杉浦「研究成果は全て引き渡す契約。チップもそのクローンも引き渡しなさい」
浅沼「・・・これは私のもの。私が作った、私のもの」。浅沼は深水を連れて逃げる。

杉浦(左)、深水(右)

左より:杉浦、深水、浅沼

左より:川瀬、杉浦、深水、浅沼

浅沼
浅沼「私はただ、深水の音が聞きたくて」

寿命の短い深水のクローン。二人で逃げるも、深水が走れなくなる。杉浦、川瀬、所長の三人が二人に追いつく。浅沼がナイフを向ける。

杉浦「判断能力なくなってんじゃないの!?」
浅沼「そんなもの、なくたっていい!」

強引につれて帰ろうとする三人。

浅沼「霧に包まれた音を聞いたことがある?つかみたくてもつかめなくて、それでも頭から離れてくれない音を、聞いたことがある?」
「ねえ深水、私はどうしたらいいの?何をすればいいの?」
「見て・・・今日も霧が出てる。ここはいつもそう、いつも霧を見てたよね。緑で何にも見えなくて、綺麗だよね」

ナイフを取り落とし、意識を失って倒れた浅沼。深水が渾身の力で立ち上がり、浅沼をかばってナイフをスタッフへ向ける。
深水「今日も霧が出てる。今なら分かる。凄く綺麗だ」

「あいつらかえったよ、安心していい」、目が醒めた浅沼に深水が言う。しかし、浅沼は深水に向けて問い掛ける。

浅沼「貴女、誰?」
深水「浅沼・・・?」

浅沼は深水の事も、今までの事も忘れていた。それでも、深水と出合った時と同じ事を言う。

浅沼「それ、綺麗な音」
深水「・・・初めてなんだ、誉めて貰ったの」

寿命の限界の深水が浅沼にオカリナを渡す。

深水「預かってて。ちょっと、疲れた。また目が醒めたら取りに来るから」
浅沼「どういうこと?」
深水「クローンも悪くないね。今の私がいなくなっても、また別の私があんたと話をする。」

立ち去る深水。浅沼はひとり呟く。

浅沼「貴女は誰?初めて会ったのに、どうして?・・・深水、貴女は誰?」

深水(左)、浅沼(右)

深水

浅沼「ここは霧に包まれた楽園・・・」

時が流れる。浅沼は一人、MUFにいた。

浅沼「もうすぐ戻ってくる。何度眠っても何度も目を醒ましてくれた。だからまた、もうすぐ戻ってくる・・・」

深水のシルエットが浮かび上がる。

浅沼「お帰り、2051番目の深水・・・」

そのシルエットが崩れ落ちる。そこへ、浅沼が近づく。影が光の中に消える。

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A Theatrical Campany yakoudou