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小さな会社の起業アドバイザー
行政書士 中井 篤

 岡山県行政書士会所属
    登録 第02333851号
 岡山県中小企業支援センター
            登録専門家

 「起業研」
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契約書のポイント

 −なぜ契約書を作るのか−

 まずは「契約書」について考える前に、「契約」というものを確認します。

 例えばスーパーで買い物をする行為、これは売買契約です。
 スーパーで大根を買う場面では、売主のスーパーは大根を売場に並べて
「売ります」という意思表示をしています。これに対して買主である私達はその
大根を持ってレジへ行きます。これが「買います」という意思表示です。そし
て、レジで代金を支払い大根を手に入れます。
 これによって大根の所有権は私達に移り、スーパーはその対価として代金
を受け取っているのです。

 この場合は契約が結ばれてから履行されるまでが一連の流れの中で行わ
れていますし、代金を支払ったのに大根をもらえないということもないでしょう
から契約書など必要ありません。

 このように、契約書などなくても確実にその契約内容が実行される場合は、
特に契約書を作成する必要はありません。

 しかし、商取引の場合はどうでしょう。

 これも売買なら、一方が「買いましょう」という意思表示をし、もう一方が「売り
ましょう」という意思表示をすることによって契約が成立します。
 そして1ヶ月後に代金を受け取るという約束で100万円分の商品を売ったと
しましょう。この場合、確実に支払ってもらえれば問題はありませんが、ひょっ
としたら・・・という不安もあるのではないでしょうか。

 そこで契約書が登場するわけです。

 もちろん、契約書があれば100%回収できるというわけではありませんが、
回収できる確立が高くなる事は確かです。契約書がなければ、後からその契
約の存在を証明したり、契約の内容を相互確認することが困難な場合があり
ますので、極端な例ですが「支払いは1ヶ月後ではなく1年後だ」とか「支払い
は分割払いだ」と言われたり、ひどい場合には「買った覚えはない」と言われて
しまう可能性もないとはいえません。

 これらの事はどのような取引でも同じです、ですから実に様々な場面で契約
書が作成されています。共通しているのは、「契約の存在を確認(証明)する」
ことと「後のトラブルを防止する」ことのために契約書を作成するということで
す。

 契約そのものは契約書がなくても成立しますし、有効です。いわゆる口約束
でもいいわけですが、それでは不安な場合もあるでしょうし、当事者のどちら
かが契約内容について思い違いをしているかもしれません。先ほど述べたよ
うなトラブルがあるかもしれません。このような事態を防止し解決するために、
そしてお互いに為に契約書が大切なのです。   


 −契約書作成までの問題点−

 そうは言っても、契約書を作る事がはばかられる場面もあるかもしれませ
ん。
 長い間信用してつきあってきた取引先だから、こちらの方が立場的に低い
等、礼儀とか人間関係を考えて契約書を作れないということもあるようです。

 確かに業界によっては、契約書というものがまだまだ浸透しきれていない部
分もあるでしょうし、信用していないと相手に思われるのはいやだという感覚も
あるでしょうが、トラブルになった時のほうが人間関係や信用といったものが
崩れてしまうわけですから、それを考えれば契約書を作るときに少々いやな顔
をされることのほうがまだましだと言えます。

 後のトラブルを防止するために契約書を作成するということを説明した上で
まだいやな顔をするような相手であれば、逆になにかよくない問題を抱えてい
るのではないかというおそれもあります。もちろん決めつけるわけではありま
せんが、何も問題がなければいやがる必要はないはずです。
 繰り返しになりますが、無益な争いを避けるために契約書を作成するのです
から、それは相手との良い関係を保つためのことでもあるといえます。


 −作成のポイント−

 契約書の作成については、詳しく述べると実際キリがないほどに奥深いもの
なのですが、ここでは作成する上で欠くことの出来ない大切な要素を挙げてお
きます。

@前文
 契約の目的や当事者の表示など契約の概略を書きます。これは絶対に書
かなければならないというわけではありません。

A表題
 書き方に絶対の決まりはありません。しかし契約内容がはっきりするように
単に「契約書」とするのではなく、「不動産売買契約書」「金銭消費貸借契約」
などわかりやすいものにするのが良いでしょう。また、「念書」「覚書」などとし
た場合も契約書であることに変わりはありません。

B当事者の表示
 当事者は、個人であれば住所と氏名、法人であれば本店所在地の住所と法
人名で表します。

C目的条項
 契約の趣旨、目的、目的となるものの内容(土地であれば、所在・地番・地
目・地積といった内容)を記載します。この条項が第一条になる事が多いで
す。
 その後に契約の詳細な内容を条項ごとに箇条書きに書いていきます。

D作成年月日
 契約が成立した日を証明するために大切な部分です。契約の有効期限を確
定するなどのためにも重要です。

E契約当事者の署名押印
 Bの当事者の表示と同じように、個人なら住所氏名、法人なら本店所在地
の住所と法人名を記載します。印鑑は通常は何でもかまいませんが、大事な
契約なら実印を使用したほうがいいでしょう。

F目録
 契約の対象物を記載します。Cの目的条項の中に含めてもかまいませんが
対象物の数が多い時などは別紙として目録を作り表示します。対象物の特定
は、不動産であれば登記簿に記載された物件の表示を、動産であれば商品
名や製造番号などを記載します。

G収入印紙の貼付
 印紙の有無と契約書の効力には関係ありません。印紙がなくても契約は有
効ですが、印紙税法に違反します。また、契約書を複数作成する場合はそれ
ぞれに印紙を貼ります。貼りつけた印紙には契約書に使用した印鑑で消印を
します。

H後文
 契約が成立した旨や何通作成したかなどを記載します。

 ここに示したのは一般的に広く普及している書式です。原則としては契約書
の書式は自由ですから、どのように書いてもかまいません。
 しかし、後にトラブルとなり裁判で証拠として提出するような可能性がある場
合はきちんとした構成にしておいたほうが安全です。  


 −契約書作成の際の注意点−

 ここではドラブルを防止するために記載しておいたほうが良い条項を挙げて
おきます。

@契約の期間・履行の期限
 契約締結の日から1年間、〜年〜月〜日までにというように具体的に記載し
ます。

A解約・解除
 契約不履行などがあった場合に、履行の催告を行うこと無しに契約を解除
出来るとするか、催告を行ったうえで解除する事が出来るとするかを定めてお
きます。

B期限の利益(の喪失)
 期限の利益というのは、決められた日までは履行しなくていい債務者の利益
の事です。
 ここで定めておきたいのは、期限の利益の喪失の条項です。例えば代金を
分割で払う場合に、支払期日を一度でも守らなかった場合には期限の利益を
失い、即座に全額支払う。などとする内容です。

C損害賠償
 損害賠償額についても、契約期間や履行期限と同様に具体的に定めます。

D危険負担
 売買契約において、売主がその目的物を買主に引き渡す前に、売主に責任
のない事態で目的物が滅失した場合に、そのリスクをどちらが負担するかと
いうことです。

E担保責任
 売買契約において、目的物に隠れた欠陥(瑕疵)があった場合は買主が売
主に対して損害賠償を請求したり、その欠陥によって契約が目的を達成でき
ない場合は契約を解除する事が出来ます。これは民法に規定がありますが、
これを排除したりまたは期間を限定したりする事があります。

F保証・連帯保証
 必要に応じて保証人や連帯保証人を設定します。(保証人と連帯保証人の
違いは「貸し金、売買代金等の請求」の項をご覧下さい。)

G諸費用の負担
 その契約、取引を行うにあたってかかる費用をどちらが負担するかを決めて
おきます。

H裁判管轄
 争いが起こり裁判になった場合の、管轄権を有する裁判所を決めておきま
す。契約の相手方が遠隔地の場合には定めておいたほうがよい条項です。取
り決めがなければ相手方(訴えられる側)の住所地を管轄する裁判所になりま
す。

I規定外事項
 契約書の規定にない事が起こった場合は別途協議する旨を記載しておきま
す。

J公正証書の作成
 必要に応じて公正証書にする旨を記載します。  


 −危険な契約条項のチェック−

 取引においては様々な場面で契約を結ぶ事がありますが、後にトラブルが
発生するのはだいたいにおいて、契約書がないか契約書の中に不平等、不
当な内容が含まれている場合です。そこでここでは、契約書に署名(記名)押
印する前にぜひチェックしておきたい条項を紹介します。

@表現があいまいな条項

・「契約期間は1年間とする」・・・いつから1年間かはっきりしていない場合、契
約終了の時期(日付)についてトラブルになるおそれがあります。

・「〜は〜に対し代金および利息を支払う」・・・支払いの期日、支払いの方法
が不明確で危険です。

・「履行が著しく遅延した場合は、本契約を解除する事が出来る」・・・「著しく」
というのは抽象的です、人によって受け取り方が違うような表現は危険です。

A公序良俗に反する条項

 「殺人請負契約」「愛人契約」、というのは極端ですが、借主の困窮に乗じて
高利を払わせる条項や子供を出産したら会社を退職するとする条項も公序良
俗に違反しており、無効となります。

B法律(の強行規定)に反する条項(一例)

・金銭消費貸借契約における利息の上限は利息制限法という法律によって定
められています。
 元本が10万円未満の場合・・・年20%、10万円以上100万円未満の場
合・・・年18%、100万円以上の場合・・・年15%、となっています。これを超
える部分は無効になります。

 その他にも借地借家法の契約期間や更新の規定や民法の流質契約の禁
止の規定などに反する内容の契約も無効です。

*事業者と消費者が契約を結ぶ場合(消費者契約)は消費者契約法という法
律が適用されます。この法律が適用される契約においては、「事業者の債務
不履行により消費者 に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項」
などは無効になります。

 契約書の中の条項はそのひとつひとつがどれも大切です。あるひとつの条
項があったために(あるいはなかったために)損害を被るという場合もありま
す。契約書を作成する時、チェックする時に自身で判断できない場合、よくわ
からないことがある場合は専門家に相談するかご自身でよく調べる事が重要
です。



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