私の熱き想い
   大人の童話その1
     日本丸の航海
       
(落葉の願い)

嵐の海を財宝を満載した小さな船が闇雲に突っ走っている。
行き先も分からないその船の名前は「日本丸」。
今にも船が沈没しようとしているのに乗組員の士気は低く、スキを見ては
船倉にある財宝をかすめ取ろうとしている輩が多い。

いくら財宝を自分のものにしたって船が沈没してしまえば
何にもならぬことも分かっていないのだ。

航海長以下の船員も未熟で、ミスばかりしているのに
「神様、神様、嵐が去るように」と念じてさえいれば、
船は無事だと盲信しているし、船客も船が沈没する
危険も分からずに、食事がまずいとか、船員のサービスが
不足だと文句ばかりつけてくる。

そして肝心の船長はかけ声だけは勇ましいが、いざとなると
熟慮だけして決断出来ない。

暗礁に激突しそうになってから、船員を集めて鳩首協議、
皆の意見を聞いてからカジを切ろうとしたら、到底間に合うはずもない。

危機一髪の際には、的確な判断ができる船長にすべてを
託すべきであることは船乗りの常識といえるものだから、
危険を察知した一部の船員や乗客が、新しい船長に託すべきだと
言い出したところ、ノー天気な或る乗客が

「その候補者は傲慢で他人の言うことに耳を傾けないし、人に優しくない。
隠し子もいるらしいし、弟や他の人からの忠告も聞かず異性関係にも
兎角のうわさがあるから、船長として不適任だ」

と発言した事を聞いて、乗り合わせた新聞記者が大喜びで
記事を書き乗客達に配布した。

その候補者はそんな噂を一笑にふしたが、噂の隠し子は
稀代なペテン師であることがバレ、新聞記者は大恥をかいた。

私は思う。
かりに船長に隠し子があろうと、女関係にだらしがなかろうと、
いままさに船が沈没しようとする危機に際して、そんな私事はどうでもいい。

ただ危険を的確に回避出来る能力だけが
船長として必要な条件ではないのか。

かの山県有朋を思うがいい。
彼は史上最高額の公金横領の重大犯人であることは良く知られているが、
日本陸軍を創設し、列強諸国と互角に渡り合うことが出来るまでに我が国の
国力強化に貢献した功績がより高く評価されているではないか。

我が国のリーダーが沈没寸前の日本丸を船長としての専権を縦横に駆使して
沈没を阻止し、日本国の尊厳を護ってくれるならば、5億円や10億円の
ハシタ金を賄賂として受領し、私腹を肥やすことすら許したいと私は思うのだ。