やまぼうし自然学校 ちょこっとコラム Vol 12
〜山の冬支度〜
  
 

黄金色に輝くカラマツの黄葉が終わると山は晩秋となり、やがて冬を迎える。カラマツは「落葉松」と書くだけあり、松の仲間なのに落葉する。葉が針のように細い樹木は「針葉樹」といい、普通は秋に落葉しない。秋に落葉する樹木は「落葉広葉樹」といい、冬の寒さや乾燥から身を守るため秋に葉を落とし水や養分の吸上げを休む。一方、針葉樹は葉に極力水分を含まずに冬もそのまま葉をつけているものがほとんどである。樹木にも進化の過程で得てきたそれぞれの生き方がある。冬を迎えるに当たり、この時季になると樹木はそれぞれの方法で冬仕度をするのだ。

この樹木に合わせるかのように動物たちもまた冬仕度を始める。リスやノネズミはどんぐりを貯食し、食料の乏しい冬に備える。ノネズミ一頭が越冬するのに必要などんぐりの数はおよそ1200個だそうである。これだけの量のどんぐりを雪が積もるまでに集めなければならない。まずは巣穴に運び込み、入りきらない分は枯葉の下や地中に浅く埋めて隠す。

巣穴に貯めたどんぐりが減ってくると他の場所に隠した分をあらためて巣穴に持ってくるらしい。何ともけなげな行動である。    

最近山里に頻繁に下りてきて話題となっているツキノワグマは秋にたくさんの餌を食べて体内に脂肪を貯え休眠状態になる。クマの大好きな食料の一つがやはりどんぐりである。どんぐりのなるミズナラに登り、枝を引き寄せて折ってどんぐりを食べる。食べ終わるとその枝をお尻の下に敷くので、樹上に枝が何本も重なり、巨大な鳥の巣のようになる。これがいわゆる「クマ棚」である。

ツキノワグマは従来冬眠するとされてきたが、これは少し違って、「冬ごもり」すると言ったほうがふさわしい。「冬眠」とは体温や代謝が下がり昏睡状態になることをいう。

初雪の日にツキノワグマは一頭ずつ自分の巣穴に移動する。巣穴は木のうろなどである。時にはうっかり開けっ放しにしておいた炭焼き釜の中で越冬するものもいて、春先に炭焼き釜の前でばったりということもあるというからおもしろい。ツキノワグマの雌はその巣穴で普通二頭の子グマを出産するのだ。

他にもヤマネのように体温を下げて完全に冬眠する動物、ウサギやカモシカのように小枝や木の表皮などわずかな食料で冬をのりきるもの、鳥類・は虫類・両生類・昆虫それぞれに目を見張るような素晴らしいシステムやつながりをもって冬を乗り切る方法を獲得している。

晩秋から初冬の森は葉が落ちて一見枯れたように見えるが、実はこのように様々な命をつなぐドラマが存在する。四季折々、私たち人間を圧倒する自然。冬仕度に入り、歩けば落ち葉の“かさこそ”という音のする森の中で、これからもこの森の素晴らしさ、大切さ、怖さ、偉大さなどを多くの人たちと共有していきたいと思いを新たにしている。

               (森林インストラクター)


「主治医 ”自然賛歌 やまぼうし通信”」 2004年12月号 連載
NPO法人やまぼうし自然学校 事務局長 小松崎 昌美(森林インストラクター)
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