ハイアイ接眼鏡 
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 接眼鏡に必要な条件とは何だろう.

 もちろん「よく見えること」も重要だけど,人間が直接のぞくモノだから,「のぞきやすさ」も大事なことだろう.

 そのためには,ブラックアウトしにくいとか,良い見口がついているとか,いろんな要素があるだろうけど,ハイアイか否かで印象は大きく変る.

 ハイアイ(High Eye Point)とは,のぞきやすくするためにアイリリーフを意識して長くした接眼鏡を指す.

 特定の発明者が存在するのか否かはよく分からなかったけど,「望遠鏡光学」誠文堂新光社 吉田正太郎著には,1940年代からの実用例が色々と紹介されてい るから,考え方自体はずいぶん前からあったらしい.

 でも,天体望遠鏡用として広く普及したのは,1980年代の後半に入ってからだろう.

 何しろ,高い.

LVシリーズ 

ビクセン製 アメリカンサイズ(31.7mm径) 1990年
LV 20mm フルマルチコート みかけ視界 50度 定価¥13,000
LV 9mm フルマルチコート みかけ視界 50度 定価¥12,000
LV 5mm フルマルチコート みかけ視界 45度 定価¥12,000
画像
 この LV接眼鏡は1万円を超えるので,「安価」とは 言わないだろう。
 
 しかし,最近になって,ORION社や協栄産業からLVの廉価版も出たことだし,「準安価」ということで無理やり このコーナーに入れてみた.
 
 ツァイスサイズが まだ元気だった当時,この価格には少々抵抗があり,

 「高級品に頼るようでは,自作派の自分も堕ちたものだ」

 と思っていた.  (自作仲間にはそういう変な意地があった)

 それは置いておくとして,ビクセンの LVシリーズには,LV30〜LV2.5まで,12種類もある.

 良く知られているように,このシリーズの最大の特長は,どの焦点距離であってもアイリリーフ が 20mmあることだ。

 これは,目当てゴムを折り返せば,メガネをしたまま覗けるほどのハイアイで ある。 

 LV 5,LV 9は,焦点距離 約 18mm(実測)のアストロンプラン型とでも言うべき 3群5枚の接眼レンズに,小型のバーローレンズを組み合わせた構成になっている.

 LV 20mmは,上記の18mm接眼レンズに弱凹レンズをプラスして,パワーを落とした作りになっている.
 
 (ちなみにLV 30,LV 25は持っていないが,バーロー無しとの事.)

 バーローレンズと言っても、ランタンクラウン系の高価な硝材を使い、各焦点ごとに専用に作られた特殊なものだと謳われている。

 ケルナー式では実用にならないくらいの短焦点の反射(10cm F4.3)につけても なかなか良い像を結ぶので,重宝する.
 
 短焦点の屈折(F6.4)に対しては,惑星などではオルソよりコントラスト でやや劣ることがあるものの,通常の使用では対等と言っても良い.
 
 カセグレン系では,所有したMac90の 性能自体がイマイチだったので,オルソに較べどうのこうのと言えるほどの確証が無い.

 総じて周辺まで像が安定し,ハイアイなので,もちろんのぞきやすい.

 LVは,各社から出揃ったハイアイの中でも安く,おまけに軽い(150g)という特長があり,自作機にありがちなひ弱な接眼筒でも耐えられる.

 みかけ視界が45〜50度と,あまり広いとは言えないのが欠点だけど,最近,広角タイプのLVW(65 度)というものが出て,それを補っているようだ.

 但し,価格は2倍,重さは3倍になってしまうので,小型機にはバランスが悪いように思え、購入に至っていない。

番外品...売ってる製品ではない
Hi-K10mm
 1997年 アメリカンサイズ 半自作
HI-K  
 ジャンク品として入手したスポッティングスコープ用か何かの接眼鏡.これを改造し,31.7mm径に加工したアルミパイプをつけたもの.
 
 分解して調べると,ケルナー20mm(瞳径から実測)をベースに,小型のバーローレンズを内蔵したハイアイ接眼鏡だった.

 Hi-K(ハ イケルナー)とは勝手に付けた名前.

  先端に バーロー系レンズがある。

 アイリリーフは約 15mm,みかけ視界は 50度.
 
 口径10cm F6.4屈折では,LV 9mmに負けないくらいよく見えるが,コートされていないレンズもあるためか,ゴーストも出るし,ややコントラスト で劣るかな.

 口径10cm F4.3反射では,周辺像でLV 9に完敗.

 片やアストロプラン型、こなたケルナー式がベースで,かなわないようだ.

ハイアイ接眼鏡についての私見

 旧来の接眼鏡では,アイリリーフは,せいぜい接眼鏡の焦点距離くらいにしかならない.

 接眼レンズによる対物レンズの結像位置だからだ. (詳細は接眼鏡の原理を参照)
 
 したがって,短焦点になると,アイリリーフが長いとされるオルソスコピック接眼鏡であっても覗きにくくなる.

 そこで長焦点接眼レンズにバーローレンズを加えて,アイリリーフを確 保したまま,合成焦点距離を短くしたのがハイアイ接眼鏡の原理.
 
 今では似たコンセプトの製品がだいぶ出てきているが,明確なコンセプト,比較的低価格の設定,豊富なラインナップでハイアイ接眼鏡を一挙に普及させた LVシリーズの功績は大きいと思う。

 (もっとも,従来の安価な接眼鏡を衰退の道へ追いやったとも言えるので,自作ファンにとっては,ちょっと複雑。) 
 
 また,ハイアイならではの欠点もある.

 レンズが多いので,光量や,コントラストの点で不利だし,内部のレンズの些細な汚れやゴミが干渉して光ることがあり,とても気になる.(特に LV5)

 望遠鏡の光軸出しが不完全な場合,従来の接眼鏡より影響が大きいように感じる.(バーローで拡大してるからだろうか)

 そして価格.

 あるショップの人に

 「これからはもう,従来の接眼鏡は,要らなくなるね」

 と言ったところ,

 「それは一部のマニアの考え方.1万円以上もする接眼鏡は,とても売りにくい」

 と言われ,考え方がマニアになってしまっていたことを反省したことがある.

 それならば,安価なハイアイが出来ないものか.

 ケルナー式は安いので,これにバーローレンズを組み合わせれば...と考えて,ガラクタレンズで実験したが,うまく行かなかった.

 そんなおり,上のようなジャンクを見つけ,これがもし安価にできたら,ハイゲンスの代わりに入門機につけて,楽しい星見を提供出来る.

 そうすれば,押し入れ行きの運命から逃れられるのでは?...などと考えていたもの.

 (2000-1-3 掲載)

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