平行器の製作

戻る / return

平行器とは?

「長年使っている双眼鏡だが,最近,何だか目が疲れる」
「中古双眼鏡を買ったが,何だか2重に見える」
双眼鏡をのぞいたとき感じる違和感は「光軸ズレ」が原因であることが多い。
光軸ズレとは,左右の視界が一致していない状態です。
ただ,人間の両目には柔軟性があるので,光軸ズレを正確に見極めるのは難しいです。
(たとえば,誰でも「寄り目」などは,簡単に出来てしまう)
「光軸がズレているような気もするけど,確証も無い。修理に出すべきか否か?」
平行器があれば,光軸ズレを確実に見極めことが出来ます。
今回,これを自作する方法を考えましたので,ご紹介したいと思います。

原理

平行器とは,人間の目の間隔分,離れた窓が2つあり,内部のハーフミラーで一つに合成して取り出す構成になっています。
つまり左右の像を一つの目で見るので,両目で見た場合に生じる曖昧さがありません。
画像
 双眼鏡のJIS規格でも,光軸検査機と共に,光軸ズレ(「光軸平行度」)を見極める正規の道具として,指定されていま す。
 平行器の実物を使う機会に恵まれたことがありますが,定期校正を前提とした由緒正しい測定器といった感じで,我々一般人が買うようなシロモノでは無いよ うです。
 「そんなに高くないよ,10万円しないから」と言われましたが,一般人には十分,高いです。
 そこで,自作を考えてみたいと思います。
 平行器は,ビームスプリッターとプリズムが一体となった下図のような構造を持つようです。

図平行器の光学系(含む推定)

光学部品が一体ですから,狂いが生じにくいという利点を感じますが,手に持つとズシリと重く,また高価につく方式と思わ れます。 
ためしに手元にあるエドモンド社のカタログで,このようなプリズムを捜すと,良いサイズが無い上に,一個5〜6万円もします。
そこで,簡単に,安く自作出来る平行器を考えてみた。

試作機の構造

上図のプリズムや,ビームスプリッター単体は高価です。
倍率が掛からない光学系なのに,市販の光学部品は,そもそもオーバースペックと思います。
そこで,ありきたりの直角プリズムと安価なハーフミラーで構成したのが,今回の簡易平行器。

構造図
 簡易平行器の構造
(パーソナルCADによる画像)

光学部品が分離したため,初期調整は必要になるし,本物よりズレやすいことになりますが,趣味用途で使う分には十分と思います。

作り方

下の方で,設計図を用意しましたので,参考用としてご利用下さい。
図面通りでも機能する物が作れますが,アレンジしてもっと便利な物へ発展させてもらえればと思います。

必要な道具

金ノコ,ドリル,金ヤスリ,タップ(M2,M3),万力,ペンチ,ハンダゴテ

必要な材料

アルミアングル,アルミ板,真鍮板,プラ板,ネジ(M2長さ4,6,8,M3長さ6),接着剤,黒塗料
サイズは,図面をご覧下さい。

必要な光学部品

試作機は,双眼鏡やカメラの廃品から取り出したものを利用しています。
図面の方は,EDMUND製の部品が利用出来るよう修正しました。型番は図面に記載してあります。気になる値段は
直角プリズム:¥3500
ハーフミラー:¥5000
となっています。(型番と値段は,エドモンド社の2003年度版のカタログによる。)
(なお双眼鏡の廃品から取り出した直角プリズムがまだ手元にあります。自作を考えている方に差し上げます。)

製作

 ノコギリ,ドリル,ヤスリによる手加工だけで作れます。(図面に公差が入っていないのは,そのため)
画像図面コピーを材料へ貼って,ケガキを省略。最初に穴あけです。
穴を開けたら,糸ノコで切り出しです。画像プリズム台

画像ミラーベース:頭を落したM2ネジ(赤)をハンダ付け(もしくは瞬間接着剤で固定)し,スペーサー(青) を貼ります。

画像ミラー台にハーフミラーを接着します。ダメ押しで,バスコーキング剤を穴越し に付け ています。

画像プリズムを接着し,これもダメ押しでバスコーキング剤を穴越しに付けています。

画像双眼鏡のジャンクを使ったので,コバが丸い。

 画像部品をベースに取り付けて完成です。
 部品に高精度を要求しない代わりに,最後に「調整」が必要となる設計なのです。
 もちろん,出来るだけ,正確に作ったほうが良いのは言うまでもありません。

調整

 遠くの物体を 平行器で見ます。(数キロ 100m以上離れた物体。「月」なら文 句なし。)
画像
 すると,像が2つに分かれて見えます。
 これが一つに重なって見えるようにハーフミラーを調整します。
 この平行器のハーフミラーは,左右方向と上下方向に微調整出来るようになっています。
画像左右方向の調整:青ネジを緩め,赤ネジの押し引きで調整する。
画像上下方向の調整:赤が押しネジ,青が引きネジです。

 調整ネジは,強く締めると部品が変形しますので,ほどほどにし,調整が済んだらネジロック剤を塗布し,カバーをネジ止 めし,完了です。

画像射出窓側
画像入射窓側

使い方

 使うときは,狂っていないか必ずチェックしてからにします。
 (私の平行器は,調整から3ヶ月経ちますが,異常無し。衝撃などを加えない限りは,そうそう狂わないようです。)
 双眼鏡の接眼部へ平行器を当てます。
画像
双眼鏡を出来るだけ遠い物体へ向けます。(JIS規格によれば,最低でも500m以上離れている必要がある。)
画像
平行器をのぞくと,左右の像が重なって見え,その状態から軸ズレの様子を知ることが出来ます。

画像

JISでは,眼幅70mmと60mmの双方で,チェックすることになっています。
光軸を完璧に一致させることは困難ですから,倍率に応じた許容量がJISで規定されています。(光軸平行度許容量
双眼鏡の光軸修正は奥が深い部分があります。
詳細は,双眼鏡を修理した時の記事を参照して下さい。(「双 眼鏡を修理する〜光軸修正編
この平行器は,本物と同様に右の像を左の像へ重ねる方式です。
よって,右の像は,ずいぶんと長い経路を経て到達するため,ごく一部しか見えないのが欠点です。
接眼レンズへ当てる位置をこまめに変えて像を見つけるしかありません。
この平行器の構成上,避けられない問題と言えますが(*),目当てゴムを折り返しておくと,多少は緩和されます。
(*)レンズ系を組み込んで見やすくした改良型の平行器もあるようですが,現物を見たことが無いため,詳細は不明です。


設計図

1) 図面のダウンロード

図面の一括ダウンロード (88KB)
・・・クリックして「ディスクに保存」を選択して下さい。

 zipファイルですので,ダウンロード後, 解凍して下さい。画像化した10枚の図面となります。(gif)

2) CADデータのダウンロード
 最近は安価なパーソナルCADが多数出ています。お持ちの方は,図面データを直接,取り込めます。

平行器のCADデータ (192 KB)
・・・クリックして「ディスクに保存」を選択して下さい。

 zipファイルですので,ダウンロード後,解凍して下さい。約2MBの DXF形式のファイルとなります。
 DXF形式のファイルは,大半のCADで開けると思いますが,文字化け等が発生した場合は,1)の図面ファイルと合わせてご利用下さい。 


参考文献:「JISハンドブック光学機器」(日本規格協会),「双眼鏡の全て」(日本望遠鏡工業 会),エドモンドカタログ2003年
(2005-03-28掲載,04-29一部修正)
戻る / return