No.15 舘畑さん作
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車椅子用接眼部延長装置
全体図
 
拡大図
 背の高いニュートン式反射望遠鏡の接眼部を、車椅子のように座った姿勢でも楽に使えるように、テレセントリック光学系によって接眼レンズの位置を下げる付属品を作ってみたので紹介します。
 
  左の望遠鏡が私の32cm反射望遠鏡(自作)で、2000年の石川町スターライトフェスティバルで展示したものです。

 もちろん、これは自分が立った姿勢で使うように作ってありますので、接眼部は随分と上にあります。

 ピンクの筒が、今回の延長装置です。

 新しい接眼部は、マウントの高度軸のそばまで下がって出ています。

 当たり前と言えば、当たり前ですが、子供でも楽々背が届きます。
 
(実は子供さんに見せた上げるには、脚立・踏み台が必要で、暗闇では怖いのですよ、自分がですけど。)
 
 普通のニュートン式の接眼部から、直角天頂ミラー(2インチサイズ)で一度直角に折ります。
 
 ミラーの入り口あたりにフィールドレンズが、さらに灰色の部分辺りにリレーレンズが入っています。
 
 ピンクの部分は塩ビパイプにカラーシートを貼っています。
 
 このカラーシートは車屋さんで購入したのですが、色は店の女の子に選んでもらいました。

 何に使うのか言わずに選ばせたので、いや〜ぁ、凄い色を選んでくれたものだぁ。(^^;

←拡大図
 
 リレーレンズには、大判カメラ用のフジナー180oF4.5と高橋のフローライト6cmを使っています。

 なにしろレンズ枚数が多くなりますし、収差は全て加算されます。惜しげもなく良いレンズを投入します。
 
 下まで光を導いたら、もう一度直角に折り曲げて接眼レンズを付けてます。
 
 写真で、付けているのは生産中止品のマスヤマ35oです。

 
 最初に「テレセントリック光学系」について少し説明しましょう。
 
 一般に天体望遠鏡は、接眼レンズの直前に焦点像を作りますが、この焦点像を2回作って接眼レンズに導く光学系です。
 
 馴染みのある例としては、プリズムを使わない、地上用の長い望遠鏡や、銃の照準用の望遠鏡(ライフルスコープ)があります。

 今回の装置の構造を模式的に下図に示します。
構造図  主鏡から斜鏡を経て、フィールドレンズと示してあるレンズの中で、一度焦点を結んでいます。
 
 それからリレーレンズによって、アイピースの前にもう一度焦点を結んでいます。

 リレーレンズは前段(リレーレンズ(1) )が、最初の焦点からの光を、もう一度平行にすることで、コリメータレンズと呼ばれることがあります。

 対して後段(リレーレンズ(2) )は、平行になった光を、もう一度焦点に結ぶことなので、第2対物レンズとしておきます。
 
 コリメータレンズは、カメラ用のテッサータイプ(3群4枚)のがフジナーですが、注意するのはレンズのお尻を主鏡側に向けることです。
 
 第2対物レンズは、高橋のフローライト6cmの対物レンズです。

 こっちは前を主鏡側に向けます。
 
 コリメータレンズ第2対物レンズのは間隔を開けることが出来ます。
 
 ただし大きく開ける時は、必要とする視野角だけ、第2対物レンズの方を、少し大きくしないと、周辺減光が起きますので注意します。

  
 フィールドレンズは、主鏡からの射出瞳位置をコリメータレンズに一致させるためにあります。
 
 光学的には、ほとんど収差の影響が無いので,通常ただのメニスカス単レンズを使いますが、適当な物が無かったので、双眼鏡の対物レンズを使っています。
 
 実は、このレンズによって、テレセントリック光学系の応用範囲が、とても広くなるのです。
 
 さて、この様に焦点位置を、大きく引き延ばしたい場合に、誰でも考えるのが、バローレンズで一度,光を平行にしてしまえば、いくらでも延ばせるのでは?、というアイデァです。
説明図  しかし、良く考えて下さい。(左図参照)

 バローレンズで平行まで光を広げることは、ガリレオ式望遠鏡になっているということですよね?

 ガリレオ式望遠挙の視野の狭さは、御存じでしょう?
 
 これは、射出瞳がバローレンズ(ここでは凹接眼レンズ)の、ずっと内側に小さく出来てしまうためです。
 
 すると第2対物レンズは、この遠くて小さい射出瞳を通して外を観察しなければなりません。

 となると第2対物レンズは、よほど巨大にしないと、実用的な視野が確保できなくなってしまうのです。
 
 そして、今回のフィールドレンズを使ったテレセントリック光学系では、射出瞳がコリメータレンズ位置に出来ていて、その大きさも一致するようにしてあります。
 
 ですから、第2対物レンズ以降は、独立した望遠鏡と考えれば済みますので、設計するのも作るのも容易になるのです。

 さて、対物レンズ(主鏡)に対するフィールドレンズコリメータレンズの焦点距離、必要なFなどの計算の仕方を簡単に示しておきます。

 おおざっぱに言って、後段の2種のレンズのFは対物レンズのFと同じくらいが必要です。
 
 わたしの32cmは、F4.5ですので、どうしてもカメラレンズくらいの明るさが必要になってしまうのです。
 
 そして、第2対物レンズは、口径に条件が付きます。

  それはコリメータレンズの口径より大きいことです。
 
 もし、小さい場合は、対物レンズを通過した光の一部(外側)がケラレてしまいますが、余裕があれば何でも可です。
 この方式の応用範囲は、色々と結構考えられます。応用例

 後ろに望遠鏡を追加したのが、今回の応用の仕方ですが、この場合、望遠鏡全体の倍率は、コリメータレンズまでの倍率(m)に、追加する望遠鏡の倍率を乗じたものになります。

 コリメータレンズまでの倍率とは、普通の望遠鏡の倍率の計算と同じです。(コリメータレンズを接眼レンズと扱って計算します)

 興味ある応用としては、一眼レフなどのカメラを付けると面白いなぁ、と思っています。

 この時、きちんとレンズが選択されていれば、カメラレンズのF値そのままの明るさになります。
 
 つまり,仮に F1.8の標準レンズを付けた一眼レフを接続すると、全体では口径32cmF1.8(約f=580mm)の超大口径望遠レンズとなります。

 もしも天文台の大型望遠鏡なら、シュミットカメラを付けることも可能でしょう。

 実際、旧ソ連の6m反射望遠鏡では、この方式で F1.0のシュミットカメラを付けて観測に使用していたそうです。

 もちろん、この場合は口径 6m F1.0のアストログラフになるわけです。
 
 また、最近流行の対物レンズが左右接近した双眼鏡をとりつけ、左右の対物が射出瞳経(今回のは4cmあります)の中に納めることができれば、このまま簡便な双眼装置となります。

 左右の視軸の精度は、そのままですから、かなり高精度の双眼装置になります。 
 
 こんなところが、テレセントリック光学系の面白いところでしょう。

 さて、肝心の見え味ですが、何分レンズが多くて・・・・フィールドレンズが1群2枚、コリメータレンズが3群4枚、第2対物レンズが2群2枚ですから、全部で6群8枚です。

 作る前から心配していましたが、さすがにコントラストが落ちます

 32cmのダイレクトの焦点に接眼レンズを置くニュートン式に比べると、ネムイ像になります。

 月面や惑星を見てみると、実質、コントラストは15cmくらい、分解能は20cmくらいのニュートン式反射で見ている感じです。

 もちろん光量は、ほとんど変わらない感じですが、やはりガラスを8枚重ねてる実感がします。
 
 たぶん三鷹光器のワンダーアイ(商品名)も、たぶん、こんな見え味だと想います。
 
 しかし、当初の目的は果たせたと思います。特に接眼部が高度軸の近くに来たので、大変に使いやすくなります。
 
 小さい子供さんが多い観望会では、活躍してくれると思います。

 (2001.1.9掲載)

貴重な作品のノウハウの公開です.ありがとうございます.m(__)m

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