やまだマン的部屋
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1.横山光輝特集
三国志
作者 横山光輝
出版社 潮出版社
巻数 全60巻(コミックス版)
いわずと知れた横山三国志。読んでいない人は友達に借りてでも読みなさい。あなたの周りには必ず一人か二人は持っている人がいるはずです。ほぼ吉川英治作の『三国志』を基に描かれています。したがって、原作の『三国志演義』には忠実とはいえません(特に終盤、孔明の死後は詳しく描かれないところなど)。もちろん歴史書である”正志”『三国志』を基にしているわけではないので、歴史的事実として鵜呑みにしてはならないが、これを読んだ読者にとっては、この物語がやはり三国志として、かの時代の真実となってしまうのである。とくに小中学生時代にこの作品に出会うと、以後の人生に深く影響を与えてしまう場合もあるほどだ(例えば大学で歴史学を学び、中国史を専攻してしまうなど)。1971年に連載が始まり、完結までに15年以上を要した。しかし、読み始めたらとまらなくなるほど面白い。もし、誰かが学校に持ってきたりなどすると、授業中に読みふけることになる事態は避けられまい。全60巻もあるが、飽きることなく読み進めることができるだろう。文句なしにお薦め度最高点を与えることができる。ひとつ難点を挙げるとすれば、やはり全60巻もあるので、揃えようとしたら大変なことか。友達に借りるにしても、はっきりいって重い。最近は文庫版で全30巻で出ているが、それでもなかなかの重量となる。
忠実度 ☆☆☆
衝撃度 ☆☆☆
お薦め度 ☆☆☆☆☆

史記
作者 横山光輝
出版社 小学館
巻数 全15巻+列伝1
中国の歴史書『史記』をもとに漫画化。巨匠の新たなライフワークとなるはずであったが、連載誌であった『ビックゴールド』が廃刊となってしまったため、列伝の方はなにか不完全燃焼の感がある。小学館さん、もうちょっとがんばって欲しかった。原作である2100年も前の歴史書に忠実に描いているにもかかわらず、その漫画としての面白さは抜群である。これは原作である『史記』が歴史書というよりはむしろ司馬遷の主観から見た歴史小説といった意味合いが強いためでもあろう。皆さんも聞いたことがあるような故事が次々と登場するので、「その言葉の語源はねえ『史記』の……」なんていう風に友達に薀蓄をたれて優越感に浸るという用途にも使える。高校生ぐらいの方なら、一読しておけば、漢文の授業や世界史の授業に役立つこと間違いない。『項羽と劉邦』ではあえて描かれなかった、前漢統一後の粛清なども載っているので、『項羽と劉邦』を読んだ方は読み比べてみるのも面白いかもしれない。但し、原作に忠実に作られてはいるが、原作の全てを漫画化したわけではない。これは連載誌が廃刊になったこともあるが、むしろ漫画にしても面白くない部分は端折ったと考えるほうが妥当であろう。
忠実度 ☆☆☆☆
衝撃度 ☆☆☆
お薦め度 ☆☆☆

チンギス・ハーン
作者 横山光輝
出版社 秋田書店
巻数 全5巻(文庫or豪華版)
のちにチンギス・ハーンとなり、モンゴル大帝国を築き上げるテムジンの物語。史実に忠実に作ってはいるのだが、なんだか人物描写が希薄なので、キャラクターに感情移入がしにくい気がする。漫画としての面白さはいまいちだが、このあたりの歴史を手っ取り早く知りたい人なんかにはお薦めの書である。テムジンの成り上がり人生はかっこいい。青き狼と白き牝鹿の伝説も神秘的だ。これらの魅力的な要素を生かしきれなかったのが残念でならない。
忠実度 ☆☆☆☆☆
衝撃度 ☆☆
お薦め度 ☆☆


項羽と劉邦
作者 横山光輝
出版社 潮出版社
巻数 全21巻(コミックス版)
物語の始まりは中国最初の統一王朝秦の始皇帝。彼の没後、大内乱を治めていくのが項羽と劉邦の二人。ついには劉邦が全国を統一し、漢王朝を建てる。三国志と比べるとすこし認知度に欠けるが(おそらく○栄のゲームソフトの普及率が要因であろう)、韓信や張良など魅力的なキャラクターが続々と登場する(張良の顔は孔明瓜二つ、智将は顔が似てくるものなのか?)。項羽と劉邦のリーダー像は対極的だ。すべて自分が取り仕切っていくタイプの項羽と部下の志をうけいれる大きな「器」としての劉邦。まるで童話の『北風と太陽』のようだ。結果として劉邦が天下を取ったので、項羽のほうが批判的に描かれがちであるが、北風が荒れた大地をきれいにするかのように、乱世においては彼のような強いリーダーシップが必要であったのではないかと思われる。劉邦は北風がきれいにしてくれた大地をてらす太陽のように、項羽がお膳立てしてくれたおかげで全国を統一することが出来たのだ。乱世を治めるなら項羽型、太平の世を治めるなら劉邦型のリーダーが望まれるが、現代日本社会ではどうやら項羽型が必要なようだ。二人の物語なので、統一後の粛清は省略されている。この粛清については同時期に連載していた『史記』の方に譲っているが、それは『史記』が世の無常感を表すといった性格を持つ歴史書であるためかもしれない。
忠実度 ☆☆☆☆
衝撃度 ☆☆☆
お薦め度 ☆☆☆☆

水滸伝
作者 横山光輝
出版社 潮出版社
巻数 全8巻(コミックス版)
横山光輝初の中国もの。そういう意味で考えると意味深い作品である。原作はもちろんあの中国三大奇書の一つ『水滸伝』。ただし、内容はかなり駆け足で、端折ってある。それは仕方がないにしても、問題は梁山泊に集まる好漢たちの描かれ方である。少年向けに判りやすくするために、止むに止まれずに犯罪に走った正義の賊集団という風に描かれているが、そうしたいわば「教科書的」な描写が原作の荒唐無稽な痛快さを消してしまっているような気がする。原作の水滸伝の好漢たちは、善とか悪とかいった既存の価値観の外側にある破天荒な人物たちであり、あらゆる意味で「アウトロー」なのである。むしろ、常識的な一般人から見たら「悪」であると言える。例えば、関勝という人物を梁山泊の仲間に引き入れようと罠を仕掛けるにあたって、李逵という好漢は何の関係もない子供をいとも簡単に惨殺している。そしてそれを他の好漢たちも別になんとも思っていないのだ。このようなむちゃくささが水滸伝世界の魅力であるはずなのだが、横山水滸伝ではそこが表現できていないと思うのだ。ただ、原作を読むのはとても面倒くさい。そこで手っ取り早い水滸伝入門書としてなら本書は非常に有用である。
忠実度 ☆☆
衝撃度 ☆☆☆
お薦め度 ☆☆

戦国獅子伝
作者 (画)横山光輝 (作)辻真先
出版社 双葉社
巻数 全5巻(文庫版)
物語はフィクションであるが、基本となっているのは『史記』にも描かれた。孫子(孫賓)とホウ涓のストーリー。主人公は斉の鬼王の息子文竜、そして彼に付き従う獅子の崑崙、義兄弟の武虎。侠客として生きる彼ら世界はまさに漢と書いて「おとこ」と読むといった感じ。斉に恨みを持つ宿敵の怨黒雲、文竜に夫を殺された玉燕との恋、さらにそこに伝説上の人物老子も加わってくるなどキャラクターも魅力的。この作品で重要なのは、横山作品にはめずらしくベッドシーンなどSexに関わる部分が描かれていること。青年誌連載ということもあるが、他の作品、特に『水滸伝』で描いてくれなかった、暴力や欲望を剥き出しにした荒唐無稽で破天荒なパワーに満ち溢れていて、「教科書的」な偽善さは見えてこない。横山光輝の最高傑作といっても過言ではないだろう。横山光輝ファンなら是非一読することをお薦めする。以前は全7巻のB6判で出ていたし、ワイド版という全3巻でまとめられているものも出たことがあるが、いずれも絶版。現在は全5巻で文庫版が出ているので、それが一番手に入りやすいだろう。
忠実度
衝撃度 ☆☆☆☆☆
お薦め度 ☆☆☆☆☆

この他にも『徳川家康』『織田信長』『伊達正宗』『武田勝頼』『豊臣秀吉』などの日本史伝記ものが多数あるのですが、ここでは紹介しきれません(と言いますか、まだ集めてません)。それと、まだコミックス化されていない『殷周伝説』という作品があります。封神演義や史記をもとにした殷周革命のお話。早急な単行本化が望まれます。

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