声の“道標” 

    '99、樽前山は火山活動が活発になり、入山は自己規制になってました。(しかし、行った)
    これはそれよりさかのぼる事、3年。'96の秋の事です。

    その日は、勤めていた会社の観楓会でした(かんぷうかいって、本州の方には馴染みのない言葉なんですって?)
    場所は、支笏湖畔の温泉。皆は、会社からバスで出発したんですが、次の日、山に行く予定の
    私は自家用車で、ホテルに駆けつけたのでした。私は、班長で上司が班長のイメージで付けてくれた
    グループ名はサンフラワー(向日葵)、、、。美しい。でも、それよりサンフラワー=山フラワー=山の花?
    と都合の良い解釈をしてすっかり気分を良くした私(単純)

    しかし、次の日が山だろうと飲まずにいられないのが観楓会って奴なのね?
    しかも、日本酒好きな私の為にちゃんと酒も用意してくださってる。「頂きます。」
    って、飲んだわよ。飲むわよ、デロデロンになるまで。でも、次の日、一緒に飲んだ面々が朝食に出てこないのを
    尻目に朝から、メシを2膳、おかゆを3膳。バイキングのおかずをてんこ盛り。
    味噌汁2杯、コーヒーにミルクにオレンジジュース、お茶を2杯。お腹がパンパンになって皆より一足先に
    イってキマ〜っす!と出発した元気な私。同僚のMちゃんを連れていざ!出陣。

    ところが、観楓会って楓を観るってなぐらいで秋なんです。季節は11月中旬。
    いくら低山の樽前とは言え山は初冬、山頂付近には積雪が見える。
    7合目の駐車場に到着してトイレを済ませ、車に戻ると「おや?」

    やってしまいました。洒落にならない、始めての“キー閉じ込み”
    Mちゃんと2人で「ど、どうしよう、山に登るどころじゃないぃ」と、真っ青に!
    当時、持っていたのはPHSのみで携帯もないし、JAFに連絡できる場所まで歩くには遠い。

    その時、小屋が目に付きました。通常であれば、とっくに閉めていてもオカシクない。
    しかし、祈るようにドアをノックし入っていくと管理人とおぼしきオジ様が、、、。
    「あの、、、車の鍵を綴じ込んでしまったので下に連絡したいんです。電話があったら
    お借りできないでしょうか?」「あぁ?鍵?おぉ、ちょっと待ってな!」
    そして、なにやら工具を手に出てらして私達の目の前で10分程で鍵を開けてくださったのでした

    「凄い!天才!」感動する私達に「やぁ〜、よくいるんだわ。あんたらみたいな人」
    と、オジ様は涼しい顔で小屋に戻って行きました。
    安心した私達は、お礼を言ってやっと登山を開始しました。

    暖かい格好をしているもののMちゃんのホッペは真っ赤。
    雲は遥か彼方にあるものの、以前訪れた時にも外輪山のふちでガスに巻かれて断念した私。
    行動は迅速にしつつ、雲の動きと目標物の確認を怠らないようにして
    西山と東山のピークを風にあおられながら、初めて踏んだのでした。
    (Mちゃんは元はテニス仲間なので、体力はある方だったのが救いかも)

    しかし、雲は思ったより速かった。あっと思った時には既に手遅れで
    見る間に私達を回りの景色から覆い隠してしまったのでした。
    始めての山中でのガス体験。しかも、ここは、迷いやすいので有名な樽前山の鉢の中。
    足元は雪で、登山道はあってないような物。

    ふと見ると足元には踏み跡もない。
    「ガスが晴れるまで、少し休憩しようか」と勤めて明るく振舞うものの、どんどん深くなる霧。
    そして、11月の山は私達の体温を確実に奪って行くのです。

    「Mちゃん、このままじゃ、ヤバイから道を探そう!道標は、ここにはないから
    取り敢えず、声だして私がここの回りで踏み跡を探す。そんで、確実な所に来たら
    呼ぶから、声のほうに来てもらって、それを繰り返せば大丈夫!
    黙ってここにいても、凍えちゃう!おおよその方向の見当はついてるから信じて?」
    「うん、分かった。」視界は5M程しかない。(行くしかない!)

    そこから「お〜い、聞こえるぅ?」「大丈夫だよぉ!」を繰り返しながら、
    やっと踏み跡を見つけるまで10分。ソコまで彼女に来てもらい、ソコからまた
    【探索衛星“山女”発信】を続けて、、、気が付くと少し離れた所にぞろぞろと人が、、、。
    みんな、ガスで迷った人達だったみたいで、私達の声を道標に集まってきたみたいで
    私達が移動すると一緒に着いてくる。

    (いいのかぁ〜??私らが迷うとあんたらも迷うんだじょ?)と思いつつ
    地図の大体の地形と、ガスる前の方向の記憶でなんとか外輪山の本物の道標へ
    辿りついたのでした。時間にして30分ぐらいだったのですが、1時間ぐらいに感じたよ。

    ほっとした、私達が休憩してるのを尻目に小判鮫御一行様は下山して行きました。
    「助かったねぇ、でもあの人達、何?」とMちゃん。
    「仕方ないよ、きっとワラにもすがりたい気持ちだったんだよ。」
    むっ?とすると私達はワラか?自分で言っておきながら不機嫌な私。

    府に落ちない気分のまま、私達は下山したのでした。
    小屋に、お礼のジュースを持って行くとソコは既に鍵が掛かって閉じられてました。

    助かって良かった。この山でのエピソードは他に、「お汁粉とヘリ」でも報告してます。