杏仁豆腐の友情


   
一宿一飯の恩義って昔から言いますけど、私も頂いたメシの恩は(ダケは?)忘れません。
   初めて、山で人のメシ見て感動したのが、名古屋のN夫妻のメシでした。
   旦那は、私と同じ年で学生の頃からの生粋の山屋。
   奥さんは、これまた山岳用品店で働いていた生粋の山屋。
   そんな2人だから、出会ったのも山という私の理想を絵に描いたような夫婦。

   さて、その2人と更に私が出会ったのは、'98.トムラウシのお膝元、ヒサゴ沼のテント場なのです。
   この日はとんでもなく真夏日!暑さに弱い上に、初めて8時間を越す行動時間に
   ほぼ予定通りにテント場に着いたものの、私はバテバテ、、、
   ふらふらしながら、テントを設営しておりました。
   テントの設営場所を選ぶポイントは、出来るだけ女性のいるパーティの側。
   かと言って、この時点では私はN夫妻には気付いてませんでした。
   たまたま、途中一緒だった御夫婦のテントが目に付いたのでそこにしただけなのですが
   これが、縁結びの神様がくれたチャンスだったのです。

   テントを張って、一息、、、さぁ、メシを作るか、、、とピョコっと顔を出しますと
   横のテントから可愛いお嬢さんの顔が覗いている。「こんにちは!」と元気に挨拶すると
   あちらも、「こんにちは!」と元気。(おぉ!女のコの単独かしら?ドキドキ)
   と、期待したのも束の間。彼女の後ろからこれまた元気そうな男性が、、、
   うっカップルやんか。「こんにちは!一人?」とは男性の方。「そうですぅ〜」

   お互いのテントの前で食事作りが始まりました。この頃の私は自分の荷物で手一杯。
   それに酒も担いでいたから、持って行く物は貧租そのもの。でも、隣のテントは良い匂い。
   つい、覗きに行ったりなんかして、、、(物欲しそうだったかも)
   そして、テントでゴロゴロしていると「コンコン」と呼ぶ声。(おや??)っと開けると
   ニコニコしながら鍋を片手に彼女が、、、「杏仁豆腐食べませんかぁ?」と立っている。
   「あ、、、杏仁豆腐?ですか??」「はい、一杯作ったので良ければどうぞ」
   覗き込むとンマそうな白い物体がフルーツとシロップに揺れている。
   「あ、、、頂きます!!」鍋を覗き込むのとほぼ同時に答えていました。

   それが、ナントもンマイ!!疲れ切った体にジ〜ンと染み入るンマサ。
   その後も何かと会話を交わし、すっかり打ち解けた私達。同年代という事も手伝って、
   酒も飲まないのに、なんだかすっかり楽しくなってしまいました。
   次の日、ヒサゴにもう一泊する私は朝寝坊してしまい、目覚めるとテント場は静まり返ってました。
   (やばい!)早速、目標のトムラウシに向かって出発すると向こうからN夫妻が。
   聞けば、トムラの途中まで行って来たが時間がないので撤収して天人峡へ下山するとの事。
   そこで、昨夜のお礼と挨拶を述べて別れたのですが、フィルムを忘れた私は引き返しました。

   フライシートを開けると、2人の住所と、人柄溢れる挨拶文が、、、
   これがきっかけで忙しい私ですが、交流が始まったのです。その数ヶ月後
   また北海道の山を登りに来た際も、山行には同行できなかったものの私の汚い部屋に泊まり
   今度こその酒宴を繰り広げたのでした。

   今年('99)も山では御一緒できませんでしたが、同じ時をして大雪を目指し、
   場所は違えど、同じ空を見上げ、来年こそは、、、と誓ったのです。
   本当に、来年こそは絶対また同じ山頂を踏みたいよね。