ラーメンとトマトの思い出


   ある山で、【以前は別の山で出会った方に再会する】という確立は、実は高いのかな?と思います。
   何故なら、百名山フリークを除けば、割と多くの人が好きな山や、好きな山域を持ってる事が多く
   その好きな(得意な)山のリピーターとなってる事も少なからず多いからです。
   かく言う私も、圧倒的に好きな山域は大雪。(日高が実力の範疇を超えているのもあるけど)
   眺めて良し、登って良し、縦走したら実は日高より、ず〜っと楽。
   そして天気に恵まれさえすれば、北海道の他の山域の山までが一望できたりもする。

   私が初めてトムラウシを訪れた'98の夏。同じペースで歩くおじ様3人パーティがいらして
   すっかり仲良しに!面白い方達で、ちっともいやらしさがない、あっけらか〜んとした
   この3人組みと抜きつ抜かれつ、ちょこちょこ言葉を交わしながら楽しい山でした。

   私はヒサゴ沼に、、、彼等は忠別小屋に、、、五色岳で一旦お別れしましたが、
   翌日、トムラを下ってる時にまたバッタリ!「おやぁ!お姉ちゃん、がんばってるね!」
   「へっへっへ。憧れの山ですもん。」「うんうん、また会えるといいねぇ〜」
   更に翌日、下山時もまた一緒に!向こうも2泊だったしピストンだから不思議はないんだけど
   なんだかお互いのペースを乱すこともなく、へんに構われる訳でもなく、歩いてる時は
   黙々とお互いのペースなんだけど、何故か殆ど同じペース。

   五色の水場まで降りて行くと、彼等は昼食の真っ最中。メニューはラーメンでした。
   少し離れた所に腰を下ろして休憩している私に「おおぃ、なんか入れ物持っといで!」と彼等。
   (?)「ほれ!ラーメンでも食べなって!」「いや、、、底の方に入ってるからいいですよ」と私。
   すると彼等は、自分たちのコッヘルを差し出して下さり、箸まで用意してくださり、
   至れり尽せりで更に私を誘って下さるのです。ちょっと感動。「頂きます」根がいやしいのかしら?

   その後も、決して私に構うわけでもなくさっさと山を降りて行く彼等に「押し付けがましくなくて
   爽やかな人達だな〜」とかなり好印象を持った私は良い気分で、自分のペースで下山。
   登山口でも缶コーヒーでもてなして下さり、すっかり意気投合して写真も一緒に撮ったりして
   ステキな想い出となりました。

   さて、それから2ヶ月近くして白雲テント場から黒岳を目指して黙々と歩く私の前に
   集団の山屋さんが、、、その中から突然 声が掛かりました。
   「よぉぉ!お姉ちゃん!!」見るとあの時のラーメンの方達が!
   「きゃぁぁ!その節は!」まるで同窓会のような騒ぎでしたが周りの方の目は暖かかったです。
   聞けば所属している山岳会の山行だそうで沢山の方が一緒でしたが、こんな山の中で
   偶然に再会した事に只々感動する私。そして、彼等から差し出されたのが真っ赤に熟した大きなトマト。

   山の中でお目に掛かる赤といえば、ザックかレインウェアの赤だけ。だからその風景の中で見るトマトは
   宝物に見えました。山に担いでくる生鮮食品の貴重さは重量登山に耐える人にこそ
   有難味が分かるってものです。「いただけません!」断る私に尚もトマトを差し出し
   「いいから持って行きなって」とニコニコしながら渡そうとして下さいます。

   そのトマトのおいしそうな事!結局、お腹が一杯の私はトマトを大事に潰さない様にしながら雨蓋に
   仕舞い込みました。そして、あれから何処の山に登ったか、お互い簡単な報告をしたのです。
   「でも、こんな所でまたお会いできるなんて!」という私に「好きな山がいっしょなんだよ」
   彼等は相変わらずニコニコ笑いながら「きっと、また会えるよ」と嬉しい言葉を。
   先を急ぐ私は丁重にお礼を述べてその場を立ち去りました。

   後ろで「がんばれよ〜」彼等が手を振ってくれました。
   その日の夜、食後のデザートに、私は頂いたトマトを頬張りながら、、、ちょこっとウルウルしました。
   そっか、、、きっとまた会える。うん、会える、、、気がする。

   初めて彼等に出会ったトムラへの道で、私は'97に赤岳で出会った青年にも再会してました。
   だから、今は信じられるんです。絶対、会える。
   食べ物が縁になるなんて、食いしん坊の私らしいけど、下界のスーパーでもトマトを見ると
   彼等を思い出します。