山名・山域:頸城山域

日   付:4月17日・18日

人   数:単独

そ の 他:

17日:笹ヶ峰→高谷池ヒュッテ
18日:高谷池ヒュッテ→火打山頂→影火打のコル→焼山北面台地→笹倉温泉…車を回収

 頸城山塊の火打山〜焼山は海に近いにも拘らず標高が2500m近くもある。雪が豊富なのは言うまでもなく、焼山の噴火でできた溶岩性の台地は木々も疎ら。呆れるくらい広いと噂の斜面をどうしても滑りたくて計画したが、どうせなら先週三田原山から望んだ火打山にも登ってみたい。高谷池ヒュッテの管理人に何度も電話してアクセスを考えた。杉ノ原は営業を終えているから笹ヶ峰まで意地でも行かねば。


 電話で笹ヶ峰まで送迎してくれる宿を探していたら妙高池ノ平で見つかった。黒沢までの広い雪原は「16日に朝から小屋明けボランティアの人が沢山入るからトレースは心配しなくてい良いですよ」との事。そして16日の夕方妙高に入った。星が出ている…気温は5℃。

天狗の庭から望む火打山。18日朝撮影。

 まだ雪の壁が高い笹ヶ峰林道を登山口まで送って頂き、取り付きを探す。蒼空が雪に映える緩い雪原を黒沢の橋まで歩く。トレースは確かにあるがルートを間違えたトレースもあるため悩ましい。
 1時間程で黒沢の渡渉地点に着いた。沢自体はかなり雪で埋まっており、そのまま沢を詰めても問題ないと思ったが急なトラバースを嫌って黒沢を渡った。十二曲がりを直登するルートである。
 このルートは途中で板を担ぐことになるが、雪を踏み抜く心配がないため確実に登れると思う。


 十二曲がりは確かに急だけど自分の好きなように登っていけるのが良い。上から単独の山スキーヤーが降りてきたので挨拶をする。やがて十二曲がりを登りきって尾根の上に出た。
 ここからも暫くシールで登っていけるが痩せた尾根は結構怖い。遥か右下に黒沢が見えている。木の密度も増えてきて斜度も急になってきたので途中で板を外した。
 

 板をザックに着ける時…何故だか感慨深いものがあった。以前は大きな板を担いでこのスタイルでずーっと登っていたのだ。雪は固めで歩きやすく暫く登ると斜度が緩んできた。
 この頃から右手上部に大きな山が見えてくる。三田原山の稜線である。

笹ヶ峰からはなだらかな雪原を歩く。
黒沢はスキーで渡れた。

 富士見平に着くと雨で波打った雪面に唖然とした。ここで初めて火打山〜焼山が目に飛び込んでくる。感動のご対面だが風がいやに強く、雲行きも怪しくなってきた。ここから高谷池ヒュッテまでは黒沢岳の西面をトラバースする。雪が固いと緊張するであろう長い急斜面を火打に向ってトラバース。小屋も見えてきたので焦ることはない。ここでまた単独山スキーヤーとすれ違う。


 昼過ぎだと言うのに異様に気温が低くなってきた…風もさっきより強くなったと思う。雨が降りそうな気配だったので先を急ぐ。最後の丘のような斜面を登ると小屋まですぐだった。トイレ堀りの最中で何人かの人がチェーンソーで雪を切っている。高谷池ヒュッテの管理人に「お電話頂いた方ですね。中へどうぞ!」と言われ小屋の中へ…。4人の人がストーブを囲んで雑談していた。シールを剥がして2階へ移動。とくかく寒い。


 初日に食べるハズだった行動食を摂って暫く横になる…。23日から営業開始のこの小屋はこの時点で夏と全く変わらず水も使える。ガスコンロも使えるけど今は冬季小屋扱いだからなんと千円なのだ。

富士見平まで来ると火打山〜焼山を望める。
しかしこの後、天候が急変する…。

 小屋での一般客は僕だけであとは以前小屋で働いていたスタッフや地元妙高のテレマークスクールの校長さんなどが小屋明けの手伝いとして作業をしていた。時折吹きすさぶような突風が耳につく。
 窓の外を見ると小雪が舞っている。なんて事だ…もし悪天候なら北面台地へ降りずに笹ヶ峰まで戻らなければならない。車は妙高に停めてあるので林道を歩くことになる。
 もし杉ノ原のゲレンデに出るにしても相当長いトラバースを強いられるだろう。神に祈る気持ちも虚しく雪は強くなりやがて吹雪きの様相に。


 5時くらいに小屋のスタッフが宴会を始める。僕も誘われたので参加するも出される食事が豪華すぎて圧倒された(笑)。
 外は吹雪きだが中は熱い宴会が続く。この地域の人が実際に滑った火打山から澄川への下降ルートの取り方や北面台地への取り付き、笹ヶ峰への降り方など大変勉強になりました。
 

 しかし食べても食べても薦められるから参った。22時くらいにトイレに行くと雪は凄い降り方だった。明日は大丈夫だろうか…。天候は祈るしかないな…23時消灯。

1階が雪に埋もれた高谷池ヒュッテ。
小屋内も非常に寒かった。

 良く眠った。6時半に起床。まだ誰も起きていないらしく静かにおそるおそる窓の外を見ると焼山と火打が半分位ガスから顔を出している。風は収まった(これが重要)から行けるだろう。北面台地もガスっていたら迷う事になるだろうけど左へルートを取ればアマナ平へ降りれるハズだから。


 軽く食事を摂り、準備をする。今日は4人の人が笹ヶ峰へ戻るようだ。火打の山頂を踏み、日本海側へ降りるのは僕だけ。平日だから北面台地もきっと1人だろう…小屋の管理人やスタッフにお礼を言って9時15分に出発した。暫く歩くと天狗の庭への下りだ。真正面の丸い火打山がデカイ。天候は見る見るうちに回復して東の空はガスっていたけど視界が遮られることはなさそう。


 天狗の庭からジグザグに切って火打山の肩に到着。ここからさらに斜度が急になるし風も強くなるだろうから防風対策をして登りだす。振り向けば妙高が頭をせり上げてきた!30分近く登って2本の標識が見えてきた。2462m…火打山の山頂である。まず確認したのは焼山北面台地の視界である。春霞みもあって快晴ではないが、充分晴れと呼べる天気になってきた。ここ山頂からなら笹ヶ峰へ戻れる場所だがどうやらその必要はなくなったようである。
 北アルプスや戸隠連峰はガスって見えないが、もうそんな事はどうでもよくなっていた。ワクワクする気持ちを抑えてシールを外す。板を履けるところまで匐松の切れ目から歩き出す。影火打のコルに向けて。

山頂直下。右は夏道。
意外に風も弱かった火打山山頂。

 雪のある場所まで降りて板をつけた。ここから影火打の取り付きまですぐだった。心配していた雪は風で飛ばされたのか多いところでも10cm近くでほぼ全面ザラメと言った感じだ。コルに立つ。広くて明るい谷が焼山に向って影火打の北肩に伸びているのが確認できる。滑り出すと緩い斜面だが高度感が凄すぎる。そしてこれから目指す北面台地が遥か下に見えている。


 左に影火打の稜線を感じながら滑っていくと前方に焼山が見えてきた。この明るい谷は下部で滝が出ているのでひとつ北(右)側の谷に乗り換える必要がある。
 乗り換え地点が気になるが余りむやみに探すのはどうかと思った。北壁は深く切れ落ちた崖なのだ。登り返すことだけは避けたいので慎重に乗り換えポイントを探りながら滑ると案外簡単に分った。この谷の上部に立つと一番下の北面台地の河原まで見えるからだ。斜度は35度くらいか…小さなボールになっていて落石もありそうなので斜度以上に圧迫感がある。


 まずは谷の中間まで安全に深回りで降りた。ここで左から別の谷が合わさり斜面は広くなる…と同時に斜度も幾分緩くなるが上から落ちてきた落石が溜まる場所だけに油断はできない。嫌な場所だったので北面台地の河原まで一気に降りた。雪質はシャリシャリのザラメでフッ素が効いたのか恐ろしいほど板が走るではないか♪

影火打北肩の谷を降りる。
この谷に乗り換える。

 焼山から延びる河原に降りた後は真っ直ぐに滑り2本の河原の真ん中に乗る。乗った所でザックを降ろした。ここで疲れがドっと出てきてへたり込むように座りこんだ。ここはもう焼山の北面台地上なのだ。もう危険な場所は無い…ハズ。凄いロケーションで焼山〜影火打〜火打山の稜線が荒々しく見える。行動食を摂り絶景を見飽きるまで見ていた。北面台地…なんて素晴らしい場所なんだ。


 台地上は超緩斜面なので直滑降気味に滑ると左に見えていた河原が消える場所がある。消えたら左に進路を取り、賽の河原までトラバースするのだ。北面台地で最も深い賽の河原は渡れる場所が限られるため、ルートの選択が重要なのだ。賽の河原は言うまでもなく焼山の噴火で出来た深い河原で実際に見ると予想以上の深さに驚いた。河原の下まで滑りこみ、なんとか板を着けたまま渡れる場所を探すも雪が柔らかすぎて断念(この時点でかなり気温が上がっていた)。板を外して踏み固めながら対岸に渡った。崩れそうな雪だったので30分ほどかけて慎重に渡った。
 


 さて賽の河原を渡っても北面台地はまだまだ長い。とくかく広大な台地なのでガスった時は怖いかもしれない。ひたすら滑り降りて途中で何度も振り返る。火打山の北壁はあの高谷池から見ていた優しい曲線ではなく、本当に別の山のようだ。左に真っ白な高松山、前方に大きな鉾ヶ岳…そしてこの広大な北面台地、本当に絵になる光景だった。

北面台地に降りた後はクルージングだ。
非常に深い賽の河原。

 北面台地の末端に着き、左に直角にルートを取ると急斜面の疎林帯に出る。ここから下に見えているのがアマナ平で一気に滑り込む。平坦な雪原だがテレマークならではの歩き易さで全く問題なく通過できた。アマナ平から林道までは長くて複雑な地形を滑ることになる。


 どこでも滑れる丘のような地形で実はここが結構楽しかった。斜度もそこそこで迷路のような地形だ。林道に出ると笹倉温泉が一望できる…と同時にまだこんなに高い場所にいるんだ…と驚いた。
 写真を撮りながらの滑りなので人よりペースは遅いがそれでももう2時間半は滑っている計算になる。林道は滑落に注意しながら滑る。下まで行くと適当にショートカットも出来るし単純な尾根なので迷う事はないだろう。


 ここまで降りてくると新緑に彩られた緑の木々が眩しい。夕べは吹雪きの一夜だったのに…こののどかな光景とのギャップが堪りません。
 林道が終わり、最後の雪の壁は降りれる所までステップを切って上から飛び降りた。橋を渡り農道を少し歩けば”日本秘湯を守る会”に登録されている笹倉温泉に着いた。名湯が楽しみである…14時半だった。

アマナ平を見下ろす。
アマナ平から下は実に複雑な地形だった。

 2日目(18日)は全ての条件が味方をしてくれた。ひとつは雪質…前日夜に降雪があり、冷え込んだ割りに朝は急激に気温が上がった。よって雪面にエッジが良くグリップした事。そして天候の急速な回復である。北面台地からアマナ平はガスられたら危険この上ない。18日は時間が経つほどに天候がよくなり、核心部を過ぎて北面台地に降りてからはむしろわざとゆっくりしていた位だった。
 

 以前から滑りたかった北面台地を火打山から降りることができて非常に満足している。核心部はひとつだけ…2050m付近の谷の乗り変えである。火打山は北壁がするどく切れ落ちているため、谷を探すために余り覗き込むのは得策ではない。実際僕も上部で気になって覗いた場所が割れかかっていたので凄く迷った。小屋スタッフで2度このルートを降りた人は2回ともルートを間違ったと言っていた。実際に分りにくく、影火打のコルから左上部に影火打、真正面に焼山を見ながらかなり高度を落とさなければ見つからないハズ。雪の固い時に転倒したら谷底まで止まらないかもしれないな…。台地に降りて河原を過ぎたら微妙に左に進路を取れば賽の河原の雪庇のない場所に出る。賽の河原を過ぎたら余裕でクルージングできるよ。


 焼山北面台地はなにしろ広くて展望も良い。回りを形の良い山に囲まれて巨大なカールに居る気分にさせてくれる。このロケーションを望むだけでも価値があります。
 標高差2000mを越えるルートだけに達成感は半端ではなく、また行ってみたいと言う気分にさせてくれる。
 なお、交通事情はそんなに悪くないので是非笹ヶ峰から入り、初日は火打山で遊ぶ。2日目に北面台地へ降り笹倉へ下山して車を回収するルートをお勧めします。

火打山頂付近より影火打北肩を望む。
火打山の大斜面。妙高は霞んでいた。
17日:笹ヶ峰→高谷池ヒュッテ
18日:高谷池ヒュッテ→火打山頂→影火打のコル→焼山北面台地→笹倉温泉…車を回収

◆今回の山行で立ち寄った温泉◆
笹倉温泉


泉質:ナトリウム炭酸水素塩泉
料金:700円


無色無臭の温泉なのでたいした事ないと
思って入ったら大間違い。
”日本秘湯を守る会”は伊達ではなく
湯ざわりは最高だった。赤茶けた湯花が
舞っているのも特徴。

山行トップへ

TOPページへ