山名・山域:海谷

日   付:2009.3.18

人   数:単独

そ の 他:

笹倉温泉…アマナ平…高松山〜一倉川…右岸尾根登り返し〜新田山コル〜焼山温泉

 強烈に個性的、かつ特異な山が多い海谷の中でも際立って白いのが高松山である。標高は1725mとこの山域の中では中級クラス。放山辺りから見るとその天を突くような三角錐と挑発的な北東尾根が山好きには溜まらない。


 しかしこの山、西側からみるとただの稜線のコブ…ブナや樺が疎林となって前烏帽子辺りから見ると「どれが高松山?」って位目立たないのは不思議である。周囲を個性的な昼闇山や焼山に囲まれているから不遇を買っている高松山。登頂達成感を味わうためにも北東尾根から登ってみた。

いつかの写真より…放山山頂より望む高松山と今回登った尾根。

 行程が長く、一倉川と言う険悪な谷を下山ルートに取ると言うことから早朝5時に笹倉温泉着。自宅から飛ばして50分で着いた。出発寸前に1台の車が…立山の某ガイドである。薄明るくなってきた林道を登りだす。最初の橋だけ雪が無かった他はずーっと雪が繋がっていた。


 杉林をできる限りショートカットしながら高度を上げる。途中で新田山の林道や一倉川渡渉地点辺りを確認。前方上部に今日登る高松山の山頂が見えたが、雪煙が舞っている。そう言えば笹倉から風が強かったのが妙に気になるな。

笹倉温泉上部の林道より遠景右手に高松山が…。

 北面台地へ取り付くこの辺りは林道が通っているとは言え、非常に地形が複雑だが高松山とさらに遠くに焼山を望みながら進むとアマナ平に着いた。広い雪原のアマナ平を南に横断する。行き着く先に焼山川があるのでそれを渡るのだ。


 川はスノーブリッジがなかったが、小石が多くて簡単に渡渉できた。渡ると前半のハイライトである北東尾根の登りだ。地図を見ても実物を見てもかなり急でハードな尾根。行動食を摂ってこれから始まる登りに備えた。小雪で高温の影響が至るところに出ていてクラック多数。周囲は春らしく点発生雪崩も多い。

アマナ平に着くと正面に北東尾根の取り付きがある。
登頂意欲はここで最高潮に!!

 尾根は最初から容赦ない急登で見上げると首が痛くなるほど。しかし時間効率は非常によくて短時間でどんどん高度を上げることができた。尾根の中間部分で雪が微妙に不安定になり、どうしようか悩んだが、考えてみたら戻るも地獄だ…そのまま登り続ける。尾根の屈曲点の南斜面はエスケープ可能だった。


 尾根は後半になるほど斜度が増す。どこまでシールで頑張れるか。この頃には北面台地が眼下に見下ろせる展望台と化していた。背後には見慣れた鉾ヶ岳と放山が、先月登った空沢山も確認できた。望むもの全て何もかもが見える快晴だ。

尾根は森林限界を超えると非常に厳しいものとなった。
2回ほど雪面が大地ごと動いた時は緊張した。

 高松山北東尾根の最後100mはシール登行では不可能だ。斜度も50度近くあり安全な場所でアイゼンに替えた。しかし雪は空洞も多くアイゼン登行に切り替えた後は踏み抜きも多くなってきた。雪崩のリスクを避けながら頂上を目指すが、正直かなり恐い。頂上へは雪屁を崩して這い上がった。11時半だった。


 さて頂上からは呆れるほど広大な一倉川源頭部が見渡せる。ここは8号線からも確認できるあの巨大な谷だ。しかし雪の少ない今期、あちこちの沢で渡渉を強いられてきたことからこの一倉川を滑ることに若干の不安はあった。しかしエスケープルートは右岸側の尾根がる。ダメなら這い上がればいいだろうと一倉川へドロップした。山旅は冒険だ!

ナイフリッジから振り返り北面台地と向こうに新建尾根。
何もかもが見下ろせる大パノラマの尾根だった。

 何度も言うが谷は果てしなく広い。西に聳える昼闇山の肩まで繋がっている。何処でも滑られる広い斜面を好き勝手滑る。斜度もそんなに急ではないので安心して滑れるのだ。広い斜面は開放感があり実に気分がイイ♪周囲の樺が青空に映える。


 もちろんこの巨大な谷に私以外誰一人としていないのだ。どんどん滑るがなかなかボトムまで辿り着かない。とにかく長く広い谷である。やがて滑り続けると源頭部に降りた。まだゴルジュではないが、両側が壁になっているのでいい気はしない。ここから暫く滑るとゴルジュ手前で早くも水が流れているのを確認。左手から合流する支流から滝も出ていた。さてこの先どうするか…。

高松山山頂より一倉川を観察する。その規模に圧倒された。

 用心して右岸沿いにトラバースしながら様子を見ると右岸沿いからも支流が出てきたではないか。これはマズイ。とてもじゃないが、一倉川ゴルジュを滑ることなど不可能と判断。
 シールを張って尾根上部まで登り返すことにする。前半のキツイ登りで足が攣りそうになるが、時刻はまだ13時。雪がないのは予想していたのに深い谷を下るルートを計画した自分が悪いのだ。この程度は予測済み。


 で、尾根を登る。地図に載っていない小さな沢を何度も越えて標高1130m辺りに見えている雪原を目指す(この雪原は尾根の上から目立つ)。ここまで来ると眼下に新田山の林道が確認できた。あとはブナの尾根を忠実に降りるだけ。途中から板が走る!最高だ。

谷のボトムが幅3mくらいか。見ての通り割れている。
右岸側は一時的にエスケープできるが、常時トラバースは無理だ。

 行程に不安を抱いていたが、眼下の林道と言う目的地が決まるとモチベーションも上がる。と言うかこのブナの尾根、結構滑って楽しい尾根でした。斜度も木々の密度も問題なし。斜面も長い。イイところを選んで勝手気ままに滑っていたが、最後は渡渉地点にピッタリ合わせるために慎重にルート取り。降り立ったところはまさにスノーブリッジの横だった。


 そう言えば上部の沢の割れ方からして、ここにスノーブリッジが掛かっていること自体に驚いたが、何にしても有り難い。厚さ1m以上もあろうかと言う立派なブリッジを渡って左岸へ。ここからデブリで埋まる明瞭な林道をシールなしで登った。登った所は新田山のコルだ。

新田山コルへ続く林道より辿ったルートを振り返る。
地図で見るよりは危険が少ないルートだと思った。
ただドロップポイントまで登るのが…長い。

 コルから新田山を滑るのだが、地形も藪も出まくりで振り回されないように上手くルートを取る。足が辛い。苦痛だ。ようやく滑降を終了してアスファルトの林道に下りると笹倉温泉までの40分のブーツ歩きが厄介だった。下界は暑い。


 笹倉温泉着が15時半。車でブーツを脱ぐと爪が割れそうなほど痛かった。いろんな意味で無茶もしたし。でもこれで開放された。下山メールを済ませて車を走らせる。車が8号線の交差点に着き、早川の橋を渡るところで山に目をやると、さっき滑った広い一倉川源頭が西日に照らされていたのが印象的だった。
 自分の進むべきルートは自分で決める…そんなありきたりなことを痛感させられた、たった一人の小さな山旅だった…。

峠を越えてゲレンデのような新田山の斜面より鉾ヶ岳。
ここで全身の力が抜けた。達成感は大きい。
笹倉温泉…アマナ平…高松山〜一倉川…右岸尾根登り返し〜新田山コル〜焼山温泉

山行トップへ

TOPページへ