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山崎隆之 |
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概要
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この論文では既往論文の概況を踏まえて、地域イメージを「自然景観や独自の文化など、地域における個別の事物・事象の情報に接することで、地域内外の人々が地域に対して感じる主観的価値(心象)」と定義し、紀行文の記述内容のうち、地域イメージが端的に記述されている作者の主観的な「感情」表現の記述部分を抽出・分析することにより、司馬がどのような「感情」表現から地域イメージが記述しているのかを明らかにした。 |
| 山崎隆之、十代田朗 地域イメージの表現手法に関する研究 -司馬遼太郎『街道をゆく』における文章構成の分析から- [2004.10]都市計画学会 都市計画論文集(39-3)p.97〜102 |
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概要
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分析の対象としてテキストの部分を取り出し、その中での「感情」表現に注目したため、全体の文脈の中で、どのようにひとつの地域の事物・事象が配置され、主観的価値が記述されているのかについては検討できなかった。そこで論文2では、特定地域についての記述における文章構成に着目し、分析を行った。 その結果、旅の経過における多数の地域イメージから地域の全体像(全体イメージ)を記述する“体験型”と、様々な知識を展開してひとつの地域イメージへ至る作者の思考過程を記述する“知識型”という2つの文章構成のタイプが複合的に用いられていることが明らかになった。これらの文章構成は、“体験型”が作者の「発散的思考」、“知識型”が作者の「収束的思考」のプロセスを表現したものであると考えられ、『街道をゆく』は、こうした表現手法により地域を“創造的”に捉えるテキストであったといえる。 また、『街道をゆく』のテキストは、作者の思考過程が記述されたものであると同時に、テキストを通じて作者が読者に辿らせようとした思考過程であるともいえる。それが十分効果を発揮していれば、『街道をゆく』の表現手法が、同時に、読者が地域の全体イメージを“創造的に”獲得することを可能にする手法であるという可能性も示唆されるが、この点についての検討は今後の課題とした。 |
| 2005年度研究テーマ(案): 物語的方法論を用いた地域イメージの創造に関する研究 |
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研究目的
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本研究は、1980年代より今日まで各地で様々に展開されている地域PR戦略の中で、継続的な実践の蓄積がありながら、これまで学術的研究の対象となってこなかった「物語」を用いた戦略を行っている地方自治体に着目し、その活動や展開過程を分析することにより、地域PR戦略において「物語」を活用することの可能性を理論、実践の両面から検討することを目的とする。 1980年代より展開されはじめた地域CIや地域イメージアップ施策は、地方自治体がはじめて明確に意図された政策として実施された地域の情報発信(PR)であった。こうした取組みは、対外的な地域の認知度・イメージアップと対内的な地域への帰属意識(愛着)の醸成という2つの意味を持っており、その効果は、観光振興や企業誘致の活発化、住民の地域への満足度の向上など多岐にわたる。現在、情報化の進展、交流人口の増大とともに、こうした取組みは自治体にとってますます重要な戦略ポイントとなっている。 様々な地域PR戦略の中で、「ドラマや小説の舞台になる」こと、すなわち地域が「物語」の中で表現されることがPRとして効果的であるということは以前から指摘されていたことであるが、これを“「物語性」を持たせた地域情報発信”としてまとまった形で初めて取り上げたのは福田ら(1995)である。同書における福田の議論は事例の列挙にとどまり、「物語性」の概念もあいまいであるが、これを敷衍して考えると、“「物語性」を持たせた情報発信”とは(1)作品としての「物語」用いて地域PRを行う戦略(例:高岡市「万葉のふるさとづくり」)、(2)地域PRの方法として「物語」という形式を用いる(例:山口県広報誌『ひとのくに山口物語』)、という大きく2つの戦略として捉えることができる。 雑誌『月刊観光』では、1997年に「観光地の物語性」という特集を組んでおり(1)のような戦略を行っている自治体を取り上げている。さらに2004年には「物語」のジャンルとしては限定的だが「詩・歌と観光」と題した特集を再び組んでおり、観光における「物語」を用いた戦略は、一過性のものではなく継続的に注目されている手法であるといえるだろう。 一方、福田ら(1995)は(2)のような戦略に着目し、フロップなどの物語論における“物語に共通する舞台設定やストーリー構成”などの研究成果を取り入れた情報発信を提案している。福田の指摘するように、地域PR戦略としての応用可能性が広いのは、既存の物語作品を必要としない(2)の方向性であるが、神話や昔話の研究からもたらされたこれまでの物語論の研究成果を地域PR戦略へ単純に引用する福田の議論は性急であり、さらなる検討が必要であろう。 しかしながら、これまで見られる地域PR戦略における「物語」の活用についての言説は、成功事例の紹介や個人的な見解のみであり、学術的研究は皆無である。以上のような概況から本研究では、まず作品としての「物語」を用いた地域PR戦略の事例を分析し、物語作品を地域PRに活用する方法を検討することとする。また同時に、地域PRに果たす「物語」という形式の役割と活用のポイントを検討することで、形式としての「物語」を用いるPR戦略への展開の基礎としたい。加えて、これまで「物語」を用いた地域PR戦略に関する議論に登場する物語論や心理学などについての学術的研究成果を渉猟し、実践的事例分析だけでなく、理論的側面からも「物語」を活用する意義を検討したい。 参考文献: 福田敏彦・大野健一(1995)『地域が語り始めた-自治体と情報発信-』電通 日本観光協会「特集 観光地の物語性」(月刊観光1997年4月号) 日本観光協会「特集 詩・歌と観光」(月刊観光2004年7月号) 高寄昇三(1993)『地域イメージアップ戦略-地方自治体におけるイメージ向上戦略-』吉田秀雄記念事業財団1992年度助成研究 |
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研究計画 |
(1)文献調査 これまでの「物語」を用いた地域PR戦略をめぐる言説と、そこで引用されている物語論や心理学における文献を渉猟し、地域PRにおける自治体からの発信〜地域住民・ターゲットとなる人々の受信の過程を構造化(概念モデル化)し、そこで「物語」の果たし得る役割について理論的に検討する。 (2)事例の収集 各地方自治体のホームページなどから「物語」を用いた地域PR戦略事例を収集し、地域情報・旅行関連雑誌、まちづくり・地域マーケティング関連書籍などよりそれぞれの事例に関する言説や戦略展開の状況などの情報を補強する。 (3)自治体アンケート (2)の事例として挙げられた自治体に対しアンケートを行い、「物語」を用いた地域PR戦略の展開内容、展開方法、展開へ至る経緯などを調査する。調査結果より、PR「物語」を用いた地域PR戦略のタイプ分類を行う。 (4)現地調査・ヒアリング (3)で明らかになった主なPR戦略タイプそれぞれを代表する自治体をピックアップ(3〜5程度)し、現地での資料収集、施設などの整備状況の調査、自治体担当者へのヒアリングを行い、戦略の理念や展開過程、今後の展望、組織体制などを詳細に分析する。 |