やますげ / 松村英一


大正6年から12年に作られた歌を収める。


作者は5人の子供を幼いうちに次々と病気で亡くしている。その間にも自分自身の病気、また妻もまた病気により入院をしている。また父親も亡くす。そうした子供の病気や死、亡き子への思い、病院での妻の看病、父への想いなどを歌ったものが多くある。


病める子の枕べにいてわがうごかすこの風車よくも廻らぬ
わが妻に抱かれ行きしその朝の生きの泣き声を再びきかず
幼児の息絶え絶えに閉づる眼の長きまつげをあはれみにけり
病室の小窓にたわむコスモスに秋立つ風の吹き初めにけり
よき子よと手もて撫づるをおそれつつ泣き出づる子や母を忘れし
ほとほとに衰へましし父の顔まくらべ近く寄りて目守るも


(現代短歌全集 5 筑摩書房1980 所収)