……(30分経過)……
ガース あーそっか。でも弟子入りしに来るときってチンポウとは初対面みたいですよ。牛魔王の妹なんだったら、「五百年後には夫婦なんだ」なんて説明する必要ないじゃないスか。
ウェイン その直前に牛魔王に結婚させられそうになったばかりなのに。
ガース 結局、第一部の結末で五百年後に残してきたジンジンとその姉の蜘蛛女はどうなっちゃったんスかねえ。
ウェイン 子供まで作ってるのにな。おまけに牛魔王の本妻が出て来た途端にチンポウに色目使うってのはどうなってんだ。あー頭痛くなってきた。だいたいこんなこと解説すんのオイラたちの仕事じゃねーよ。配給会社かなんかが相関図作るべきなんだよ。
ガース なるほど。じゃあ、この下あたりに人物関連図が載ってるってことで。
ウェイン 時間軸もわかるやつをね。あー、ひと仕事したな。じゃ、お疲れさん。
ガース こらこら。これから映画の中身の話でしょうが。
ウェイン だいたいだな、こーゆーややこしい話になるのは主人公のチンポウがあまりにいいかげんな奴だからだよ。
ガース 出てくる女にかたっぱしから惚れますからね。そんでもって「君だけを愛してる。嘘だと思うなら心を見てくれ」とか言って、『ミクロの決死圏』みたいに心臓見せるけど、結局全部嘘なんだもん。
ウェイン 心臓よく見ると毛はえてんじゃないの?
ガース 女の方も意味もなく彼に惚れるしね。
ウェイン だからな、俺はこう結論するよ。これは『うる星やつら』だ!
ガース チンポウが諸星あたるですか。まあ猿面ではありますけどね。
ウェイン 『うる星』って宇宙からいろんな化け物女がやってきて、みんなあたるに惚れるじゃない。で、あたるの方もその場かぎりで「お前が好きじゃー」とか言うのね。
ガース まあ周星馳ってマンガ好きだそうだし。高橋留美子くらいは読んでても不思議はないけど。
ウェイン 最初に結婚するジンジンがしのぶで、第二部から出てくるジーハがラムちゃんだな。
ガース やっぱラムちゃんの方がいいかな、と。
ウェイン そーだよやっぱなんたってラムちゃんだろ。そもそも、第一部の最後のほうで、ジンジンに「やっとわかったんだ。君だけを愛してるってことが」とかなんとか言うだろ。で、てっきりジンジンがヒロインだと思ってガックリしちゃったよ。そしたら第二部で出てくるジーハがいい女じゃん。それで立ち直ったよ。
ガース 何言ってんだか。でも、たしかに周星馳ってあたる的キャラクターかもしれない。バカで調子が良くてものすごく運がいい。
ウェイン 『0061/北京より愛をこめて』もそーだな。
ガース これは唯一周星馳が監督と脚本をやってる映画だし、周星馳の本質がいちばん良く出てる映画じゃないスかね。
ウェイン オープニングのシルエットで踊るとこがサイコーだね。これは見てもらう他ない。
ガース Qに当たる奴が作ってる秘密兵器もいいですね。太陽電池パワーの懐中電灯。暗闇では他の懐中電灯で照らしてつけてやる。
ウェイン 『アストロ・ゾンビ』思い出すなー。
ガース 誰にもわかんないって。ともかくその手のバカなギャグばっかり。
ウェイン この『チャイニーズ・オデッセイ』だと、三蔵法師が突然「ダンダンダン」を知ってるか? って聞くところ。
ガース なんだろうと思ってると、「オンリー・ユー」のイントロなの。
ウェイン クイズ・ドレミファドンか?
ガース また、古い話を。後半、孫悟空になってからはサルでもわかるギャグを連発ですね。
ウェイン しかしこんな孫悟空いねーよ。アチョーッって怪鳥音出して飛び蹴りかますんだもん。
ガース ブルース・リーだいぶ入ってる。
ウェイン ガキの頃からブルース・リーのマネが得意なんだってさ。『精武門1991』って『ドラゴン怒りの鉄拳』のパロディも作ってるぐらいで。
ガース 『ゴッド・ギャンブラー2』ではトイレの吸い出し二個つなげてヌンチャク・アクションするところもあった。
ウェイン 『ミスター・ブー』のソーセージ・ヌンチャクに匹敵するネタだね。
ガース そう、『ミスター・ブー』的センスをいまだにやってるのは周星馳ぐらいじゃないかな。最近やたらと“洗練された”香港映画が多いけど、周星馳だけは全然おしゃれにならない! 死ぬまでダサい!
アジアを知りたければ周星馳を見よ!
ウェイン むしろ先祖帰りじゃないの? オイラ最初に衝撃を受けた香港映画って『ドラゴン危機一発』でさ、ブルース・リーに殴られた男が壁に人型の穴をあける場面を見て困ったわけ。ギャグなのかシリアスなのかわかんなくて。前半はブルース・リーは脇役みたいなのに、いきなり途中から主人公になっちゃうし。ある意味じゃゴダールより……
ガース 難解(笑)。
ウェイン この『チャイニーズ・オデッセイ』見てて、久しぶりに『危機一発』みたいな感覚になったなー。
ガース 要するにコメディもアクションもミュージカルもラブロマンスも混然一体としている。
ウェイン インド映画ってこういう感じなんだよ。歌あり踊り笑いあり涙あり恋ありアクションありモハメド・アリで一本四時間ぐらいなの。
ガース この『チャイニーズ・オデッセイ』も、前後編になってるけど本当は三時間ぶっつづけの映画ってことですもんね。
ウェイン こないだNHK衛星第二でやってた『マーハバーラタ』ってインド神話の連続ドラマがね、やたら生まれ変わったり、くっついたり離れたり、誰かに化身したりして、よく似てるんだ。
ガース インド的というか、アジア的なんですね。日本だと滝沢馬琴の『南総里見八犬伝』とか。生まれ変わりとか血族とかがやたら絡みあう話ですね。
ウェイン ユダヤも広い意味でアジアだけど、旧約聖書も延々と家系が書き並べてあるだろ。「ドンドコがドコドンとの間にドンドコドコドンを産み」……って。
ガース それは筒井康隆。
ウェイン とにかく、古代の神話ってみんな因縁と因果の物語なんだよ。ところが新約聖書になるとイエス・キリストや伝道者パウロ個人の物語になってくる。それを基盤にしたルネッサンス以降のヨーロッパの物語っていうのは近代的な主体、つまり主人公個人の人生のストーリーであって……
ガース 急にどうしたんですか、評論家みたいですよ。
ウェイン いけね、四方田犬彦センセの霊がとりついた。
ガース 死んでないって。
ウェイン ま、とにかく、こちとら近代的なストーリーに慣らされちゃってるから、こういう映画見ると頭クラクラするってことよ。
ガース ハリウッド的な映画だけが映画じゃないってことですね。
ウェイン あと、思いだしたのが『ウルトラ六兄弟VS怪獣軍団』。
ガース またオタクな話を……
ウェイン タイ映画なんだけど、唖然としたね。いきなりタイ人の少年が仏像泥棒に頭ブチ抜かれて殺されちゃうの。それも血しぶきドバって。日本の映画館のお子様たちは真っ青。「これがアジアだ!」と思ったね。で、その少年がハヌマーンって神様になるんだけど、こいつがまた怪獣切り刻んだりして、敵の死体の上で喜びの踊りをこう……
ガース 踊らんでええ、踊らんで。ハヌマーンって猿神だから孫悟空と同じでしょ。根はサルってことですよ、結局は。それにしても、この映画のラストは謎だなあ。チンポウとジーハが結ばれるのを孫悟空が見てるんだけど、孫悟空はチンポウでしょ、どうなってるのか……
ウェイン あー、もうその問題はええっちゅうに。ブルース・リー先生もおっしゃってるでねえか。「考えるな、感じるんだ!」。
ガース ……