パム・グリア原理主義宣言

初出:『BRUTUS』1998 4/11号


ガース タランティーノとパム・グリアに連続インタビューした幸せ者のガース柳下です。
ウェイン いーないーなとアメリカの片田舎で爪を噛んでるウェイン町山です。
ガース タランティーノの新作『ジャッキー・ブラウン』公開ってことで、パム・グリア原理主義者のわてらが『ブルータス』初登場。二人でマンハッタンの名画座で『フォクシー・ブラウン』(74年)観て、パム姐さんにイカれちゃいました。
ウェイン これを思春期に観ちゃったタラちゃんには、『ルパン三世』の峰不二子以上の性的トラウマになっただろうね。
ガース で、念願かなって、『フォクシー・ブラウン』へのオマージュとして、この映画撮ったわけッス。
ウェイン しかし、パム様はコワイね。二十五年前と同じ役ができるなんて(笑)。
ガース いやあ、今もキレイでしたよ。「きみは29歳の頃から何も変わらないな」ってロバート・フォスターのセリフそのまんま。
ウェイン でも、『フォクシー・ブラウン』みたいな痛快お色気バイオレンス・アクションじゃなかったね。
ガース 今までみたいなドンパチないし。エルモア・レナードらしく「現金[げんなま]めぐって6人の男女。最後に笑うのは誰か?」みたいなコン・ゲームにもならない。
ウェイン この映画、ゴールデン・グローブ賞では「コメディ・ミュージカル部門」に分類されてるんだよ。
ガース コメディの一種なんでしょうね。拳銃密売屋のサミュエル・L・ジャクソンも、最初から最後まで、カウチでビデオ見ながら与太話してるだけだし。
ウェイン あれは、もともとタランティーノが自分の役として書いたんだよ。
ガース 人にビデオ見せるのが最大の接待だと思ってるってあたりがタランティーノ(笑)。ピーター・フォンダ主演の『ダーティ・メリー、クレイジー・ラリー』(74年)のビデオを観てるのが、娘のブリジット・フォンダだったり。
ウェイン ブリジットの衣裳はダーティ・メリー役のS・ジョージのコスプレなんだよ。
ガース オタクですねー。でも彼女とデ・ニーロとのカラミは爆笑モノ。
ウェイン ブリジットが「お酒にする?」「ああ」「それともコーヒー?」「ああ」「それとも私とセックスする?」「ああ」で、射精して「どうだった?」「ああ」(爆笑)。ンなもん演技じゃねえよ!
ガース いや、タラちゃん言ってましたよ。「あれはデ・ニーロがものすごく考えた末の演技なんだよ。歩きはじめるだけでも悩んでたよ。右足からか左足か(笑)」。
ウェイン あと、パム様が拘置所にぶち込まれたところに 私は長期刑の女〜[アイマ・ロングタイム・ウーマン]ってパム様自身の歌声が流れるじゃん。あれって彼女の主演第一作『残酷女刑務所』の主題歌でしょ。
ガース 彼女、ゴスペル・バンドで歌ってたんだって。それが後にアース・ウインド&ファイヤーになったとか。
ウェイン ホントかい。
ガース ジミ・ヘンとスライ・ストーンの幻のセッションの現場にもいたって。ブラック・カルチャーの要所要所に関ってるルー・サロメみたいな女なんですよ。
ウェイン それにしてもショボくれ中年男(ロバート・フォスター)の恋物語として終わるのにはビックリだな。
ガース R・フォスターがジャッキーと初めて会ったとき、逆光で顔なんか見えないのに、いきなり惚れちゃうでしょ。あんなの、彼女を見た登場人物は老若男女白人黒人の区別なく、みーんなパム様の虜になっちゃうという「パム様主演映画の掟」を知らない人には意味不明。
ウェイン 要するに中野貴雄監督がひし美ゆり子主演で『プレイガール』リメイクしたみたいなもんだな。
ガース 「お世話になりました」ってか(笑)。
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Garth Yanashita / ガース柳下 / yanasita@gol.com