LDを売ったのは誰だ。

◎今月のお仕事 『フィルム・メーカーズ#10 ティム・バートン篇』(キネマ旬報社)の責任編集を担当。中身はほとんど別冊映画秘宝なんでご心配なく。


3/13(月)
 ジョン・スラデックが死んだらしい。ぼくにとって、SFはどんどん遠いものになっていく。もはやぼくがSFとして認識しているもののほとんどは、今のSF人にとっては興味のスペクトルの外(紫外線の外)にすら位置しないのではないか。

 松竹で『シーズ・オール・ザット』見る。いや、なんで毎回毎回こういう映画を見に来てしまうんだろうね。自分でもオブセッシヴなものを感じずにはいられない。ともかく眼鏡っ娘とかGOTH少女とかは自分から殻に閉じこもっているからあんな格好をしているわけで、眼鏡をとって化粧をしてきれいなおべべを着れば世界に受け入れられるのさ!というGOTH訓化イデオロギーには毎回イライラさせられるのだが、それでもこういう学園ものが来るとつい見てしまうのである。なぜだ。あるいは毎回見ていれば、そのうちにGOTH少女がGOTH少女のまま、ギーク少年がギーク少年のまま自己実現されるようになる、とでも思っているのだろうか。もちろん、そんなことは起こらなかったし、これからも決して起きはしないだろう。


3/14(火)
 外苑前・ワタリウム。久しぶりに大木裕之と会う。「超全体主義的性交」というタイトルでフィルム・インスタレーションをやっているのだ。しかし行ってみるとまだ脚立が立っていたりベッドがあって女の子が寝てたり。これも展示の一部? うーん、そうなのかもしれない。大木はジャージの上に中学校の詰め襟というとんでもない格好だった。ま、いつものことだ。
 大木からファッション・デザイナーの長澤氏を紹介される。あとアーティストのGary Hill(なんかパフォーマンスをやって、それを大木がヴィデオに収めていた)。大木はかなりとんでもない人を顎で使っていたりするので、注意が必要なのだが……しばらく歓談。

 勇気を奮い起こして『呪怨2』見る……騙された。誰だ、これで完結してるとか言った奴は。どんどんどんどん嫌になるばかりじゃないか。許してくれ〜さらに嫌なことにいくらでも続けられるんだよ、この話。
 ひとつ清水監督の秘密を発見した。この人、嫌なものを見せる前に必ずリアクションの顔を撮るんだよね。いやがおうにも期待(不安)が高まったところで、にゃあーっ あ、いかん、思い出しちゃった! でもこれ、その後のカットで見せるものがヘロヘロだとただ間抜けなだけだから、やっぱり才能なんだけどね。


3/15(水)
 家の片づけをしながらだったので、珍しく代表戦なのに感想なし。いや、ぼくはトルシェ派ですんで、中国を圧倒してまったく何もさせず、たまたま点が取れなかっただけで監督を解任するというのはあまり納得はいきません。そういうもんじゃないと思う。だいたい、みんなちょっと応援したくらいでチームが勝つとか思ってないか? サッカーというのはまず負けるスポーツなんだぜ。
3/16(木)
 サンフランシスコからVIZの出してる日本漫画誌のデザイナーI嬢が来ているので、新宿で会ってお茶を飲む。VIZはポケモン成金なんで、今はイケイケ経営ですごいらしいぞ。今後の課題はオタク商売から脱出することなのだが、その道は果てしなく厳しいのであった。

 ついでにビデマまで出かけ、中を案内。ビデマではLDを組織的に駆逐する動きが続いているが、ついにレアものまで叩き売りがはじまったらしい。チラチラ見ていたら、なんと『ミディアン』日本版LDにクライヴ・バーカー、デヴィッド・クローネンバーグ、ダニー・エルフマンのサインが入ったものがあった。どうしようもなく義務感にかられたんで、サイン代と思って7000円払って買ったが、いったいこれは……バーカーとクローネンバーグとエルフマンに会っている日本人なんて、どう考えてもオレの知り合いだと思うんだがなあ。だいたい、本物か? これ。なお、ジェフリー・コムズとかロバート・イングランドのサインはほとんど汚れレベルの扱いだった。

 義務でなく買ったのはロメロとトム・サヴィーニのサインが入った『マーティン』と、誰のサインも入ってない(笑)『バンパイア・ラヴァーズ』


3/17(金)
 シネカノンでSABUの『MONDAY』見る。実はサブさんの映画を見るのははじめてである。途中マジ感をただよわせるあたりがどうかと思うんだが、まあおもしろかったかな。俳優が微妙に相場より安いあたりがいい感じである。

 そのまま次の回、ケヴィン・スミスの処女作『クラークス』。ボンクラコンビニ店員のボンクラ日常物語。問題はなんですよ、ケヴィン・スミスって結局このネタしかないやんか、ってことやね。まあおもろいからええんやけど。『JAWS』のネタはなかなかいけると思いました。あれ、飲み屋のナンパに使ってると見た。
『JAWS』マニアのタノベくんが来ていたんで、ちょっとお茶して帰る。

『フレームシフト』(ロバート・J・ソウヤー 早川文庫)いただく。ありがとうございます。


3/18(土)
 昼間は秋葉原に出かけていくつか買い物。200円安い10baseTハブを買うために1時間歩き回ってすっかり疲弊して思わず喫茶店に入ってしまったボクはやはり阿呆でしょうか。阿呆ですね。

 9時、テアトル新宿に出かける。今日は三輪ひとみ嬢とトークショー。ひとみちゃん、肩書き“特殊映画女優”になってましたが、いいんですかね。一応復習と言うことでトークの前に『発狂する唇』を再見。歌中心に(笑)。トーク自体はもう三度目なんですけど、何度やってもセクハラしてるオヤジのような気分になってしまう。結局は同じ話をくりかえすことになってしまったんですが、ま、あんなものかと。どうせみんなひとみちゃんの胸、見に来たんでしょ? ま、その期待は十分に満たされる衣装だったような……
 終わったあとはたまたま来ていた喜国夫妻と飲みに行く。もっぱらサッカーとファンから飛んでくる電波のお話。あと、共通の敵について大いに盛りあがったり(笑)。


3/21(火)
 試写で『フィルス&フューリー』。『グレート・ロックンロール・スウィンドル』のアウトテイクというか、当時の秘蔵映像をジュリアン・テンプルが再編集したピストルズ・ドキュメンタリーである。試写には藤原ヒロシ、と元パンクスのタノベくん。全員革ジャン着用。押忍。
 まあ、テンプルが余計なことをしなけりゃしないほどいいっていう……ピストルズの昔の映像を見るだけで血が騒ぐ。解散当時は憎みあっていたらしいメンバーだが、今はマクラーレンという共通の敵を得て団結しているらしいぞ。
3/22(水)
 銀座で原書房のI氏と打ち合わせ。

 6時、松竹で『アナザヘヴン』。なんでこんなの見たんですか? いや、仕事仕事。で、感想ですがメディアミックスっていうのは映画がテレビになることなのか?と思ったよ。『CURE』に『マトリックス』風味を加えたものかと思ったら『ヒドゥン』だった、みたいな。ところで人間離れした怪力をふるう殺人鬼の名前が柏木千鶴って……いや、わかってます。こういうの、わかる方が悪いんだよね。


3/23(木)
 3時からブエナで秘密試写。三留まゆみと今野雄二が来ていた(と書くだけでなんの試写だかわかってしまうのかも)。あと、人面岩は実在すると信じているタノベくん。

 その後渋谷にまわり、6時からシネカノンで『喜劇王』。チャウ・シンチーの監督・主演作なのだがシンチーのドラゴン魂が炸裂する大傑作であった。もう泣ける泣ける。ギンティ小林とか見たら悶死確実である。チャウ・シンチーもすでにコメディを通りこしてコミカルな演技で泣かせる世界に入りつつあるのかもしれぬ。
 それにしても制服パブの女の子とやっちゃった翌日のギャグは凄かった。ものすごーく深刻で死ぬほど笑える。やっぱ天才だねこの人は。

 その後ぴあからの緊急指令を受けて秘宝に向かい、ちょっと相談。なんか忙しいぞ! 『心機一転 土工!』(根本敬 青林工芸社)いただく。


3/24(金)
『日本一の男の魂#5』(喜国雅彦 小学館)いただく。ありがとうございます。

 最近、試写の時間や会場をまちがえて、思っても見なかった場所で想像もしていなかった映画を見ることが多い。次に何が起こるかわからず、毎日がエキサイティング。アルツな人ってこんなんだろうか。今日も今日とて『どら平太』を見るつもりで試写場へ行ったのに、見たのは阪本順次の『顔』だった。どこをどうしたら松竹と東宝をまちがえられるものか、自分でもわからん。
 まあ映画は面白かったからいいんだけど。牧瀬里穂がすんげえいやらしかったす。うーん、どうしよって感じ(どうもしねえよ)。

 その後フィルムセンターで『マブゼ博士 第一部』上映は16ミリだった。フィルムセンターでそれはないだろ。盛大に寝てからまたも秘宝へ! しかし! 肝心の用件は果たせず、タノベ、大矢と飲んで帰る。


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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / kiichiro.yanashita@nifty.com