小さな手品師

◎今月のお仕事 SFマガジン2000/11月号にニール・ゲイマンの短編「聖杯とお茶」訳載。ところでSFMは次の号にも翻訳が載る予定なんですが……
        『マリ&フィフィの虐殺ソングブック』(中原昌也 河出文庫)解説。発売は10月頭。


9/15(金)
〈SIGHT〉届く。そう言えばアンケートに答えたりしてたのだった。きちんと読むのは創刊号以来だけど、それにしても凄い雑誌だね、これ。渋谷陽一による渋谷陽一のための渋谷陽一の雑誌。誰が読むのかって? 渋谷陽一。思い出したんで、90年代日本映画ベストを載せときます。

  1. 『CURE』 97 黒沢清
  2. 『腹腹時計』 99 渡辺文樹
  3. 『神様の愛い奴』 98 神様
  4. 『由美香』 97 平野勝之
  5. 『あなたがすきです、だいすきです』 94 大木裕之
  6. 『TOKYO FIST』 95 塚本晋也
  7. 『極道戦国志 不動』 96 三池崇史
  8. 『Kids Return』 96 北野武
  9. 『つぐみ』 90 市川準
  10. 『蛇の道』 98 黒沢清

 だから『神様の愛い奴』は神様が創った映画だって言ってんの! ま、渋谷陽一に言ってもわからんだろうけど。〈映画秘宝〉とか存在すら知らないみたいだし(たぶん本屋に行くと、無意識に視線があっちを向いてしまうんだね)。


9/16(土)
『囁く血』(グレアム・マスタートン他 祥伝社文庫)、『サラ、神に背いた少年』(J・T・リロイ アーティストハウス)いただく。

 雨の中、洋泉社に出かける。PULPの二人を秘宝編集部に紹介してあげるのだ。まあ、今後何かといろいろありそうだからね。なんかいろいろ最近の映画の話とか1時間ばかり話す。

 その後、九段下の成山画廊へ。〈ダイアン・アーバスの健常者とチャールズ・エイゼンマンの奇形〉という展示。今日はオープニングなので、小さな人がワインをサーブしてくれる。山田マメさんは小さな手品師なんだそーな。まあそんなわけでアーバスとか見物(アーバスのいちばん好きな写真があった……でもぼくに手が出る値段じゃない)。ただ、どうも雰囲気的に居づらくて、よそで時間つぶしたりしてましたわよ。 あ、小人が好きな編集者のTさんは大喜びで抱っこしてたかいたかーい、とかやって喜んでました(一部誇張)。


9/17(日)
 夕刻、図書館に出かけてちょっぴり調べもの。慌てて帰ってきて五輪VSスロヴァキア いやあ今日の稲本はすばらしかった。前の試合が嘘みたいに切れまくって守備ではボールカットしまくり。攻めては中澤からのロングパスを右足のアウトサイドでトラップしてDFをかわし、そのままボレーでひっぱたいたシュート。いやあれは凄かった。あのテクニックはなあ。
 しかしそうやって勝ったにもかかわらずなんなんだよブラジル! 二連勝にもかかわらず各地サッカー掲示板はいきなりお通夜みたいに沈みこんでるのであった。
9/18(月)〜20(水)
 いやあ、ちょっと遊んできちゃいましたよ。なんか時間の流れが違うところで過ごしたみたいな感じで何もおぼえてないです。へらへら〜

 なーんていい気になってたらいきなり電話で恐い人に怒られたすいませんすいませんすいませーん。

 ところでブラジルですが、弱いね。いやそれでも日本よりはだいぶんと強いとは思うが、汚すぎる。あれは本気だからと言うよりは弱い証拠でしょう。あんなに汚いブラジルははじめて見た。対アルゼンチンモードか。だいたいFWが……ロナウジーニョってほとんど柳沢みたいじゃないか? いや、今日の柳沢はさすがにファンのオレでも擁護できない。ペナルティエリアでDFと一対一になってもシュート打たないなんて!? あとね、なんか稲本は本当にワールドクラスのような気がしてきたよ。


9/21(木)
 UIPで『シャフト』見る。なんか悪い悪いと評判を聞かされて覚悟していったけど、まあそこまで言うほどじゃ。雰囲気はそれなりに出てるし、少なくともオリジナルへのリスペクトを忘れないリメイクって意味じゃあ好感持ったけどねオレは。『ミッション・インポッシブル』とかああいうものよりゃさ。

 夜は『コヨーテ・アグリー』の披露試写。秘宝関係者は全員来てましたよ(笑)。中身は『秘宝』19号のFBBを読んでいただければいいんですが、見てびっくりお話はなんと『ハピネス』だった! なお、オレ的にいちばん気になったのはブラッカイマー・フィルムのロゴ。なんかどんどん派手になって来ませんか? たぶん映画の中でいちばん金かけてる部分だと思う。

 秋葉でいくつか買い物したけど、気に入ったのがElecomのホイールマウス(光学式)。これ、すっごく使い勝手いい。なんで今まで使ってなかったのかしらん。


9/22(金)
 乱歩賞のパーティに出かける。友達の少ないオレはいつものように飯を漁っていたよ。

『スポーツ・ヒーローと性犯罪』(ジェフ・ベネディクト 大修館書店)、『刑務所の中』(花輪和一 青林工芸社)買う。あと『脳男』(首藤爪於 講談社)をおみやげでもらった。なんか読む本がたまってきたが、すべてバラードを延々と読みつづけてるせいである。

 海外注文していたDVDがいくつか届いた。中に最凶兵器と言われる"Shaloin Dolemite"が……これどうしてくれようかい。


9/23(土)
 終戦

 延長後半に入ったところで負けると思った。だって最低の試合なんだもん。本来なら4-1くらいで楽勝してるはずの試合が、気合いが入らないままダラダラやってて、決めるべきところで決めそこなって、いらんPKやって、ベンチが手こまねいてるだけじゃあよ。


9/25(月)
 どうも気合いの載らない日々が続く。こういうときはダウンロードしてきた『チャーリーズ・エンジェル』の予告編(25M)を見ることにしている。一日一回。いいなあドリューは。しかしなぜトム・グリーンなのか。
9/26(火)
 普段、試写状の来ない試写には行かないことにしている。入り口で嫌な思いをするのが嫌だからだ。でも、中にはどうしても行かなきゃならないこともあるんだよね。で、ほぼ確実に嫌な思いをさせられる羽目になる。今日も今日とて仏頂面の東宝の宣伝部員が……
 しかし、映画は良かった。あ、映画というのは『漂流街』だ。ミッチーLOVE!
9/27(水)
『I Miss me.』(香山リカ 青春出版社)いただく。毎度ありがとうございます。
9/28(木)
 いただきもの日記。『カルテ通信』(三和出版)、『木野評論』(青幻舎)。まいどありがとうございます。『木野評論』ははじめて見たけれど、なかなか気合いの入った立派なものだった。だがしかし、執筆意欲がわかん……

 夜、KSSにて英国映画の試写。

 帰ってから録画しておいた浦和1-2v札幌を見る。浦和、ひどいひどいとは聞いていたがまったくもって……札幌ももうちょっとサイドチェンジくらいしろって感じなんだが、浦和の方はそれ以上に何をやりたいのかまったくわからない。寄せられたらもう終わり。なんかインドネシア代表とかそういう感じだ。ときどき妙にうまいのがいてつっかけてみたりするんだが、そのボールを明後日の方にパスして攻撃終了。
 選手の自信喪失ぶりは著しくて、この点では大分の方にだいぶ分がありそうなんですが。


9/29(金)
 GAGAへ出かける。はじめて六本木一丁目駅で降りて歩いてみた。思った通りすごく近くなったね。六本木へ行く用事の6割はGAGAとFOXだから、随分と便利になった。南北線様々である。
 さて、で、見た映画は『バトルフィールド・アース』である。トラボルタ星人竹馬大変身で大活躍の巻! 見終わって3秒で忘れた。もう何も覚えてない。まあ全部秘宝に書いてあるような気がするなあ。
9/30(土)
 五輪決勝戦カメルーン2(5PK4)2スペイン てっきりスペインの楽勝かと思ったが、サッカーっつうのはわからんもんだ。でもよく考えたらわからんのは準々決勝から常識的には勝つハズのないゲームを三連勝してしまったカメルーンなのかもしれない。エトって凄かったですね。どこの選手なんだろう。

 永江朗氏がゲストで来るというんで、そんならDASACON行ってもいいかな、と思った。でも、あそこはそんな思いつきで入れてくれるような甘いコンベンションではないのだった(最低でも一週間前に申し込んでおかないとならない)。しょうがないんで前まで歩いていって、くんを呼び出す。Fire Houseでハンバーガー。


10/2(月)
 イマジカで試写。詳しくは書けないけど、天才かと思ったよオレは。問題はこの天才ぶりを評価できるプロデューサーが日本にいるのかってことなんだけどさ。

 帰り、渋谷に寄ってまんだらけで『ウィンドミル』1〜3(ハハ)、それに『真・麻雀伝説 風の雀吾』(みやぞえ郁雄)買う。いやー、懐かしいぞ『風の雀吾』! 大学時代以来だから20年ぶりくらいじゃないか?
『風の雀吾』は地上最強の麻雀漫画として一部では有名なスーパー伝奇SF麻雀劇画である。大学時代、誰か(たぶん中瀬だったと思う)が買ってきて、たちまちSF研で大流行したのであった。「死にゆく牌をつかんだな!」とかお面かぶりとか。
 さて、物語は麻雀界の刷新を目指し禁断の麻雀技を駆使する十二人の雀戦鬼と、彼らに父を殺されて復讐を誓う雀吾とが戦う……というこれだけ見ればごく普通の麻雀漫画なんだけど、凄いのは雀戦鬼たちの麻雀技である。相手の精神をあやつって無意識に天和を積みこます“天の和陣”、精神力で牌をすべて白に見せてしまう“白魔陣”。極めつけは雀戦鬼のリーダー、無天児の“太陽陣”。これは太陽を地球に引っ張り寄せてそのパワーで相手を焼き尽くすという技だ! 麻雀じゃねえぞこんなもん。無天児は言う。

 考えてみろ、今の麻雀界に俺達若者が理想に燃える場があるというのか! ただ一時の快楽に溺れ、精神を磨滅し、二度と帰らぬ時間をただ流されるまま無意味に送っている、それが今の麻雀界の姿なのだ!

 いやまったくそのとおりだよねえ、と言いながら日がな一日麻雀を打ちつづけた大学時代のぼくらなのだった。  


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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / kiichiro.yanashita@nifty.com