反省ばかりの7月

◎今月のお仕事 『ファビュラス・バーカー・ボーイズの映画欠席裁判』(洋泉社) 町山の生活を助けるために、買ってやってください。
         『変態性欲ノ心理』(R・v・クラフト=エビング 原書房)。抄訳です。そのせいではないのですが、ちょっと悔いの残る本になってしまいました。
         『ロバート・クラムBEST』(ロバート・クラム 河出書房新社)。編・訳。少々お高いですが、その価値はあると思います。      


7/16(火)
 昼過ぎには雨があがったので、フィルムセンターに『野良猫ロック セックスハンター』見に行く。梶芽衣子と安岡力也のデュエットという最終兵器を秘めた作品である。最近、昔の映画を見るたびに「今、どうやったらこういう映画を作れるんだろうか?」と考えてしまうことが多いんだが、『野良猫ロック』はかなりそのポイントが高い映画のひとつである。というか、梶芽衣子はどこにいるんだ? どうしたら今の女優は梶芽衣子の役をやれるんだろうか?
7/17(水)
 UIPにて『ズーランダー』。ベン・スティラーが洗脳されてマレーシア首相の暗殺をたくらむスーパーモデルを演じる。これはとっても良くできてますね。ベン・スティラーは映画を知っている。なんといっても89分という上映時間がすばらしい。綺羅星のごときカメオ出演だが、いちばん笑ったのは「では、私が審査をさせていただこう」と言って出てくる人。いちばん謎なのはリトル・キングスである。あれ、実在のバンドなんだろうか?
 この映画がシネパトス単館公開というのはあまりにも寂しい映画状況と言うべきか。

 終わったあと、洋泉社に寄って秘宝の見本誌を受け取る。


7/18(木)
 午前中はさる内覧試写へ。

 Mark Hodkinsonの"Life Sentence"読む。タイムズのフットボール記者である著者による「英国でいちばん成功していないプロ・フットボールクラブ」であるロッチデールのサポート記である。ロッチデールのダメさ加減というのはともかくすさまじく、92年のプロの歴史で最高位が三部リーグの9位。現在はもちろん四部(英国流に言えばthird division)で、昇格の望みなどかけらもない(アマチュア・リーグに降格しないようにするのがやっと)。
 で、タイムズの記者として英国中を飛びまわり、最高のフットボールを見ながらも真にサポートするのはロッチデール、という著者が一年にわたるサポート記を連載したコラム集なのである。これが泣ける。フットボールを愛するというのはどういうことか教えてくれる本である。こういうのがヨーロッパのフットボール文化なんだと思うんだけどな。


7/19(金)
 渋谷シネマ・ソサエティで『ゴースト・オブ・マーズ』のトークショー。一応本番前にもう一度見直しておこう、と思って2時45分の回に。しまったスタンプラリーのカード持ってくの忘れたよ! まあTシャツはトークショーの報酬としてもらっちゃったからいいんですけど。
 で、トークの方ですけど……なんかもひとつでしたね。来ていただいた方すいません。その後中原とちょっとだけ飲む。
7/20(土)
 午後、阿佐ヶ谷のあるぽらんにてビデオ上映会。今回は"Hollywood Babylon"。もちろんケネス・アンガー未公認のただのポルノ映画。上映会有志が作ってくれたパンフレットがとっても立派な出来だった……のはいいんだが、どうもプロジェクターの調子がもひとつだったみたいで。あれどうしたもんだろうか? やっぱりポルノを上映したのが良くなかったのか?
 次はたぶん9月とかにやります。次回はもうちょっとしっかり告知とかして。
7/23(火)〜28(日)
 ダブリン。

 まあ仕事の話はどうでもいいし、わりと不愉快なことばかりで。楽しかったのはドーキーに行ったこと。そう、フラン・オブライエンの忠実なる読者であるあなたなら当然知っているだろうドーキーだ。

 ドーキーはダブリンの南およそ十二マイルの海岸にある小さな町である。町とは言っても、町らしくない町で、家家は身を寄せ合い、ひっそりと、まるで眠りこんでいるかのようだ。通りは狭い。狭いうえに、はたして通りと言い切れるかどうか自明ではなく、通りと通りの交差もどうやらほんの偶然にばったり出会ったという趣がある。一見したところ閉店中のようにみえる小さな店はその実どれも営業中。通りすがりの旅人は思うだろう−−このみすぼらしい町並みは枢要にして卓越した第一級の場所に接するお隣さんというところか、と。そのとおり−−たしかにドーキーは聖なる景観に通ずる玄関先なのである。
           −−フラン・オブライエン『ドーキー古文書』大澤正佳訳

 もう本当にこのとおりそのものなので驚いたというかなんというか。「聖なる景観」というのは駅から5分ほど歩いて出る海岸で、すぐ目の前、100メートルくらい先に小さな丸い島があり、そこには九世紀に修道僧が立てたという小さな祠がそのままに残っているのである。

 アイルランドの田舎は素晴らしく落ちつく。せっかくなので某アイルランド系作家のゲラを持参して、ジョイスが通っていたというパブに座りこんで校正してきた。これでちょっぴり原稿にもアイルランドの風が吹き込まれたに違いあるまい。


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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / kiichiro.yanashita@nifty.com