◎今月のお仕事 『ファビュラス・バーカー・ボーイズの映画欠席裁判』(洋泉社) 町山の生活を助けるために、買ってやってください。
『変態性欲ノ心理』(R・v・クラフト=エビング 原書房)。抄訳です。そのせいではないのですが、ちょっと悔いの残る本になってしまいました。
『ロバート・クラムBEST』(ロバート・クラム 河出書房新社)。編・訳。少々お高いですが、その価値はあると思います。
終わったあと、洋泉社に寄って秘宝の見本誌を受け取る。
Mark Hodkinsonの"Life
Sentence"読む。タイムズのフットボール記者である著者による「英国でいちばん成功していないプロ・フットボールクラブ」であるロッチデールのサポート記である。ロッチデールのダメさ加減というのはともかくすさまじく、92年のプロの歴史で最高位が三部リーグの9位。現在はもちろん四部(英国流に言えばthird
division)で、昇格の望みなどかけらもない(アマチュア・リーグに降格しないようにするのがやっと)。
で、タイムズの記者として英国中を飛びまわり、最高のフットボールを見ながらも真にサポートするのはロッチデール、という著者が一年にわたるサポート記を連載したコラム集なのである。これが泣ける。フットボールを愛するというのはどういうことか教えてくれる本である。こういうのがヨーロッパのフットボール文化なんだと思うんだけどな。
まあ仕事の話はどうでもいいし、わりと不愉快なことばかりで。楽しかったのはドーキーに行ったこと。そう、フラン・オブライエンの忠実なる読者であるあなたなら当然知っているだろうドーキーだ。
ドーキーはダブリンの南およそ十二マイルの海岸にある小さな町である。町とは言っても、町らしくない町で、家家は身を寄せ合い、ひっそりと、まるで眠りこんでいるかのようだ。通りは狭い。狭いうえに、はたして通りと言い切れるかどうか自明ではなく、通りと通りの交差もどうやらほんの偶然にばったり出会ったという趣がある。一見したところ閉店中のようにみえる小さな店はその実どれも営業中。通りすがりの旅人は思うだろう−−このみすぼらしい町並みは枢要にして卓越した第一級の場所に接するお隣さんというところか、と。そのとおり−−たしかにドーキーは聖なる景観に通ずる玄関先なのである。
−−フラン・オブライエン『ドーキー古文書』大澤正佳訳
もう本当にこのとおりそのものなので驚いたというかなんというか。「聖なる景観」というのは駅から5分ほど歩いて出る海岸で、すぐ目の前、100メートルくらい先に小さな丸い島があり、そこには九世紀に修道僧が立てたという小さな祠がそのままに残っているのである。
アイルランドの田舎は素晴らしく落ちつく。せっかくなので某アイルランド系作家のゲラを持参して、ジョイスが通っていたというパブに座りこんで校正してきた。これでちょっぴり原稿にもアイルランドの風が吹き込まれたに違いあるまい。