吉行由実は日本のガーリィ・ムービーだ!
◎今月のお仕事 『ロバート・クラムBEST』(ロバート・クラム 河出書房新社)編・訳。少々お高いですが、その価値はあると思います。
『地球礁』(R・A・ラファティ 河出書房新社) やっと本になったよ! 感想リンク集もご参考に。
1/16(木)
『ぼくとすずなのいた夏』(野田ゆうじ マガジン・マガジン)いただく。〈ウォーB組〉に連載されているらしい。なんか変な漫画だ。
洋泉社に出かけて編集会議に参加。たいへん疲れた。企画を出すのは楽しい。問題は企画を出すと原稿を書かなきゃならん、という点にある。
1/17(金)
ソニーにて『Mr.ディーズ』見る。フランク・キャプラ監督の『オペラ・ハット』のアダム・サンドラー主演によるリメイク。ジェームズ・スチュアートがアダム・サンドラーって時点でもう何か捨てているものがある。この映画、プレスとか字幕とかでなぜかサンドラーを「アニキ」と呼んでおり、どうも無理矢理こういう呼び名を定着させようとしているらしい(映画の中でDude!とか呼ばれるわけではもちろんない)。
ここにはある意味、今の映画興行の問題点が露呈しているようにも思う。だって正直なとこ、いくらウィノナ・ライダーが出てたって、サンドラーがイノセントな大富豪を演じるハートフルなコメディに1800円払おうと思うかね? まあ600円だろう。それなら損はしない。でも1800円払わせるためには、これをイベント・ムービーとして宣伝しなきゃならない−−そう、いまやすべての映画はイベント・ムービーなのだ。そうならない映画はシネパトス送りってわけ。それを避けるためには……アニキと呼べってか? でもなあ。しかしなあ、いくらなんでもそれはあり得んだろう。
1/19(日)
自由が丘武蔵野館で〈吉行由実特集〉。本日は『発情娘 糸引き生下着』
自由が丘に行くのはもうずいぶん久しぶりになる。駅前がまったくわからなくて、思わず駅のまわりを一回りしてしまった。雨降ってるのに。しかしもちろん劇場のまわりは何も変化していなかった。何もかも懐かしい……
映画は「林由美香、最後のアイドル映画」と吉行監督本人が言うとおり林由美香がとってもキュートな一品。本当に可愛い女なのである。これを見ていて思ったが、林由美香というのは吉行監督にとっては自分自身を託せる相手、「こうなりたかった自分自身」なのだなあ。なお、林由美香の内面は吉行由実(の外面)みたいなので、二人が人格を取り替えればすべてうまくいく(らしい)。
1/20(月)
洋泉社に寄って「秘宝」の最新号を受け取る。
その足で今日も自由が丘武蔵野館。〈吉行由実特集〉は『新妻不倫 背中で感じる指先』。これはある意味、ものすごく嫌な映画である。林由美香と吉行由実の姉妹がギリギリと嫌み攻撃をしあうところがとっても怖い。「仲直りしたいんだったら、(浮気の)シラを切りとおしなさい」っていうアドバイスも怖い。
吉行監督の作品世界はよく「少女漫画的」と評されたりするわけだけど、ぼくはこれは真にガーリィ・ムービーなんだと思う。とりわけインテリアへのこだわりなんかに顕著だ。つまり、ソフィア・コッポラなんかの仲間なのね(ソフィア・コッポラ並の映画、という意味ではないよ)。その意味で、吉行監督の映画をもっとも正しく評価できるのはミルクマン斉藤とか長谷川町蔵とかだと思うんだが、どうよ? そこら辺の人もぜひ見て欲しいんですけど。
その後新宿へ出て、吉行監督、切通理作らと3時くらいまで飲む。
1/21(火)
河村隆一の小説『ガラスのメロディ』(角川文庫)を読む。いや、これ読んでいない人がいたら強くお勧めしておく。本当すげえ。ある意味、中原のライバルかも。
と思ったんで試写で会った中原にあげちゃいました。中原くん、「おもしろいなあ。××しちゃおうかな」などと不穏なことを。
1/22(水)
シネマ下北沢へ。「刑事祭り」の佐々木監督、中村愛美の舞台挨拶があるので、ここで新年会をしようということになっていたのである。ついでに映画も見ようかと思ってきてみたが当然のごとく満員札止め。ハハ。
舞台挨拶だけは覗いたが佐々木監督の昔話(映画監督版「トキワ荘」物語)が抱腹絶倒におもしろくて馬鹿受け。しかし、観客にはほとんど共有されていなかったような気もするなあ。もったいない。ちなみにその後の新年会ではさらに激烈におもしろい昔話が披露されていたのだった。ぜひ『月の砂漠』公開時かなんかに……
なお、当然打ち上げへの登場が予定されていたミスター“だじゃれ刑事”はよそのパーティに行っており、最後まで来なかった。中村愛美嬢など「中原さん、早く来ないかなあ」と心待ちにしていたにもかかわらず。まったく、女を泣かして罪な男だぜ。
1/23(木)
amazonから"Ghastly Ones"(Jimmy McDonough acappella)届く。これ、なんとアンディ・ミリガン(映画を一本1万ドルで作る男)の研究書。「そんなばかな!」と思った次の瞬間には購入ボタンを押していました。
今日はちょっと早くに自由が丘武蔵野館に出かける。〈吉行由実特集〉の前にやっている『黄泉がえり』を見るためだ。塩田演出は草なぎくんにいかに演技させないかってことに心を配っていて、実際かなりのところまで成功している。でもクライマックスで演技しちゃうんだよなあ。すべて台無し。ま、なんにせよ死人がゾロゾロ甦ってきてるのに、誰一人としてパニックに陥らずニコニコしてるだけ、みたいな映画はどうも信用できん。少なくとも葬式のときに帰ってきたら棺桶の中を覗かないか?
そのまま居座ってレイトで吉行由実監督作『姉妹どんぶり 抜かずに中で』。「PG」の97年ベスト10二位、監督賞受賞作品である。期待にたがわぬ大傑作。最後A Movieと出るんじゃないかと思いました。最後はどこで終わってもいいだろうという感じだけど、結婚して見違えるほど美人になった貴奈子が花に水をやってるところで終わってる方がきれいだったんじゃないかと思う。でもま、A Movieなので。あのエピローグはなければならないのである。
1/24(金)
上野オークラにて『小林ひとみ 抱きたい女、抱かれたい女』、『不倫妻 愛されたい想い』それに94年の旧作『美巨乳 はさみこむ』。もちろん吉行由実監督の新作『不倫妻〜』を見に行ったわけである。「わいの左まがりのデカブツが、奥の奥までお邪魔しまっせ!」なんてなセリフを聞かされると、「今はいつなんだろうか? ここはどこなのか?」と頭がクラクラする。こういうのと吉行監督作みたいな「映画」が並んでかかってしまう世界というのは……
ピンク映画としては……と評されることが多い吉行作品だけど、『不倫妻〜』はけっこうそういうお客も満足の作品かもしれない。もちろん無垢で可愛い主人公、というのはいつもと同じ。ぼくなんかはこういう順序立てのある濡れ場の方がいいんだけどな。佐々木浩久監督の友情出演に笑った。
あと『小林ひとみ〜』はなんかものすごい映画だった。ヒロインに惹かれる後輩が「家庭で苦しんでいる」という意味が「サドの若妻に足の裏を舐めさせられている」んだったりするのはなんなんだろうか。もはやメタファーを突き抜けた文字どおりの世界、と言うか。
最後、靴とパンツを脱いで入水するというのも凄かったな。ちょっとシラフではありえない感じの演出。
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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / kiichiro.yanashita@nifty.com