映画だけはいっぱい見ているが……

◎今月のお仕事 『ロバート・クラムBEST』(ロバート・クラム 河出書房新社)編・訳。少々お高いですが、その価値はあると思います。
          『地球礁』(R・A・ラファティ 河出書房新社) やっと本になったよ! 感想リンク集もご参考に。


3/17(月)
 ようよう確定申告を済ませたのち、上野オークラへ走って二本見る。『熱い肉体、濡れた一夜』と『痴漢暴行バス しごく』(三本目はパス)。その後銀座へまわり、ニュー東宝シネマ1で『ノー・グッド・シングス』。監督ボブ・ラファエルソン、脚本スティーヴ・バランシック(『甘い毒』)、原作ダシール・ハメット、出演サミュエル・L・ジャクソン、ミラ・ジョボヴィッチ、ステラン・スカルスゲールド シブイ。あまりにもシブすぎる(なんか、名前が長ったらしい人ばかりだというところにポイントが)。完全に新宿ローヤルの世界である。客がまた新宿ローヤルな感じなんだ。10人ぐらいしかいないんだけど。
 ミラ・ジョボヴィッチは唇がいやらしいなあ。
3/18(火)
 朝、本郷三丁目のアスミック試写室に出かけて『めぐりあう時間たち』を見る。付け鼻でヴァージニア・ウルフに扮したニコル・キッドマンとジュリアン・ムーア、メリル・ストリープの三人が三時代の女性を演じる演技合戦映画。なぜかニコル・キッドマンがアカデミー主演女優賞に、ジュリアン・ムーアが助演女優賞にノミネートされている(実際には、三人はまったく同格)。
 ちょっと分かりやすすぎるのが難かな。まあ、悪い映画じゃない。なお演技合戦についてはジュリアン・ムーアが圧倒的にいちばんいいように見えるんですが。

 夜、TCCにて内覧試写。

『社会派くんがゆく!激動編』(唐沢俊一+村崎百郎 アスペクト)いただく。

 ところで今スティーヴン・キングの『ドリームキャッチャー』を読んでいるんだけど、これがメチャクチャおもしろくってもう夢中。この本、ローレンス・カスダン監督で映画化されてるんだけど、この小説を映画化できるのはこの世にM・ナイト・シャマランしかいない、と思うのはオレだけか。特にトイレからものすごい音が聞こえてきて恐怖に震える場面とか、完璧にシャマラン・タッチなんですけど。


3/19(水)
 赤坂の国際交流基金のインド映画祭に出かけて『ラガーン〜クリケット大戦争』見る。3時間40分の大長編クリケット映画である。植民地時代、インドの農民たちは英国人の厳しい年貢(ラガーン)取り立てに苦しんでいた。2年続きの凶作で食うものもなくなり、なんとか年貢を免除してもらえまいかと直訴に行くがけんもほろろ。それならクリケットで勝負だ! クリケットで我々が勝ったら年貢を無料にしろ! というわけでど素人軍団が英国チームにクリケットで挑むわけですな。
 王道そのものの展開で、もちろん歌と踊りが入る。ストーリーは結構かったるい(なんせ休憩の時点ではまだメンバー全員揃ってない)んだけど、最後1時間延々と続くクリケット大会は超盛り上がる。嘘だと思うかもしれないが、生まれてはじめてクリケットってスポーツをおもしろいと思ったよ。
3/20(木)
 シネロマン池袋に出かけて『白襦袢レズ 熟女ねぶり』『味見したい人妻たち』『玲子の秘密 多淫症の女』と三本見る。三本も見ると痴漢さんが寄ってきたり大声で実況中継はじめるジジイがいたりもう大変だ。こんな思いまでしてなんでピンクなんか見てるんだってことになるわけだが……いい映画はあるんだが、正直見合う映画体験だとはとても言えない。でも一方で、そこでしか得られない体験もやはりあるんだな。それはたとえば流れ作業的に作られた工業産品の中にある使い古しの映画的クリシェが妙に心にひっかかったりするから、かもしれない。つまりダメな映画のダメさを愛でているわけで意欲的なピンク映画作家の方々にはすいません、と謝るよりない。すいません。でも『味見したい人妻たち』はたしかによくできてましたよ。

 6時半からヤマハホールにて『エデンより彼方に』。トッド・ヘインズがダグラス・サークの"All that heaven allows"をリメイクしたもの。オレのために作ったような映画だよね、どう考えても。ちなみにこの映画はすでにR・W・ファスビンダーが『不安と魂』としてリメイクしている。ジョン・ウォーターズの『ポリエステル』もこれが元ネタだ。ファスビンダーとウォーターズ、ヘインズ。全部つながるでしょ? ヘインズ版は音楽とテクニカラーの色調でサークを完全に再現する実験映画みたいな作品で、コメディすれずれの大げさな演技が炸裂する。完璧なマニエリズム。クリシェだけの世界。映画ってこういうもんだろ! リアリズムくそくらえ!
 ちなみに原題は"Far from Heaven"なんで、サークにあわせるなら「天はるか遠く」とでもしたいところだ。


3/21(金)
 本田唯一氏宅にて〈帰ってきた刑事まつり〉吉行組『発情女刑事』の打ち上げパーティ。忙しい主演男優と女優はおらず、暇な脇役ばかり(=中年オタク軍団)が占拠して騒いでしまいました。ところで福島では映画監督と言えば渡辺文樹なのだそうで、吉行由実さんが身内に「映画監督になった」と言うと「ああ、渡辺さんみたいな」と言われてしまったのだとか。文樹みたいな、ってどういうイメージ持ってるんですかね。
 人が揃ったところでビデオで作品見ましたが……いやあこれは酷い、酷いです。とても人様にお見せできるもんじゃありません−−オレの演技が。あ、作品は吉行趣味全開で充分楽しめると思いますよ。オレ以外の人にはね……
3/22(土)
 週刊新潮の記者にポランスキーの話をしました。

『ファウンテン・ソサエティ』(ウェス・クレイヴン ソニー・マガジンズ)いただく。ウェス・クレイヴンの小説です。まったく、ソニー・マガジンズって謎の本ばかり出すなあ。

 ずいぶん前に連絡いただいていたのにすっかり忘れていましたが、オンライン書店Clover Booksでギデオン・サムズの書いた史上初のパンク小説『ザ・パンク』わずかに残った流通在庫を販売しております(映画のTシャツその他レア品もあるんでごいっしょにどうぞ)。あとアートマニアも滝本マニア必見ですんで。


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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / kiichiro.yanashita@nifty.com