安い人たちの話
◎最近のお仕事 『興行師たちの映画史』(青土社)これから10年のポジション・ペーパーです。サポート・ページもあります。
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『ケルベロス第五の首』(ジーン・ウルフ 国書刊行会) ようやく発売になりました。すべてわたしの不徳のいたすところであります。お待たせしました。勝手に広報部も(勝手に)よろしく。
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11/2(火)
神楽坂で本田透@しろはた、安田理央氏他と『鬼畜ゲーム大全』の打ち上げ。本田くんは風邪でひいひい言ってるところを呼び出してしまった。悪いことをしましたね。安田さんとは10年ぶりぐらいの再会です。いやあ懐かしい。mixiでも津田日記リンクス同窓会計画とか進んでいるようで、なんかあのウェブ創生期の熱い感じを思い出したりしているところであります。
あ、そんで11/17にはLoft+1で〈鬼畜祭り〜遺作ホンハイエ〉をやります。「LOFT」で「鬼畜」というと懐かしの〈鬼畜ナイト〉ですが、青山さんはもうこの世にいないわけですね……(日記アップする前に終わっちゃったよ……)
11/4(木)
池袋シネマ・サンシャインで『ソウ』見る。うーん、詳しくは『秘宝』に書きますが、なんかこういう話見ると「そんなもん、誰が犯人でもええやん」と思ってしまうんだよね。基本的にミステリに向いてない人間なのかもしれない。あと、全然密室劇にならず、すぐに過去の話とか、外での出来事とかはじめてしまうのが興ざめもはなはだしい。もうちょっと脚本を練って欲しいものである。
11/5(金)
カナダ大使館でガイ・マディン二本立て。『ギムリ・ホスピタル』と『アークエンジェル』。どちらもかつてパルコで上映された作品ですね。今年のFILMEXでガイ・マディン特集が組まれているわけですが、そこでは上映されない初期作品の試写があったわけ。場内にはガイ・マディンがどういう監督なのかまったくわかっていなさそうなおばさんとか女子高生とかいてなんか妙な雰囲気。
ガイ・マディンみたいな監督が放置されたままだというのはすごく難しい問題で、というのはどうしてもこの業界って「次の監督は誰だ!?」みたいなことばっかり注目して、次々に新しい人間を引っ張りだそうとするわけじゃないですか。で、二、三本公開されたことのある、ちょっと妙な(既存の文脈に乗りにくい)映画とかは放置されがちになってしまう。シネフィル路線に乗れない(蓮實重彦に誉めてもらえない)映画をどうやって救っていくのか、というのがこれからの課題です(誰の?)
で、話をまったく思い出せないまま久しぶりに見たわけですが、話を思い出せない理由がわかったよ。話、なかったんだな。あとムルナウとドライヤーが好きなのはよくわかった。
11/6(土)
大林千茱萸宅でカレー・パーティ。スリランカ・カレーの会ということですが、ほとんどmixiオフでした。コスプレもありました。ま、そういうことで。
11/7(日)
中野で井土紀州氏と会う。井土さんとは会うといつも立ち話みたいに殺人話をしてるんですが、今日はちゃんと仕事として会いに行った。そして殺人話をした。気がつくと三時間たっていた。ああ、もうどうしようもない人たち。
11/8(月)
講談社の会議室に行って戸梶圭太氏と対談。戸梶氏のウェブ・ページ、トカジャングルが講談社より単行本化されるということで、そこに収録される対談をしにいった。たぶん戸梶圭太の愛読者は戸梶氏について一定のイメージがあることと思う。詳しくは書きませんが、ぼくの場合は思っていたのとはだいぶ違う人となりでした。もちろんすっごくナイスガイですよ。いろいろと安い人たちの話をする。「あ、これは書けないんですけど……」という話ばっかりだったような気もしますが、はたしてど本当に使えるのか? よくわかりません。
終わったあと、さらに打ち上げでさらに安い人の話でもりあがる。
11/9(火)
今日は試写を二本。久しぶりにTCCに出かけて『赤裸特工』見る。チン・シュウタンの女闘美アクション。というか少女を誘拐拉致監禁洗脳してセックスも殺しもバリバリの美しき暗殺者にしたてる秘密組織を描いたバトル・ロワイヤル……みたいな話。おもしろそうでしょ? でも製作・脚本バリー・ウォンだからね……
で、この映画に対する評としては「前半最高↑ 後半最低↓」みたいなのが一般的なんだけど、ぼくは意外に後半もおもしろかった。いやたしかに最強の女殺し屋が異常にしょぼくなっちゃうとかそういう部分の腰砕け展開はあるんだけど、そこも含めてバリー・ウォンだからね。なぜか媚薬カプセルを打たれてエロエロになっちゃうとか、なんでやねんの連発で大いに笑った。
さらに渋谷へ移動してフランスのアニメ『ベルヴィル・ランデブー』見る。配給元の人は「フリーク映画だから柳下さんも見てください!」とぼくを誘うのである。いくらなんでもそれはないよね……いやおもしろかったけど。
『エンベディング』(イアン・ワトスン 国書刊行会)読む。これは面白かった。ぼくには傑作だと思えた−−思い出したのは、相前後して読んだ『万物理論』(グレッグ・イーガン 創元SF文庫)である。実はこれ、テーマ的にはほぼパラレルというか、同じ話なんだよね。要するに認識によって世界を変えるという。で、イーガンに比べて、ワトスンの結末はあまりに尻すぼみ、というか腰砕けということになるらしい。でも、ぼくには逆に、ワトスンの方がリアリティあるように思えた(イーガンの方があまりに無理ある結末だと思えて、そこまでの興奮がちょっと醒めてしまった)。ここら辺の感じ方が一般的なのかどうかわからないが、このショボい、というか地に足のついた展開こそがイギリスSFの醍醐味のような気がするんだよね。この二作と、拙訳『ケルベロス第五の首』を合わせ、今年の海外SFは「言語によって世界を構築すること」がテーマだったということになるのではなかろうか。ってそれはオレのテーマなのか。
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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 /
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