さらにFilMeXは続く

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11/24(水)
今日も今日とてFILMeX。本日はガイ・マディンの『臆病者はひざまずく』とジョニー・トーの新作『柔道龍虎榜』

『臆病者はひざまずく』(Hands of Orlacのリメイクであるところの自伝!)というのもたいがいすごいんだけど、おまけでついていた短篇Sombra Dolorosaはさらに強烈だった。夫が死んでしまった未亡人が死神El Muertoとルチャ・リブレ対決する。日蝕前に無敵のエル・ムエルトを倒すと、触のあいだだけは死神に言うことを聞かせられるのだ! 死神がなぜかルチャ・レスラーで、相棒レスラーが途中で救援に入ってきたりして、未亡人が勝つとマスクをはぎとられた死神が夫の死体を食う! これがいつものサイレント・スタイルで語られるのである。何ひとつ意味がわからない。すごい。すごすぎるぞガイ・マディン。

 その後内覧試写を一本見てからLoft+1でTrash Mountain Event。今回はコフィン・ジョー特集でした。最後のトラマンイベントっつーことで、なんかヤケクソみたいな安値でDVD売ってたのに全然買ってくれなかった。俺たちのセールストークが足りなかったのだろうか。んが。


11/26(金)
 ガイ・マディンにインタビュー。まあなんか楽しくインタビューしました。秘宝の田野辺くんのプレゼントが異常に受けていた。マディンと田野辺くんとでは通じ合うところはないかもしれないと思ったが、こども商事路線も極めればそれなりに通じてしまうのである。どんな道でも、極めた達人というのは普遍性あるのだなあ、と思ったことであるよ。
 あと面白かったのはガイ・マディンがしきりに「primitiveな映画を目指す」と言っていたことで、これって高橋洋が言う「地下映画」のことなのではなかろうか!? 二人を会わせてみたいなあ、などと思いました。
11/27(土)
 上野オークラで『スケベすぎる女ども(スケベ美女 舐め尽す)』『濃厚不倫とられた女』の二本をアップリンクのN氏と一緒に見る。実は林由美香二本立てである。『濃厚不倫』の林由美香はすごく良い。ちょっといつもとイメージが違い、実年齢に近い主婦役を素直に演じている。石川欣、佐野和宏の三人のやりとりは安心して見ていられる。安心できないのは監督が鬼才女池充だというところで、映画がはじまってすぐ林由美香と佐野和宏の無音の濡れ場があるのだが、その途端に場内の客がバタバタと立って出ていったのには笑った(ちなみにその後はそういう無意味な遊びはないのでわりと安心して見ていられる)。

 しかしそんなことにまったく動じなかったのが前の椅子に座っていた大きな荷物を持ったイラン人二人組である。まったく映画を見る様子がなく、しょっちゅう出たり入ったり、ぺちゃくちゃ喋ったり(うるさいので椅子をけっ飛ばした)、電話がかかってきて出ていって後ろの方の席で別なイラン人と会ってたりしてていたのだが、あれ何をやりとりしてたんだ? ホモ痴漢だけでもヤバイのに、イラン人の密売屋まで来ちゃうわけ?
 もう一本『スケベすぎる女ども』というのは脚本・やまだないとというので見たが、まあどうということはない映画。

 N氏と韓国料理屋で飯を食って別れたあと、銀座で『Mr.インクレディブル』の先行を見る。


11/28(日)
 FILMeXのクロージング上映。ガイ・マディンの『ドラキュラ;乙女の日記より』を見る。これはバレエ映画。なのでさすがにサイレントではありません。音楽はマーラーで、字幕は入ってるからサウンド版というところかな。
 ブラム・ストーカーの『ドラキュラ』のほぼ忠実な映画化(バレエだけど)なんだけど、ドラキュラ役が中国人ダンサーだったりして、ドラキュラ自体が黄禍の暗喩とされているのがおもしろかった。マディン本人は「原作も人種差別的だったし〜」と言っていたので、別に新解釈というわけでもないらしいが。
11/29(月)
 しかしまだFILMeXは終わらないのである。関連企画としてアテネ・フランセで行われた特別上映会〈Italian Kings of the B's 恐怖の映画史イタリア編〉に行かなければならない。本日の上映はエンツォ・カステラッリの『地獄のバスターズ』とルチオ・フルチの禁断のサイコキラーもの『マッキラー』

 ぼく自身は別にイタリア・ホラーにそんなに詳しいわけでもないのですが、トークに引っ張り出されてさあ大変。しかも客席にはぼくよりも百万倍くらい詳しい人たちが控えている。ガクブル。というわけですがしょうがないので高橋洋、中原昌也と一緒に登壇して適当に喋りました。今回の上映会のテーマはフェルナンド・ディ・レオ特集ということなんで、Trash Mountain Videoのディ・レオ作品を見せたりなんかもする。それにしても、フルチのイタリア語無字幕作品(しかもビデオも出ている)なんか見に来る人間、知り合いしかいないだろ!?と思っていたらほぼ満員の盛況でびっくり。シネフィルの力あなどりがたし。で、もう一本ディ・レオの映画(今回の目玉)があったんだが、それはパスして一路新宿へ……

 またしてもLoft+1にあらわれてラス・メイヤー追悼イベ。またしても中原昌也と二人で登壇。いやもう、すっかりコンビ活動になっちゃってますね。今回は『恍惚の七分間』を見せたり、Double-D Avengerを見せたりしながらありし日のメイヤーじいさんを偲ぶという感じです。巨乳映画ということで何万回目かわからないけどドリス・ウィッシュマン(チェスティ・モーガン映画)を見せたらやっぱり受けていた。もうさすがに世界中の人が見ただろうと思っていたが、まだ見せたりなかったらしい。これからは何かイベントがあるときには必ず見せるようにしよう。あと、もうちょっと無関係な巨乳映像とかいっぱい持っていけば良かった(思いつかなかったオレが愚かだった)。


11/30(火)
 本日も〈恐怖の映画史イタリア編〉。今日は頑張って全部見た。『ヨーロッパのある都市の警察のシークレット・ファイルより』『幽霊屋敷の蛇淫』、黒沢清と篠崎誠というトークをはさんで『ミラノ、カリブロ9』である。さすがにこれは疲れた。
『ヨーロッパのある都市の〜』はほとんどハッタリでつけただけ、みたいなタイトルが凄いんだけど、中身はまさかこんな!という話。『幽霊屋敷の蛇淫』はもちろんアンソニー・M・ドーソンの映画なんだけど、もうピッカピッカの素晴らしいプリントだったので映画まで立派に見えた。素晴らしい。

 フェルナンド・ディ・レオの『ミラノ、カリブロ9』は、マフィアの金30万ドルをネコババした容疑をかけられた男が三年ぶりに出所してきて……というお話。今回の上映会、タランティーノ一押しの映画作家ディ・レオの特集ということなんだけど、これはすごくタイトな脚本で締まったハードボイルド映画なのである。ストリッパーの恋人がバーバラ・ブーシェだったりして、この安い感じがまた……そんな感じで見てると、いきなり最後で仰天する。ラテンの熱い血が炸裂して、ライバルの男が「この男を尊敬しろ!」てな調子で吠えまくるのである。ハードボイルドのかけらもねえ。イタリア人にダンディズムは似合わないね。イタリアは、やっぱ東映だよなあ。「オレは仁義にもとるようなことはできねえ…」「本物の博徒はもういなくなっちまった…」みたいなセリフがいっぱいありました。

 終わった後は黒沢清、高橋洋、篠崎誠という三巨頭を囲んで打ち上げ。


12/3(金)
 白水社にゲラを届ける。

 その後新宿に出かけ『ハウルの動く城』。なんなんだ? ともかくラストが凄すぎて、他のことはどうでも良くなってしまいましたよ。ジャンプの打ち切りマンガみたいだなあ、と思いましたよ。

 東京堂で『願い星、叶い星』(アルフレッド・ベスター 河出書房新社)、『黒い看護婦』(森功 新潮社)、『闘争領域の拡大』(ミシェル・ウェルベック 角川書店)購入。あと別冊宝島で『あなたの隣の指名手配犯!』も買いました。


12/4(土)
 池袋で『ゴジラFINAL WARS』
 数ある今年の底抜け特撮映画の中で、本当に最悪なのはどれかを確かめずにはいられなくなったんで、こうなったら毒食らわば皿までだ!

 で、これって結構誉めてる人が多いんだよね。江戸木純なんか絶賛評を書いてたし。ぼくにはどうにも理解できなかったんだけど、いくつか評を読んでるうちになんとなく理解されてきた。あの北村龍平のどうしようもなくダサいギャグとリズムの悪い物語進行が苦にならない人もいるんだなあ。ぼくはそもそも徹底的にハッピーなゴジラ映画なんて見たくもないけど、それを許したとしたって北村龍平のダサいセンスは認めたくないね。


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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / kiichiro.yanashita@nifty.com