いろいろインタビュー日記

◎最近のお仕事 『興行師たちの映画史』(青土社)サポート・ページもあります。
『ケルベロス第五の首』(ジーン・ウルフ 国書刊行会)勝手に広報部も(勝手に)よろしく。
『アヤックスの戦争』(サイモン・クーパー 白水社)を翻訳しました。第二次世界大戦とユダヤ人の運命とサッカーに関する本です。はっきり言って、ニッチです。
『輝く断片』(シオドア・スタージョン 河出書房新社)で中編を二編翻訳しています。キモメン文学の金字塔ですよ。

『たまもの』(2004年度ピンク大賞受賞)の音声コメンタリーにいまおかしんじ監督、林由美香さんと一緒に参加しています。まだ御覧になっていない方は、是非林由美香さんの姿を見てあげてください。


9/12(月)
 渋谷シネ・ラセットの林由美香追悼特集へ。本日は『本番裏快楽』『痴漢女捜査官・お尻で勝負』の二本立て。『本番裏快楽』は隠れた名作ですね。ちょっと『赤い髪の女』を思い出したりしました。わずか一晩の話なんですが、セックスばっかりやってるうちにどんどん二人の距離が近くなっていく、というある意味ポルノの王道の映画。ちょっとクサいストーリーも含めて往年のロマンポルノっぽい。
9/16(金)

『イエスタデイ、ワンスモア』『Mr.&Mrs.スミス』を見る。『イエスタデイ、ワンスモア』はジョニー・トー監督の2004年作品。『Mr.&Mrs.スミス』はブラピとアンジェリーナ・ジョリーの共演作なんだが、この二本、実は同じ映画である。『イエスタデイ〜』の方は泥棒夫婦もので『Mr.&Mrs.スミス』は殺し屋夫婦もの。どっちもロマンチック・コメディ。 たぶん予算は百倍くらい違うと思うけど、映画としては『イエスタデイ、ワンスモア』の方がはるかに面白い。 ロマンチック・コメディって、やっぱり男優の力なんだよなあ。 じゃじゃ馬な女優の魅力をいかに受けられるかで男優の格が問われるわけで、この二本の場合だと
サミー・チャン<<<アンジェリーナ・ジョリー
アンディ・ラウ>>>>>ブラッド・ピット
ジョニー・トー>>>越えられない壁>>>ダグ・リーマン
というくらい力の差がある。ていうか、アンディ・ラウっていい役者だなあ。 ブラピではとうていジョリーは御せない感じだけどが、しかし今のアメリカにジョリーを手玉に取れる役者がいるのかというとそれは大いに疑問。

ジョニー・トーはいつハリウッドに呼ばれるのだろう。


9/18(日)
 有楽町朝日ホールで開催中の〈ドイツ時代のラングとムルナウ〉に出かける。見たい映画はいろいろあったのだが、忙しさに取り紛れて放置していたのである。とある(驚くべき)筋からなぜかチケットを売りつけられたので、これさいわいと見に行くことにしたのであった。で、今日は三本。
『ハラキリ』『ドクトル・マブゼ』二部作。
『ハラキリ』はありとあらゆるところが間違っているせいで何が間違っているのかもわからないようなフリクショナルな傑作だったが、しかし元ネタである『マダム・バタフライ』よりはちゃんとしている−−ピンカートンが自分勝手な馬鹿男だということを描いている−−ような気もするが、あるいはそんなことはどうでもいいことなのかもしれぬ。
『ドクトル・マブゼ』には高橋洋さんが来ていました。さすがだ。
9/19(月)
 今日も朝日ホール。本日は『ニーベルンゲン』二部作。やあ、これは第一部「ジークフリートの死」の方が圧倒的に面白いですね。
 ところで第一部では一応ジークフリートが英雄で、彼を騙し討ちにして殺すハーゲンが悪者なんだけど、映画を見ているとハーゲンが圧倒的に格好いい。狩りの前夜、一人槍の素振りをして翌日に備える場面。あるいは逆光でシルエットになり、槍の穂先だけが太陽の光を受けて輝く場面。悪は魅力的なのである。悪は人間的だから? それともラングが悪への感性を持っているからだろうか。

 その足で阿佐ヶ谷へ。ラピュタ阿佐ヶ谷の70年代劇画映画特集で『玉割り人ゆき』見る。いやあ、拓ボン大活躍映画。最近は牧口雄二監督リスペクトをますます強めておりますが、これはもちろん全編見所だらけの大傑作。映画、かくあるべし。


9/21(水)
 とある打ち合わせで会ったビデオのカメラマンがすごいSFファンでびっくりした。
「ウルフの大ファンだったから、『ケルベロス』が出たときはすごく感激したんですよー。〈新しい太陽の書〉しか読めないですけどね。国書はレムコレも買ってますよ〜 レム大ファンですから。古本で『泰平ヨン』とかも探して読みましたし〜」
 いやあ、こんなこと(SFファンの集まり以外で)言われたのはじめてだったんで感動したよ。
「じゃあ、次のウルフ短編集もよろしくおねがいします」
「待ってますよ! 巻きでおねがいします!

 ……巻きでがんばります!

 Loft+1の切り株派イベントに出かける。今回は出演者その1ということで、切り株なビデオを持って行く。いや、これ自体は古典的なものだったんだけど、他の人が持ってきてるのとはだいぶん傾向が違ったためか、えらく新鮮な反応でした。
 あ、ちなみに持ってったのはLong Jeane Silverのビデオです。例によって反則技だが(笑)


9/22(木)
〈TITLE〉でニューヨーク+映画という特集をやるというので、座談会に出席してニューヨークの映画の話をする。お相手は芝山幹郎、中原昌也そしてぼく。ということは当然ぼくは芝山さんと中原のあいだの通訳をするために呼ばれたと思われるのだが、実際には中原は結構気配りするタイプで芝山さんに合わせてくるので、ぼくがいちばん出鱈目な話をしていたような気がする。ちなみに「NY映画ベスト5を」と言われたので。

  1. 『哀しみの街角』
  2. 『マドンナのスーザンを探して』
  3. 『ハピネス』
  4. 『モンド・ニューヨーク』
  5. 『サマー・オブ・サム』

 というのを挙げる。芝山さんが『モンド・ニューヨーク』の中身を知りたがるので「つまんないから別に見なくていいです……」と言っておいた。やっぱり『ウォーホールのBAD』にしとけば良かったかなあ。

 文春の金で豪華な中華を食ったのち、新宿に移動して本田透お誕生会に顔を出す。『電波大戦』の打ち上げを兼ねているので竹熊健太郎、倉田英之の両巨頭を筆頭に男、男、男の世界。淀川さん大喜び。本田くんもプレゼントの山をもらって大喜びでした。
 その後さらに別飲み会に行ってここで中原と再会。朝まで飲みつづける。アル中……


9/26(月)
 朝、フランク・ミラーの取材。もうeiga.comで掲載されていますね。ミラー、あまりにも普通の人だったんで、一瞬部屋を間違えたかと思いました。それにしてもいかにもGAGAな仕切りだったなあ。

 昼、国書刊行会のTと会って『宇宙舟歌』のゲラを手放す。これでなんとか出ることになったらしい。10/25発売です。これは面白いですよ! ほとんど短編集みたいなものだし、これまでラファティの長篇は肌が合わない……と思っていた人も必読よ!

 夜、紀伊國屋書店でマッド・ボンバー座談会。かのバート・I・ゴードン監督作『マッド・ボンバー』が奇跡のDVD化されるので、その封入ブックレット用の座談会。メンバーは黒沢清、篠崎誠、中原昌也そしてぼく。また中原と座談会出演。完全にセット販売状態である。トークはなごやかに楽しく進むが、それにしてもたかがバート・I・ゴードンのために、どう見てもMr.BIGの百倍くらい偉い監督が二人もはせ参じるというこの状況。
 終了後、飲み屋にうつってとてもではないがここには書けない話題でひとしきり盛り上がり、もう一軒行こうかというところだったが、急に気分が悪くなってきたのでお先に失礼する。


9/27(木)
 ……と思ったら風邪。ひどい熱が出て一日寝込む。エンケン祭り行こうと思ってチケットも買ってたのに……
9/28(水)
 ……しかしいつまでも寝てはいられないのだった。キャピタル東急でジェラルド・ダミアーノの取材。なんかすっかりいいジジイになっており、息子(映像作家でオヤジのマネージャー)と娘(ファイアーダンサー)がついてきてました。和気藹々とエロ映画話に興じる。といってもオレ自身はダミアーノの映画はほとんど見てないんで、そんなに偉そうに語れる人間ではないわけですが。そのうちの数少ない一本である『ウォーターパワー』については「あれはワシの映画じゃない!」と露骨に嫌な顔をされてしまったし。
9/29(木)
 またしてもLoft+1。すっかり恒例となりました〈平山夢明とデルモンテ平山のゴミ鍋〉ですが今回は平山さんなどどこへやら、中原が暴れまわって後にはペンペン草も生えませんでしたとさ。お客さんも笑いすぎて注文する暇もなかったとか。
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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / kiichiro.yanashita@nifty.com