月刊井口昇日記

◎最近のお仕事 『興 行師たちの映画史』(青土社)サ ポート・ページもあります。
『ケ ルベロス第五の首』(ジーン・ウルフ 国書刊行会)勝 手に広報部も(勝手に)よろしく。
『ア ヤックスの戦争』(サイモン・クーパー 白水社)を翻訳しました。第二次世界大戦とユダヤ人の運命とサッカーに 関する本です。はっきり言って、ニッチです。
『輝 く断片』(シオドア・スタージョン 河出書房新社)で中編を二編翻訳しています。キモメン文学の金字塔ですよ。
『宇 宙舟歌』(R・A・ラファティ 国書刊行会)を翻訳しました。
『デ ス博士の島その他の物語』amazon(ジー ン・ウルフ 国書刊行会)で中編を一編翻訳しています。

『た まもの』(2004年度ピンク大賞受賞)の音声コメンタリーにいまおかしんじ監督、林由美香さんと一緒に参加しています。まだ御覧に なっていない方は、是非林由美香さんの姿を見てあげてください。


1/19(木)
 本日は試写デー。『夜よ、こんにちわ』は マルコ・ベロッキオの新作でブリガーテ・ロッセのモロ元首相誘拐事件の映画化。密室感たっぷりで息が詰まりそうな傑作。冒頭、ブリガーテ・ロッセの面々が アジトの下見に来るところをとらえた長いカットが素晴らしかった。
 あとはクリスティーナ・リッチの狼男(というか狼女)映画『カースト』とジャームッシュの新 作『ブロークン・フラワーズ』。 ジャームッシュは素晴らしいけど、オレは『ゴースト・ドッグ』とかの方が好きかもしらん。「ドロマイトだぞ!」ってセリフがあったけど、これは「ドールマ イト(ヒューマン・トルネード)」のことだろう。しかし、その知識をキネティックに求めるのは無理というものかもしれん。

1/20(金)
 ポレポレ東中野で『かえる のうた』上映記念のトークを今岡信治監督、中原昌也の三人で。釣りの話をするはずだったんだけど、逆に今岡さんからぼくらの方 に「SPA!の対談読んですっごくファスビンダー見たくなったんですけど」と話を振られてしまったり。掟破りの逆インタビューだ! 映画は素晴らしい。パ ンフのおまけについていたオリジナル予告編(松 江哲朗製作)もとっても素晴らしい。
  終わったあとはお客さんで来ていただいた方々と飲みに行き、最終的には新宿でお好み焼きを食べていた。

1/21(土)
 雪。
 本郷・ふたき旅館でSFファン交流会。大森望がゲストだし、ご近所だったので出かける。しかし大雪の中本郷台地に登るのはたいへん危険なことであった。 下山中二度もこけた。

  その後国書刊行会Tと待ち合わせてゲラを渡したりとか。
1/22(日)
 下北沢LA CAMERAの〈ガ ンダーラ映画祭〉見に行く。お目当てはいまおかしんじ監督の「南の海にダイオウイカを釣りに行く」。マジで釣りに行っちゃうからすご いよ。
 衝撃的だったの はしまだゆきやす監督作品(特に名を秘す)ですね。これはさすがに反則だと思うんだけど、それでも凄いものは凄い。決してソフト化はされないと思うので、 見る機会があったら見て、自分でも考えてみていただきたい。

1/24(火)
 フィルムセンターのドイツ・オーストリア映画選集に出かける。今日はローベルト・ジオドマークの『激情の嵐』。 素晴らしい映画でしたが、クライマックス の部分がちょっとフィルムが切れてるような。花火の中での殺人場面がまさに画面の演出だけで(音は花火の爆音で聞こえないので)見せられるんだけど、そこ を見ていて『ミッドナイトクロス』を思い出しましたね。

 映画のあと、代々木公園のアイリッシュ・パブに出かけて友達と飲む。食べ物が美味しかった!
1/25(水)
『ヒ ストリー・オブ・バイオレンス』試写。二度目。クローネンバーグにとっては『クラッシュ』以来の傑作だと思う。公開されたらもう一度 見に行こう(と 言っておいて見ない映画のどれだけ多いことか)。

 ビデオで『お いら女蛮』を見る。井口昇監督作品。
 いやー、これ傑作じゃないか! ひょっとして年間ベスト級? 朝日新聞の「今年の収穫」に選んじゃったりして。そんなことしたらどうなるんだ!? いや ま あそういう問題はおいといて、東映スケバン映画オマージュでありつつこれまでのどんな永井豪映画化よりも永井豪らしく、それでいて百パーセント井口昇映画 である、という不思議。天才の天才たるゆえんだ。
1/26(木)
『立ち食い師列伝』試写。
 面白い。『イノセンス』なんかより全然いいんじゃないか?  ただ、キャスティングはやっぱり違う気がするなあ。 正しくは

月見の銀二 … 天本英世
ケツネコロッケのお銀 … 梶芽衣子
哭きの犬丸 … 川谷拓三
冷やしタヌキの政 … 成田三樹夫

だよなあ。 戦後が終わり、大衆社会がはじまる牛五郎以後は誰がやってもいいです。百歩譲ってもうちょっと現実的な話をするとすれば、せめてVシネ俳優を使うべきで あった。 その場合 犬丸…遠藤健一 政…寺島進 でよろしく。

1/27(金)
 トラマン新年会@新宿。最後は珍しくカラオケに突入しました。中原のカラオケ聞くのも久しぶり。
1/28(土)
 フィルムセンターのドイツ映画特集でダグラス・サーク(デトレフ・ジールク)の『第九交響楽』。 NHKは毎年大晦日にこの映画を放映すべき。それをやっくれたら受信料払ってやってもいいぞ(マジ)

 映画を見終わったあと、銀座方面に向かってぶらぶら歩いてたら、後ろから二人組の学生に声をかけられた(やっぱり『第九交響楽』を見ていたらしい)。 話を聞いてみると、なんとオ レのページ を見てハリー・スティーブン・キーラーに興味を持ち、アメリカから本を取り寄せて短篇を訳したりしているんだそうだ。 んで彼らが訳したキーラー短篇のプリントアウトをもらいました。 そのうちに同人誌など作るつもりだとか。 素晴らしい。これ、ミステリ・マガジンで買わないかな? それともメフィストとかの方がいいのかな?
1/29(日)
 切り株派@LOFT+1
 適当にこういうのかな〜と思って『黒太陽731』とか『女虐』とか持っていきましたが、中原にダメ出しされてしまいました。そうか。でもそういう明るい スプラッタ、みたいなのってオレ全然興味ないから持ってないんだよね。
 我が家には陰惨な映画しかない。
1/30(月)
 TCCで『卍』試 写。井口昇の谷崎映画。だが、これまたどんな谷崎映画化よりも谷崎らしい。嘘だと思ったら原作読んでみてください。全部原作にあるとお りだから。何を撮っても井口映画になってしまう驚異の井口フィルター全開の大傑作。

『陰 謀と幻想の大アジア』(海野弘)
 去年の9月に出た本。最近読んだんだが、たいそう面白かった。日本の近代において大陸進出と相前後して唱えられた妄想や陰謀論、学説を検討 して、そこに時代の想像力の発露を見ようというものである。江上波夫の”騎馬民族侵略説”が日本の満州・モンゴ ル進 出を逆転させたも のである、とかね。
 俗説から時代をあぶりだしてく、みたいなのって大好きなんだけど、オレにはこの本は書けないなあ……しか し、海野弘にあっ てオレにないものって何だ? 教養と知的能力以外で? それは書斎だ! 広い書斎、自分の知的財産が一望できる巨大な書庫がないとこういう本は書けない。
1/31(火)
 キングレコードにて映画秘宝の田野辺くんと井口昇取材。デモ田中とか井口組の女の子とかも来て取材する。撮影は過酷だったようですが、井口組は仲がいい ねえ。井口くんの映画にいきなり出された女優とかって、(やらされてる内容を思えば)「もうこんな監督の顔、二度と見たくない!」となってもおかしくない と思うのだが、決してそうはならない。人徳がうかがえるところである。
 みんなに愛される井口昇だが、キングレコードY氏もたいへん井口愛を感じるプロデューサーぶりだった。ちなみにY氏はチンコを重ねたことはないが、連れ ションで小便をクロスさせたことはあるという。そのとき、ダイナミック・プロダクションをも動かす奇跡の映画化がはじまったのだ… 「プロジェクトX」!
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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / kiichiro.yanashita@nifty.com