95年11月


11/20(月)
『DICE』用に利重剛の『BeRLiN』を見る。うわあああああ、出たな妖怪! なんか「不思議少女もの」って奴? 今関あきよしとかが作ってた、いきなりその復活であった。聖なる娼婦? 汚れた現実をすり抜け、一人汚れない不思議少女? んで「みんな、がんばれ」か? おいおいおいおいおい、きみたちはいくつなんだね。見てて気が狂いそうになったぜ。隣には淀川長治先生もお座りであった。先生、憤死するんじゃないかと思って横目で見てたんだけど、大丈夫だったみたい。
 夜、ヘラルドで『コピーキャット』見る。有名な殺人鬼(テッド・バンディ、ダーマー、などなど)の手口をまねて殺人を繰り返すサイコ野郎の話。ぼくのために作られたような映画だとは思うんだが、どうも欠点ばかりが目についてしまった。『セヴン』もそうなんだが、趣向ばかり気にして、肝心のプロットがデタラメなのだ。「これがダーマーの手口」とか言われても、「こんなのダーマーじゃないやい」とかって思うしよ。まあしかしたっぷり笑わせてもらったし、良しとするかね。
11/21(火)
 夜、渋谷東急で『フォー・ルームス』のプレミア。タランティーノの新作って奴である……終わったあとは、そそくさと帰る。ちなみに『DICE』には
 タランティーノ、まず、どうでもいい奴とつるむのはやめて、ダチはロドリゲスだけにしとけ。それからその面はもういい。おたくの才能は1に脚本、2に監督、3、4がなくて俳優は5番目だ。頼むから、誰か突っ込んでやれよ。「いいかげんにしなさい!」本人も失敗作だとわかっている(らしい)ってのが唯一の救いだな。
11/23(木)
 『危ない1号』の編集をしている工員ライターの村崎百郎氏が来る。危険なので、妻は疎開させてある。で、二人きりになったのでさっそく男の世界を展開。人には見せられない死体写真集とか小さい人が出てくるビデオとかマンソンのサインとかゲイシーの絵とかそういうものをたっぷり見せてあげる。えーこの中身は『危ない1号#2』で開陳されるはずですので、そっちをお楽しみに。村崎氏はよだれを垂らして喜んでいらっしゃたので、ぼくとしても大いに満足じゃ。
11/24(金)
 朝、ウェイン町山から電話があり「おまえの文章読むと頭が良くなるそうじゃねえか。最近賢い文章書いてるんじゃねえか」といびられる。というのは『さわやかインターネット』(秀和)の話なんだが、クーロン黒沢より頭が良かったとしても、それはぼくの責任ではない。でも賢そうな文章になってるかもーという気もするんで、初心忘れるべからずで馬鹿に戻るべし。
  新宿御苑前で降り、模索舎に寄ってミニコミをあさる。『別冊車掌2・鈴木さんの本創作日記』が出ているのでゲット。妻の名前が出ているので有名人になったねと誉める。しかし、『ガンガー』の切符ぐらいは言えば手に入ったのではなかろうか、と思わないでもない。あと遊撃隊の本など買う。
 今日はロフト・プラスワンで佐川くんとトークなのだった。場内は大入り満員……と思いきや閑古鳥が鳴く始末で、佐川くんも「ぼくの時代も終わりましたね」と寂しく語る始末なのだった。したがって来てたのは身内ばっかりなのだが、なんとぼくのファンという人間が二人も来ていたのだったーこいつはびっくらこいたぜ。おめえら頭悪いんじゃねえのか、と思ったんだが話を聞いてみると司法浪人だった。根本敬、村崎百郎らと「頼むから弁護士になってくれー」と励ます。ぜひ頑張ってくれ、身内に法律家は必要じゃ。あとナニを都合してくれたりする非道な医者も随時募集中。
11/25(土)
 昼間、フィルムセンターに出かけて『吸血ギャング団』の最後2回分を見る。サイレントの連続活劇。凶悪至極な吸血ギャング団は、首領と女スパイの結婚式で一昼夜つづく大宴会を繰り広げているところを警官隊に襲われ、全員死亡してしまうという間抜けぶりで、思わずほのぼの。正義の主人公の卑劣さばかりが際だつ映画であった。
 いっぺん家に帰って仕事をする。んでもって夜になったので、東中野のBoX東中野に出かける。『ハードコア』の初日なのだ。一応字幕を担当したのだが、原稿を送ってから一度も見てないので、どうなったかちょっち不安。この不安な仕事を担当したのはスタンス・カンパニーの鈴木あきひろ氏であった。いいかげんな奴かと思うだろうが、鈴木は「決して人を傷つけることはできない、臆病で正直な存在」なので、その後ちゃんとポレポレ座で奢ってくれたのだった。
11/26(日)
 大森望先生からいただいたコニー・ウィリスの『ドゥームズデイ・ブック』を読む。最近は鬼畜な話ばかり書いているので、こればっかりでは鬼畜野郎と思われてしまう。ここは素直に感動のあまり涙ボロボロ、と書いておこう。でも前半はタルくって、面白くなるのは人がボロボロ死にだしてから。しかしこれってひょっとしてナウシカ? ものの本には「その者、青き衣をまとって金色のネットとともに降り立つべし」と書いてあるそうな。
11/27(月)
 『ストレンジ・デイズ』のパンフ用原稿を送る。なんでこんなに早く書いてるかというと、監督のキャサリン・ビグローが来日するからである。なんとパンフに載せる原稿は英訳して、ビグローのチェックを受けねばならないのだ。どうしてそういう偏執狂的なところだけジェームズ・キャメロンから受け継ぐのだろうな(キャメロンは前回来日時、『トゥルー・ライズ』のパンフレットにダメを出して、作りなおしさせたのだ)。もしビグローからダメがでたら、ウェブ上で公開することにします。
11/28(火)
 松竹で『赤い薔薇 白い薔薇』を見る。ぼくが現代最高の映画作家だと考えているスタンリー・クアンの新作。まあ、こんなもんでしょう。前作『ロアン・リンユイ』が10年に一度の大傑作だったから、まあ何を見ても見劣りするというところはある。もっぱらセットや衣装を楽しんでいましたが、例によってかなり深い映画である。ぼくはダメ男ものにはどうも弱い。
 夜、トヨタ・カップに出かける。シネカノンのAが裏から手をまわして取ってくれた切符。アヤックスと聞いてはいかない訳にいくまい。当然前半終了間際にフィニディのセンタリングを飛び込んだリトマネンが決めて先制点、後半に入るとフィニディ、オフェルマルスの両ウィングがたびたび突破してチャンスを作り、クライフェルトとフランク・デ・ブールの得点で3−0の快勝!のはずだったんだが……結局アヤックスは押し切れず、延長PK決着。寒かった……後ろの方で叫んでいたオヤジのヤジが一番受けていた、という寒いゲームだった。でも「ウィーアー・ザ・チャンピオン」は歌ってきたぞ。
11/29(水)
『ASAYAN』から95年のベスト・アンケート送ってくる。『翻訳の世界』のアンケートと合わせ、回答に苦慮する。とりあえず翻訳書一位は『最後の物たちの国で』に決めてあるけど、あとが困った。考え中。考え中。考え中。
Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / PDE01513@niftyserve.or.jp