ほてるイク


4/28(月)
 シネセゾン渋谷で『唇によだれ』。タイトルとオープニング(「フィフィーヌは消えた。たわむれの恋に命を落とすのだ」)だけはムーディな退廃映画っぽいんだが、はじまるとぜーんぜん、な感じ。なんかのほほんとしたコメディだった。ヒロインは恋愛恐怖症で田舎にこもってるっぽいんだが、なぜそーなのか、という説明がなんもないのが不思議。でもまあ、こういう野心のない映画は嫌いじゃない。
5/1(木)
 ヒマなので裁判を見に行く。よく考えたら、これまで国民の当然の権利を行使したことがなかったのだった。適当に見当つけて行く、と池袋で逮捕されたタイ人街娼ナタリー(仮名)の判決公判だった。「……被告人は平成8年7月14日、豊島区池袋2丁目なんとか番地前の路上で××に『アソバナイ 2マンエン ほてるイク』と声をかけたもので……」と裁判官が事実認定を読み上げると、通訳がタイ語に翻訳してナタリーに説明する。しかし、『アソバナイ 2マンエン ほてるイク』の部分は日本語のままだった。他に二人タイ人の女の子が傍聴してたけど、あれは同じ店で働いていたとかそういう奴だろうか? 在留期限だいじょうぶ?

 続いて覚醒剤取締法違反で起訴された日本人ジョン(仮名)の初公判が開かれる。しかし、被告も検察官も裁判官も入廷したのに、時間になっても弁護士が来ない。待っているうちに検察官は居眠りをはじめる始末。とうとう休廷になってしまった。てきとーだなあ、みんな。

 地下の食堂でカレーライスを食って帰る。


5/3(土)
 SFセミナー@水道橋全逓会館。ぼくは朝一で出番があって、山野浩一、巽孝之と「バラード再考」なるパネルに出席。まあ、出席者が言うことじゃないんで、感想は控えます。ぼくとしては山野浩一に今のバラードについて語ってほしかった、とは思う。反省点多々。とりあえず、ぼくが言いたかったのは 1 『クラッシュ』や『残虐行為展覧会』はドラッグ小説ではないのか 2 バラードにとってSFと普通小説の区別というのは、たんに描写の主体をどこに置くのか、ということではないのか の2点。

 午後はヨコジュンの怒りのパネルをちょっと聞き(なんかものすごく鬱屈と怒りがたまっているようだった。温厚な人を怒らせてはいけない)、いったん家に帰る。その後また会場に戻って宮部みゆき・綾辻行人(司会大森望)の話を聞くが、まあパネルってなもんじゃないね。結論が出るわけでもないんで、適当に切り上げる。

 合宿ではなんかぼーっとしてただけだったな。「ナポレオン文庫講座」はためになったが。で、2時間ほどごろ寝しただけで朝9時、新宿NSビルで開かれるMtG東京グランプリに向かう。

 MI+VI*2のシールド戦。見ただけであーこりゃこりゃって感じになる。除去があまりになさ過ぎだし、タフネス3以上のクリーチャーは吸血鬼だけ。一応コンボ技は貪欲な吸血鬼に墓入らずのゾンビを食わせる悪食くんデッキ。ゴキブリが欲しかった。1回戦はうまくフライングクリーチャーを召喚して数で押し切り勝ち。2回戦では連続突撃で一ターンに18ダメージをくらいながらもそこから復活してかろうじて引き分け。よしよし、と思ったのもつかの間。3戦目はわずか10分くらいで完敗。除去の弱さと、土地三色の配分ミスが響いたようだ。あとは3連勝あるのみ、というんでむかえた4戦目。強要で唯一の除去カードを捨てられてしまった時点で勝負あった。フライング・クリーチャーが出てくる前に殴り殺そうと無理矢理ヴァンパイアを召喚したが、一匹食わせたときに青チャームでフェイズアウトさせられる。これで一回殴りそこねたせいで敗北。
 1勝2敗1分でリタイヤいたしましたとさ。


5/5(月)
 徹夜の翌日なんでどうも冴えず。しかし今日中に仕事を片づけてしまわないとちょっとヤバめなんで、頑張って原稿を書く。夜。BOX東中野に『由美香』を見に行く。面白すぎ。ブロスに書いた評をちょっと引用。

 聞くもびっくり、語るも哀れ、見ればさらに大笑いの中身はこうである。平野は失恋して自転車で旅に出ようと考えた。恋人のAV女優・林由美香にその話をしたところ、「面白そう」と言われた。で、じゃあ一緒に行こう! と盛り上がった平野は日本の北の果て、北海道は礼文島まで自転車で行くことにしてしまう。この旅自体を一本のAV作品にしようというわけだ。というわけで二人の珍道中が始まる。ロードムーヴィーである。『ある夜の出来事』だ。一応AVだから絡みも入る。それはもちろんハメ撮りで。二人の愛をビデオでドキュメントするのだ。  それはいいんだが、しかし平野には女房がいる。したがってこれは不倫だ。なんで女房がいるのに失恋したり恋人がいたりするのか、という根本的な問題は、ここでは追求しない。それが平野の生き方だ。ふつう不倫と言って頭に浮かぶのは『失楽園』とかだろう。あっちでは、究極の愛を求める二人が最後にエクスタシー心中する。失笑が漏れるくらいロマンチック。しかし『由美香』はAVである。この旅の最後、礼文島で二人を待っているのはそんなに美しい結末ではない。誰も想像できなかったあまりにサイテーなラスト。ああ、人生をフィクション化しようとする平野のロマンチズムは、由美香のリアリズムの前に敢えなく敗北してしまうのである。

 というわけだ。5/26まで。


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Kiichiro Yanashita / 柳下毅一郎 / yanasita@gol.com